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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第七章 新たなる黄金竜の誕生
第十八話 最強の結界魔道具の作成依頼(中)
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黄金竜でも破れない最強強度の結界魔道具の作成を依頼したい
ユーリスからそう言われた時、すぐにカルフィー魔道具店の者達の頭に浮かんだのは、かつてサトー王国のサトー国王と対峙した時に、展開した結界魔道具のことだった。
サトー国王が“転移”してその場から逃げることを阻止するために、最大規模で展開した非常に強固な結界である。トモチカが動力を提供し、ルティ魔術師が展開したそれのせいで、サトー国王はその場から逃げることも出来ず、その結果、彼はアルバート王子の“勇者の剣”で討たれた。
「黄金竜でも破れない結界ですか」
同席していたルティ魔術師は、腕を組んで考え込んでいるが、興味深いテーマを与えられたように彼の目は輝いていた。
「どれほど結界の強度を上げられるか、試してみたいですね。ただ、結界の最大強度が瞬間的なものでいいのか、継続的なものを求めるかで、使用する動力源も違ってきます。また黄金竜でも破れないというのは、単なる例えなのでしょうか。もし仮に、本当にそれを望んでいるのなら、黄金竜にも製作に協力してもらわなければなりません。それが可能でしょうか」
「ピルピルピルゥピルピル!!(黄金竜じゃないけど、俺が協力するよ!!)」
何故か、小さな紫竜ルーシェがアルバート王子の膝の上で、元気よく手を挙げて宣言していた。
「ピルピルピルピルピルゥピルピルルルル(紫竜だけどいいよな!! 俺が魔法バシバシ結界にぶつけて強度を試してやる!!)」
アルバート王子が、苦笑いをしながら通訳する。
「ルーシェが、結界の強化のために協力すると申し出ています」
どうみても、面白がっているだけのようだ。
しかし、“魔術の王”と称される豊富な魔力量と多種にわたる属性の使い手である紫竜の協力は正直有難かった。
続けてユーリスの胸元から「キュルキュルキュルル!!!!」と小さな竜の声が響いてきた。
長テーブルに座っていた者達の視線が、一斉にユーリスの方へ向けられる。
ユーリスはため息を一つついた後、胸元に手を入れ、布袋を取り出す。
もこもこと布袋が動いたかと思うと、その中からポンと何かが飛び出して、長テーブルの上に仁王立ちした。
キラキラと輝く金色の鱗を持つ、小さな小さな竜だった。
その両眼すらも、黄金を溶かしたような色をしている美しい竜だった。
「キュイキュイキュルキュルキュルルルル!!!!(この黄金竜ウェイズリーも、協力してやろう!!!!)」
困ったように柳眉を寄せているユーリスの様子から、黄金竜の唐突なこの登場は全くユーリスが予定していなかったものだと察することが出来た。長テーブルの上で、胸を張ってどこかふんぞり返る小さな黄金竜。
トモチカは「ピカピカ金色に光る派手な竜だな……」と驚きながらそう感想を言い、ルーシェはアルバート王子の膝の上からテーブルの上によじ登り、黄金竜ウェイズリーのそばまで近寄ると「ピルピルゥピルピルピル!!(ウェイズリー、一緒にやろうぜ!!)」と言う。早速、小さな竜達は鼻先をすり合わせ、挨拶を交わすと、二頭揃って何故かテーブルの上で陽気に踊り始めていたのだった。
可愛い紫竜と小さな黄金竜の二頭の、唐突に始まった踊りの様子を見て、初めてそれを見たトモチカは「……ユキ、お前は転生して竜になっても、ある意味幸せなんだな」としみじみと感想を言い、アルバート王子とユーリスは顔を見合わせた後、二人とも困ったような顔をしながらも笑って、二頭の子竜達の踊る様子を眺めるのだった(なお、テーブルの上で踊り続ける紫竜と黄金竜を見て、カルフィー、ルティ、ケイオスはなんとも言えぬ表情をしていた)。
