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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第六章 その王子と竜に愛されたら大変です(下)
第十八話 怒りと深い反省
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シルヴェスターは、寝台の上で意識を失い倒れたままのユーリスの身体を毛布で包み込む。見れば、ユーリスはまだどこか苦しそうな表情をしていた。卵を産み落とす時の激しい苦痛と、自分の身の上に起きた想像も出来ない出来事にショックを受けたようだ。シルヴェスターはユーリスを心配そうに見つめながら、自分の中の黄金竜ウェイズリーに尋ねた。
「ユーリスに何をしたんだ、ウェイズリー……」
真っ白い卵を、その肢の間から産み落としたユーリス。
人間の男が、卵を産む。
普通なら考えられない出来事だった。
でも、尋常ではないことを、世の摂理を曲げてまで実現できるのが、黄金竜だった。
(ユーリスが卵を産んだのだ!! 私達の卵を産んだのだ!! 喜べ、シルヴェスター!!)
黄金竜(雛)ウェイズリーは、けたたましいほどの声でそう喚き立てた。その黄金色の目は燦然と輝き、ピンと尻尾も立ち上がっている。
「ユーリスは人間の男だ。竜との卵は産めない」
(ユーリスは私の番だ!! 彼は特別な存在になったのだ!! 彼は、私達の卵を産み落とすことが出来る!!)
そのウェイズリーの言葉に、何かを察したシルヴェスターは碧い目を怒りに釣り上げた。
「お前が何かしたのだろう!!!!」
シルヴェスターの怒りっぷりに、ウェイズリーは「キュッ」と鳴いて、口をぱっくりと開き、黄金色の目を見開いた。そしてシルヴェスターの碧かった目もまた、黄金色に色を変えて、彼の激怒ぶりを示していた。
「何をした、ウェイズリー。ユーリスにお前は何をしたのだ!!」
(だってユーリスは私の愛する番なのだ。彼を特別にするのは当然のことだろう。ユーリスの身が傷つくことのないように、病にかかることのないように)
ユーリスの身体は頑丈になって傷つくことはない。
病にかかることも滅多にないだろう。
「それだけではないはずだ」
(…………私の愛する番なのだ。当然、番のユーリスは私達の卵を産む)
シルヴェスターは、未だ意識を失い、疲労困憊、蒼白な表情で長い睫毛を伏せたまま眠り続けるユーリスを見下ろし、怒りを隠しきれない様子で吐き捨てるように言った。
「お前は、ユーリスの知らぬ間に、彼を変えたのだな」
その言葉に、シルヴェスターの中の黄金竜の雛は、項垂れつつも、小さく頷いてそれを認めた。
(………………………………………そうだ)
「なんてことを」
シルヴェスターは寝台の縁に座ると、顔を両手で覆い、呻き声を上げた。
どんなにかユーリスは怖かっただろうと思う。
自分の身に起きた異変を、彼は全く気が付いていなかった。
突然の痛みに戸惑い、何が起きているのか分からずに、不安と恐怖でいっぱいであったはずだ。
彼は苦しんだ挙句、なんとか卵を産み落とした。
人間の女性でさえ、出産は時に命を落とすほどの大事なのである。
それを、黄金竜ウェイズリーは、ユーリスの知らぬ間に彼の身体を変えて、行わせたのだ。
「ウェイズリー、ユーリスの身体を元には戻せないのか」
(…………戻せない)
シルヴェスターは深いため息をつく。
「卵を産むことのないように何か出来るだろう。竜達は避妊はしないのか」
その問いかけに、シルヴェスターの中の黄金竜の雛は小さく頷いた。
(…………それは出来る)
シルヴェスターの怒りに触れて、ようやく黄金竜ウェイズリーも自分がやってはいけないことをやってしまったことに気が付いた。勝手にユーリスの身体を変えたことを知られれば、ユーリスに怒られる。怒られることが嫌だったから、黄金竜ウェイズリーはユーリスにもシルヴェスターにも、そのことを秘密にしていた。
それが結果的に、ユーリスをこうもひどく苦しめることになったのだ。
今、シルヴェスターの中の黄金竜ウェイズリーはその体を小さくして、丸くなってうずくまっていた。そして「キュウウゥゥゥゥ」と反省するように情けない声で鳴いている。
それはかつて、ユーリスの護衛ゲランを殺そうとして、ユーリスにひどく怒られた時と同じ姿だった。
「ユーリスに何をしたんだ、ウェイズリー……」
真っ白い卵を、その肢の間から産み落としたユーリス。
人間の男が、卵を産む。
普通なら考えられない出来事だった。
でも、尋常ではないことを、世の摂理を曲げてまで実現できるのが、黄金竜だった。
(ユーリスが卵を産んだのだ!! 私達の卵を産んだのだ!! 喜べ、シルヴェスター!!)
