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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第九章 蝶の夢(上)
第二話 仕事(上)
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ゴルティニア王国の王城の離着陸場から、ユーリスは黄金竜の背に乗って空へと飛び立った。
黄金色の鱗は陽の光を受け、キラキラと輝いている。
ユーリスはその背をいつものように優しく撫でた。
ユーリスが跨っている黄金竜は、息子ルドガーだった。
シルヴェスターが王の座に就いて以降、ユーリスと共に国民の前に姿を現わす黄金竜は、竜に化身したルドガーの役目になった。
それは当たり前のことで、シルヴェスターは王になってからは毎日とてつもなく忙しく、竜の姿に変わってユーリスと、ゴルティニア王国各地に出ていくことなど出来るはずもなかった。
それについては、シルヴェスターも、シルヴェスターの中の黄金竜ウェイズリーも内心、不満タラタラだった。特にウェイズリーに至っては「シルヴェスター、お前は即刻、王を辞めよ!! 何故、番と過ごす時間がこんなにも無いのだ!! おかしいだろう!!」と唾を吐く勢いでシルヴェスターに喰ってかかっていた。
シルヴェスターとしても、愛しいユーリスと常に共に過ごしたい気持ちはある。
だが、王の座についている限り、それは難しい。
シルヴェスターが、王になってから忙しくてユーリスとなかなか一緒に過ごせないと、そう愚痴をこぼすと、それを聞いた前王ダンカンは大きな声を上げて笑った。
「当たり前だ。お前は隠居してからユーリスとゆっくり過ごすのだな」
「…………貴族会議にもっと仕事を流すか」
王に助言を行う上位貴族達の合議体、貴族会議。それはユーリスが作り上げた機関だった。貴族会議の貴族委員の新たな選出は貴族会議で決められ、国王の承認を受けることになっている。やたらめったな、常識を知らぬ貴族が、委員としてこれまでのところ選出されたことはない。どちらかというと保守的な貴族ばかりだった。あまりにも保守的な意見ばかり出されるので、ユーリスは「もっと貴族委員達の若返りを図った方がいいのかも知れませんね」とこぼしている。そうした極めて保守的な機関であるからして、シルヴェスターの抱えている仕事のいくらかを流したとしても、突飛な判断が下されることはないだろう。そのため、シルヴェスターは貴族会議にもっと自分が関与しなくても出来る仕事を流してしまおうかと考えている。
「お前はよくよくユーリスに感謝するのだな」
「分かってます。私はいつもユーリスに感謝してますよ」
今の貴族会議は、ユーリスが、このゴルティニア王国を少しでも良くするために作り上げた仕組みの一つだった。重大な判断を下す王に権力が集中している一方で、王へ助言する仕組みがきちんと整っていない。王が判断を間違えてしまうと、国への影響が大きすぎる。勿論、最終決定権は王の手にある。過去、英明な王が率先して政策を行い、素晴らしく発展した国もあったが、一方で、失策によって国を傾けた王も数多存在する。
ユーリスは、多くの歴史書を読んでそれを理解していた。そして、国の王が孤独であることも知っていた。
シルヴェスターが王座に就く時には、シルヴェスターが出来るだけ仕事をしやすい環境を整え、日々の業務が彼に重い負担にならないようにしたいと考えていた。
そのユーリスの想いを、シルヴェスターもダンカンも理解していた。
今、シルヴェスターのすぐそばの椅子に深々と座る、落ち窪んだ眼を輝かせる老人が、ダンカンだった。
ダンカンがゴルティニア王国の王の座についたのは、彼が四十代初め頃。それから三十年近くの時が経ち、ダンカンは老人になっていた。日々の冒険で、鍛えられ、逞しかった身体は、筋肉も落ち、その背も曲がってしまっている。頭髪も真っ白になり、深い皺がその顔に刻まれていた。ただ彼の瞳は、未だ炯々と輝いていたし、頭脳も明晰だった。
「俺は、そろそろ部屋に戻るぞ」
ダンカンが、杖を引き寄せ立ち上がろうとする。そばについていた侍従がすかさず、もう片方の手を取ろうとする。
「じゃあな、シルヴェスター」
「はい」
ゆっくりと歩いていく、養親の小さくなった背に目をやり、それからシルヴェスターはまた仕事に取り掛かり始めた。
そうしながらも、ユーリスは無事に仕事を終えただろうかと少し心配していた。だが、今までユーリスと黄金竜ルドガーが、仕事を失敗することなど一度もなかった。
黄金色の鱗は陽の光を受け、キラキラと輝いている。
ユーリスはその背をいつものように優しく撫でた。
ユーリスが跨っている黄金竜は、息子ルドガーだった。
シルヴェスターが王の座に就いて以降、ユーリスと共に国民の前に姿を現わす黄金竜は、竜に化身したルドガーの役目になった。
それは当たり前のことで、シルヴェスターは王になってからは毎日とてつもなく忙しく、竜の姿に変わってユーリスと、ゴルティニア王国各地に出ていくことなど出来るはずもなかった。
それについては、シルヴェスターも、シルヴェスターの中の黄金竜ウェイズリーも内心、不満タラタラだった。特にウェイズリーに至っては「シルヴェスター、お前は即刻、王を辞めよ!! 何故、番と過ごす時間がこんなにも無いのだ!! おかしいだろう!!」と唾を吐く勢いでシルヴェスターに喰ってかかっていた。
シルヴェスターとしても、愛しいユーリスと常に共に過ごしたい気持ちはある。
だが、王の座についている限り、それは難しい。
シルヴェスターが、王になってから忙しくてユーリスとなかなか一緒に過ごせないと、そう愚痴をこぼすと、それを聞いた前王ダンカンは大きな声を上げて笑った。
「当たり前だ。お前は隠居してからユーリスとゆっくり過ごすのだな」
「…………貴族会議にもっと仕事を流すか」
王に助言を行う上位貴族達の合議体、貴族会議。それはユーリスが作り上げた機関だった。貴族会議の貴族委員の新たな選出は貴族会議で決められ、国王の承認を受けることになっている。やたらめったな、常識を知らぬ貴族が、委員としてこれまでのところ選出されたことはない。どちらかというと保守的な貴族ばかりだった。あまりにも保守的な意見ばかり出されるので、ユーリスは「もっと貴族委員達の若返りを図った方がいいのかも知れませんね」とこぼしている。そうした極めて保守的な機関であるからして、シルヴェスターの抱えている仕事のいくらかを流したとしても、突飛な判断が下されることはないだろう。そのため、シルヴェスターは貴族会議にもっと自分が関与しなくても出来る仕事を流してしまおうかと考えている。
「お前はよくよくユーリスに感謝するのだな」
「分かってます。私はいつもユーリスに感謝してますよ」
今の貴族会議は、ユーリスが、このゴルティニア王国を少しでも良くするために作り上げた仕組みの一つだった。重大な判断を下す王に権力が集中している一方で、王へ助言する仕組みがきちんと整っていない。王が判断を間違えてしまうと、国への影響が大きすぎる。勿論、最終決定権は王の手にある。過去、英明な王が率先して政策を行い、素晴らしく発展した国もあったが、一方で、失策によって国を傾けた王も数多存在する。
ユーリスは、多くの歴史書を読んでそれを理解していた。そして、国の王が孤独であることも知っていた。
シルヴェスターが王座に就く時には、シルヴェスターが出来るだけ仕事をしやすい環境を整え、日々の業務が彼に重い負担にならないようにしたいと考えていた。
そのユーリスの想いを、シルヴェスターもダンカンも理解していた。
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