やがて、踊り終わった黄金竜と紫竜は満足したのか、それぞれの伴侶の膝の上に戻っていく。
それでトモチカは、魔術師ルティが前向きに、ユーリスの依頼を引き受けようと考えている様子だったのを見て、ユーリスに言った。
「分かりました。ご依頼について引き受け……」と言いかけたトモチカを遮ったのは、後からこの場に同席することになったカルフィー魔術師であった。
「ご依頼の対価はどのようにお考えかお聞かせ願いたい」
割り込んできたカルフィー魔術師を、トモチカは「おい、カルフィー、別にそんなこといいだろう」と言うが、カルフィー魔術師はため息まじりでトモチカに言う。
「ルティがうちの仕事を外れて、別の仕事を引き受けると、魔道具店の遠話魔道具の生産に影響する。そのことはお前も分かっているだろう」
トモチカは「うっ」とその指摘に声を詰まらせる。
そう。カルフィー魔道具店は、独占販売している遠話魔道具への注文が現在殺到して、大変な状況にある。カルフィーとルティ魔術師は日夜、追われるように遠話魔道具の生産を行っていた。数年先まで仕事依頼はいっぱいなのだ。
「……そ、それはそうだけど」
「トモチカ、簡単に引き受けるな。ルティ、お前もそうだぞ」
「でも、私は引き受けたいです。自分がどれほど結界の強化が出来るか、試してみたい」
アレドリア王国の魔術師ギルド出身のルティ魔術師は、以前は昼夜を問わず研究にいそしんでいた。ある意味、研究オタクでもあった。ひどく興味をそそられる研究テーマを目の前に掲げられては、ふらふらとついていきそうな様子である。
カルフィー魔術師は眉根をくっきりと寄せている。
「安請け合いするな」
それに、黄金竜ウェイズリーが「キュイキュイキュルルル!!」と声を上げて話した。
それをユーリスが解説する。黄金竜ウェイズリーの話す言葉は竜語であったため、一部に解説が必要だった(ルーシェとアルバート王子は竜語は理解出来ていた)。
「ウェイズリーが、必要なものは何でも揃えると言っています。そして、報酬は」
それからウェイズリーが提示した莫大な黄金の塊や宝石の量に、今度はカルフィーも絶句し、依頼は一か月を目途に、ルティ魔術師が引き受けることになったのであった。
ユーリスからそう言われた時、すぐにカルフィー魔道具店の者達の頭に浮かんだのは、かつてサトー王国のサトー国王と対峙した時に、展開した結界魔道具のことだった。
サトー国王が“転移”してその場から逃げることを阻止するために、最大規模で展開した非常に強固な結界である。トモチカが動力を提供し、ルティ魔術師が展開したそれのせいで、サトー国王はその場から逃げることも出来ず、その結果、彼はアルバート王子の“勇者の剣”で討たれた。
「黄金竜でも破れない結界ですか」
同席していたルティ魔術師は、腕を組んで考え込んでいるが、興味深いテーマを与えられたように彼の目は輝いていた。
「どれほど結界の強度を上げられるか、試してみたいですね。ただ、結界の最大強度が瞬間的なものでいいのか、継続的なものを求めるかで、使用する動力源も違ってきます。また黄金竜でも破れないというのは、単なる例えなのでしょうか。もし仮に、本当にそれを望んでいるのなら、黄金竜にも製作に協力してもらわなければなりません。それが可能でしょうか」
「ピルピルピルゥピルピル!!(黄金竜じゃないけど、俺が協力するよ!!)」
何故か、小さな紫竜ルーシェがアルバート王子の膝の上で、元気よく手を挙げて宣言していた。
「ピルピルピルピルピルゥピルピルルルル(紫竜だけどいいよな!! 俺が魔法バシバシ結界にぶつけて強度を試してやる!!)」
アルバート王子が、苦笑いをしながら通訳する。
「ルーシェが、結界の強化のために協力すると申し出ています」
どうみても、面白がっているだけのようだ。
しかし、“魔術の王”と称される豊富な魔力量と多種にわたる属性の使い手である紫竜の協力は正直有難かった。
