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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第八章 永遠の王の統べる王国
第八話 親善旅行へ(2)
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ユーリスから、ハルヴェラ王国へ一緒に連れていくと告げられたルドガー王子は、不満で仏頂面になっていた。
ユーリスの話では、わざわざ馬車に乗って、ハルヴェラ王国へ赴くらしい。竜の姿ならひとっ飛びであるのに。そんな不合理な方法で行きたくないと言うと、ユーリスから「王族としての公務であること」「ルドガーが竜の子であることは公にはされていないから、その間、竜の力を使ってはならないこと」を淡々と諭されて、黙らせられる。おまけに公務の間、ルドガーがジャクセンのいるラウデシア王国へ行くことは禁止だと告げられた。
毎日、昼頃には転移魔法で祖父の屋敷に飛んでいっては、ジャクセンの膝の上で甘えているルドガー。最近では、ジャクセンから王子教育で分からなかったことも教えてもらっており、一緒にお茶をしたり食事をしたりと、ジャクセンと過ごすルドガーの毎日は充実していた。勿論、ジャクセンを番にしない、勝手にその身を変えてしまわないという呪いがルドガーの身体には刻まれているから、二人の間は、あくまで祖父と孫の友好的な関係に留まっている。
その大好きなジャクセンから、しばし離れないといけない。
ルドガーが、「ユーリスと一緒にハルヴェラ王国へ行くことになりました。その間、僕はおじいさまにお会いすることができません」と、耐えられないような苦渋の声で呟くと、ジャクセンはルドガーの金色の頭を撫でた。
「お前もきちんと仕事をするようになったのだな。偉いぞ」
そう褒められたので、ルドガーは青い瞳を煌めかせる。
「本当におじいさまは僕が偉いと思うのですか」
「ああ」
「僕がきちんと行って仕事を果たしたら、もっと僕のことを褒めて下さいますか」
「もちろんだ」
ルドガーはジャクセンの膝の上で、緩んだ表情をしていた。
帰国してジャクセンから大いに褒められている自分の姿を想像しているらしい。大好きな祖父に褒められることは嬉しいのだ。
「おじいさまが褒めて下さるのなら、僕は我慢して行って来ようと思います!!」
「我慢して、と言うのではない」
ジャクセンからそう注意されると、ルドガーは緩んだ表情のまま「ごめんなさい」と謝っていた。
それからルドガーは、ジャクセンの身体に抱きつく。抱きついたまま、ジャクセンの顔を見上げてこう言う。
「でも、おじいさまのことが心配です。僕がいない間、また悪い人間に襲われてしまうのではないですか」
「私の護衛は優秀だ」
ジャクセンは、そばに立つ大男の護衛に目をやる。ジャクセンが最も信頼する護衛はバンクリフといい、ジャクセンが若い頃から彼に仕えていた男だった。そして実際、今までジャクセンが襲われそうになった時、常にジャクセンを助けた非常に有能な護衛の男だった。
「そうなのですか」
ルドガーは、チラリとその護衛の男に視線を向ける。確かに、その護衛の男は常にジャクセンのそばに控え、ジャクセンの身を守っていた。
でも、ルドガーとしては、本当なら自分がジャクセンの身を守りたかった。黄金竜ウェイズリーが、ユーリスの身を金色の芽で守っているように、ルドガーもジャクセンの周囲に自分の金色の芽を張り巡らせたい。しかし、ジャクセンが夜から昼にかけて身に付ける非常に強力な結界の指輪は、ルドガーの金色の芽も、弾いて四散させてしまうだろう。
「本当なら、僕がおじいさまをお守りしたいです」
「必要ない」
ハッキリと断られ、しょんぼりするルドガー。それに気が付いたジャクセンが、ルドガーの頭を撫でる。
「お前は私のことなど気にする必要はない。ユーリスと共に赴く国での任務のことだけを考えよ」
「でも」
「ルドガー、お前はゴルティニア王国の王子だ。自分の職務を果たすがいい」
ジャクセンのその言葉に、ルドガーはきゅっと口を噤む。
ジャクセンは常に、ルドガーにそう言うのだ。
『責任は全うしなければならない』
『自分の職務を果たすがいい』
そう言って、ルドガーがゴルティニア王国の王子としてふさわしい行動をすることを強く求める。内心、ルドガーはそのことに不満だった。でも、ジャクセンに嫌われて、軽蔑されたくない。だからルドガーは仕方なしに王子の仕事を果たしている。その仕方なくイヤイヤやっていることが、きっとジャクセンには伝わってしまっている。それだから、ジャクセンはルドガーになにくれと注意するのだ。
「はい……わかりました」