黄金竜(雛)ウェイズリーは、けたたましいほどの声でそう喚き立てた。その黄金色の目は燦然と輝き、ピンと尻尾も立ち上がっている。
「ユーリスは人間の男だ。竜との卵は産めない」
(ユーリスは私の番だ!! 彼は特別な存在になったのだ!! 彼は、私達の卵を産み落とすことが出来る!!)
そのウェイズリーの言葉に、何かを察したシルヴェスターは碧い目を怒りに釣り上げた。
「お前が何かしたのだろう!!!!」
シルヴェスターの怒りっぷりに、ウェイズリーは「キュッ」と鳴いて、口をぱっくりと開き、黄金色の目を見開いた。そしてシルヴェスターの碧かった目もまた、黄金色に色を変えて、彼の激怒ぶりを示していた。
「何をした、ウェイズリー。ユーリスにお前は何をしたのだ!!」
(だってユーリスは私の愛する番なのだ。彼を特別にするのは当然のことだろう。ユーリスの身が傷つくことのないように、病にかかることのないように)
ユーリスの身体は頑丈になって傷つくことはない。
病にかかることも滅多にないだろう。
「それだけではないはずだ」
(…………私の愛する番なのだ。当然、番のユーリスは私達の卵を産む)
シルヴェスターは、未だ意識を失い、疲労困憊、蒼白な表情で長い睫毛を伏せたまま眠り続けるユーリスを見下ろし、怒りを隠しきれない様子で吐き捨てるように言った。
「お前は、ユーリスの知らぬ間に、彼を変えたのだな」
その言葉に、シルヴェスターの中の黄金竜の雛は、項垂れつつも、小さく頷いてそれを認めた。
(………………………………………そうだ)
「なんてことを」
シルヴェスターは寝台の縁に座ると、顔を両手で覆い、呻き声を上げた。
どんなにかユーリスは怖かっただろうと思う。
自分の身に起きた異変を、彼は全く気が付いていなかった。
突然の痛みに戸惑い、何が起きているのか分からずに、不安と恐怖でいっぱいであったはずだ。
彼は苦しんだ挙句、なんとか卵を産み落とした。
人間の女性でさえ、出産は時に命を落とすほどの大事なのである。
それを、黄金竜ウェイズリーは、ユーリスの知らぬ間に彼の身体を変えて、行わせたのだ。
「ウェイズリー、ユーリスの身体を元には戻せないのか」
(…………戻せない)
シルヴェスターは深いため息をつく。
「卵を産むことのないように何か出来るだろう。竜達は避妊はしないのか」
その問いかけに、シルヴェスターの中の黄金竜の雛は小さく頷いた。
(…………それは出来る)
シルヴェスターの怒りに触れて、ようやく黄金竜ウェイズリーも自分がやってはいけないことをやってしまったことに気が付いた。勝手にユーリスの身体を変えたことを知られれば、ユーリスに怒られる。怒られることが嫌だったから、黄金竜ウェイズリーはユーリスにもシルヴェスターにも、そのことを秘密にしていた。
それが結果的に、ユーリスをこうもひどく苦しめることになったのだ。
今、シルヴェスターの中の黄金竜ウェイズリーはその体を小さくして、丸くなってうずくまっていた。そして「キュウウゥゥゥゥ」と反省するように情けない声で鳴いている。
それはかつて、ユーリスの護衛ゲランを殺そうとして、ユーリスにひどく怒られた時と同じ姿だった。
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