続けてユーリスの胸元から「キュルキュルキュルル!!!!」と小さな竜の声が響いてきた。
長テーブルに座っていた者達の視線が、一斉にユーリスの方へ向けられる。
ユーリスはため息を一つついた後、胸元に手を入れ、布袋を取り出す。
もこもこと布袋が動いたかと思うと、その中からポンと何かが飛び出して、長テーブルの上に仁王立ちした。
キラキラと輝く金色の鱗を持つ、小さな小さな竜だった。
その両眼すらも、黄金を溶かしたような色をしている美しい竜だった。
「キュイキュイキュルキュルキュルルルル!!!!(この黄金竜ウェイズリーも、協力してやろう!!!!)」
困ったように柳眉を寄せているユーリスの様子から、黄金竜の唐突なこの登場は全くユーリスが予定していなかったものだと察することが出来た。長テーブルの上で、胸を張ってどこかふんぞり返る小さな黄金竜。
トモチカは「ピカピカ金色に光る派手な竜だな……」と驚きながらそう感想を言い、ルーシェはアルバート王子の膝の上からテーブルの上によじ登り、黄金竜ウェイズリーのそばまで近寄ると「ピルピルゥピルピルピル!!(ウェイズリー、一緒にやろうぜ!!)」と言う。早速、小さな竜達は鼻先をすり合わせ、挨拶を交わすと、二頭揃って何故かテーブルの上で陽気に踊り始めていたのだった。
可愛い紫竜と小さな黄金竜の二頭の、唐突に始まった踊りの様子を見て、初めてそれを見たトモチカは「……ユキ、お前は転生して竜になっても、ある意味幸せなんだな」としみじみと感想を言い、アルバート王子とユーリスは顔を見合わせた後、二人とも困ったような顔をしながらも笑って、二頭の子竜達の踊る様子を眺めるのだった(なお、テーブルの上で踊り続ける紫竜と黄金竜を見て、カルフィー、ルティ、ケイオスはなんとも言えぬ表情をしていた)。
やがて、踊り終わった黄金竜と紫竜は満足したのか、それぞれの伴侶の膝の上に戻っていく。
それでトモチカは、魔術師ルティが前向きに、ユーリスの依頼を引き受けようと考えている様子だったのを見て、ユーリスに言った。
「分かりました。ご依頼について引き受け……」と言いかけたトモチカを遮ったのは、後からこの場に同席することになったカルフィー魔術師であった。
「ご依頼の対価はどのようにお考えかお聞かせ願いたい」
割り込んできたカルフィー魔術師を、トモチカは「おい、カルフィー、別にそんなこといいだろう」と言うが、カルフィー魔術師はため息まじりでトモチカに言う。
「ルティがうちの仕事を外れて、別の仕事を引き受けると、魔道具店の遠話魔道具の生産に影響する。そのことはお前も分かっているだろう」
トモチカは「うっ」とその指摘に声を詰まらせる。
そう。カルフィー魔道具店は、独占販売している遠話魔道具への注文が現在殺到して、大変な状況にある。カルフィーとルティ魔術師は日夜、追われるように遠話魔道具の生産を行っていた。数年先まで仕事依頼はいっぱいなのだ。
「……そ、それはそうだけど」
「トモチカ、簡単に引き受けるな。ルティ、お前もそうだぞ」
「でも、私は引き受けたいです。自分がどれほど結界の強化が出来るか、試してみたい」
アレドリア王国の魔術師ギルド出身のルティ魔術師は、以前は昼夜を問わず研究にいそしんでいた。ある意味、研究オタクでもあった。ひどく興味をそそられる研究テーマを目の前に掲げられては、ふらふらとついていきそうな様子である。
カルフィー魔術師は眉根をくっきりと寄せている。
「安請け合いするな」
それに、黄金竜ウェイズリーが「キュイキュイキュルルル!!」と声を上げて話した。
それをユーリスが解説する。黄金竜ウェイズリーの話す言葉は竜語であったため、一部に解説が必要だった(ルーシェとアルバート王子は竜語は理解出来ていた)。
「ウェイズリーが、必要なものは何でも揃えると言っています。そして、報酬は」
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