どこかルドガーが気落ちした様子でそう言ったことに、ジャクセンは笑い、膝の上に座るルドガーの頭に優しく口づけを落とした。それは初めて親愛の情を示した行為だった。
「気を付けていってくるがいい」
そのことに気が付いたルドガーは、口付けされた頭を両手で押さえ、先刻までの気落ちした様子を一変させ、頬を紅潮させ、瞳を輝かせて言った。
「はい、おじいさま!!!!」
そしてそんな現金なルドガーの様子に、内心ジャクセンは(まだまだ子供だな)と呟いていたのだった。
ユーリスの話では、わざわざ馬車に乗って、ハルヴェラ王国へ赴くらしい。竜の姿ならひとっ飛びであるのに。そんな不合理な方法で行きたくないと言うと、ユーリスから「王族としての公務であること」「ルドガーが竜の子であることは公にはされていないから、その間、竜の力を使ってはならないこと」を淡々と諭されて、黙らせられる。おまけに公務の間、ルドガーがジャクセンのいるラウデシア王国へ行くことは禁止だと告げられた。
毎日、昼頃には転移魔法で祖父の屋敷に飛んでいっては、ジャクセンの膝の上で甘えているルドガー。最近では、ジャクセンから王子教育で分からなかったことも教えてもらっており、一緒にお茶をしたり食事をしたりと、ジャクセンと過ごすルドガーの毎日は充実していた。勿論、ジャクセンを番にしない、勝手にその身を変えてしまわないという呪いがルドガーの身体には刻まれているから、二人の間は、あくまで祖父と孫の友好的な関係に留まっている。
その大好きなジャクセンから、しばし離れないといけない。
ルドガーが、「ユーリスと一緒にハルヴェラ王国へ行くことになりました。その間、僕はおじいさまにお会いすることができません」と、耐えられないような苦渋の声で呟くと、ジャクセンはルドガーの金色の頭を撫でた。
「お前もきちんと仕事をするようになったのだな。偉いぞ」
そう褒められたので、ルドガーは青い瞳を煌めかせる。
「本当におじいさまは僕が偉いと思うのですか」
「ああ」
「僕がきちんと行って仕事を果たしたら、もっと僕のことを褒めて下さいますか」
「もちろんだ」
ルドガーはジャクセンの膝の上で、緩んだ表情をしていた。
帰国してジャクセンから大いに褒められている自分の姿を想像しているらしい。大好きな祖父に褒められることは嬉しいのだ。
「おじいさまが褒めて下さるのなら、僕は我慢して行って来ようと思います!!」
「我慢して、と言うのではない」
ジャクセンからそう注意されると、ルドガーは緩んだ表情のまま「ごめんなさい」と謝っていた。
それからルドガーは、ジャクセンの身体に抱きつく。抱きついたまま、ジャクセンの顔を見上げてこう言う。
「でも、おじいさまのことが心配です。僕がいない間、また悪い人間に襲われてしまうのではないですか」
「私の護衛は優秀だ」
ジャクセンは、そばに立つ大男の護衛に目をやる。ジャクセンが最も信頼する護衛はバンクリフといい、ジャクセンが若い頃から彼に仕えていた男だった。そして実際、今までジャクセンが襲われそうになった時、常にジャクセンを助けた非常に有能な護衛の男だった。
「そうなのですか」
ルドガーは、チラリとその護衛の男に視線を向ける。確かに、その護衛の男は常にジャクセンのそばに控え、ジャクセンの身を守っていた。
でも、ルドガーとしては、本当なら自分がジャクセンの身を守りたかった。黄金竜ウェイズリーが、ユーリスの身を金色の芽で守っているように、ルドガーもジャクセンの周囲に自分の金色の芽を張り巡らせたい。しかし、ジャクセンが夜から昼にかけて身に付ける非常に強力な結界の指輪は、ルドガーの金色の芽も、弾いて四散させてしまうだろう。
「本当なら、僕がおじいさまをお守りしたいです」
「必要ない」
ハッキリと断られ、しょんぼりするルドガー。それに気が付いたジャクセンが、ルドガーの頭を撫でる。
「お前は私のことなど気にする必要はない。ユーリスと共に赴く国での任務のことだけを考えよ」
「でも」
「ルドガー、お前はゴルティニア王国の王子だ。自分の職務を果たすがいい」
ジャクセンのその言葉に、ルドガーはきゅっと口を噤む。
ジャクセンは常に、ルドガーにそう言うのだ。
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どこかルドガーが気落ちした様子でそう言ったことに、ジャクセンは笑い、膝の上に座るルドガーの頭に優しく口づけを落とした。それは初めて親愛の情を示した行為だった。
「気を付けていってくるがいい」
そのことに気が付いたルドガーは、口付けされた頭を両手で押さえ、先刻までの気落ちした様子を一変させ、頬を紅潮させ、瞳を輝かせて言った。
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