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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第九章 蝶の夢(上)
第四話 睦み合い(上)
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その夜、ユーリスはそっと足音を忍ばせて、寝室に入った。
仕事を終えたら、こんな遅い時間になってしまったのだ。
ユーリスもシルヴェスターも二人とも、それぞれ仕事に追われる生活をしている。どちらかが眠っている時に、もう一人が部屋へ入って来るとなると、せっかく眠っていたのを起こしてしまう。十分休息を取るためにも、寝室は分けた方が良いのではないかと、ユーリスが申し出た事があった。しかし、シルヴェスターも黄金竜ウェイズリーも断固反対を口にした。番と同じ寝床で眠らないなんて、あり得ない。
「そんなことになるのなら、私は王なんぞ辞めるぞ!!」と黄金竜ウェイズリーは本気で口にしていたので、ユーリスは慌てた。まさかそんなことくらいで、王座を放り出すなんて考えられなかったのだ。しかし、黄金竜ウェイズリーの目は本気だった。
ウェイズリーはまた文句をぶつぶつと言い始める。その文句が長いので、ユーリスはいつも閉口してしまう。ウェイズリー曰く、こうだった。
「シルヴェスターが王になりたいと言っているので、私は仕方なく付き合ってやっているのだ!! 王なんて面倒ごとばかりではないか!! そのせいで私は、ユーリスと過ごす時間がたくさん減って、ユーリスに〇〇も××も、△△もする時間が無くなっている!! 私はもっと〇〇したいのに!!」
性的な言葉を平気で口にするウェイズリーに、サッとユーリスの頬が赤くなる。
「もっと××××できる時間が欲しい!!」
「…………ウェイズリー、君はそういうことをすることしか頭にはないのか」
ユーリスが赤くなりながら、睨みつけるように言うと、ウェイズリーは頷いた。
「だってユーリスは私の番なのだから、私はいつも交尾したい!! 交尾したいと思うのは当然だ!!」
あまりにもあけすけに、無邪気にそう言い放つウェイズリーの言動に、ユーリスは疲れた思いがある。出会った時からもう三十年以上経つのに、黄金竜ウェイズリーはいつも子供じみた事ばかり言う。黄金竜というのは、歳月が経っても精神はそれほど成長しないのだろうか。
出会った時は、小さくて可愛らしい雛竜だったウェイズリー。三十年経っても、子供のような我儘ばかり言う。
文句を言うウェイズリーをいつもなだめすかして、今日のこの日までユーリスは過ごしてきた。
ユーリスが、物音を立てぬように、シャツの襟元を緩めているところで、寝台から手が伸びて、ユーリスの身体を寝台の上に倒した。
ユーリスのすぐ横に、シルヴェスターが肘をついて横になっている。そして碧い双眸がユーリスを見つめた。
「遅かったな」
「ええ」
現場での壊れた橋の除去はうまくいったが、その後、こまごまとした報告書類の作成や橋を再建するための技術者の手配などの処理があったのだ。
「全部うまく済みました。陛下」
ユーリスがそう言うと、その顎にシルヴェスターは噛みつく真似をする。
「今はヴィーと呼べ。お前に寝台の中でまで陛下と呼ばれたくない」
そうシルヴェスターが言うと、ユーリスは笑って、シルヴェスターの身体に両手を回して口づけた。
「仰せのままに」
角度を変えて、優しく啄むように口づける。シルヴェスターの手が、ユーリスのシャツの胸元のボタンを外していく。
「疲れていらっしゃるのでは」
そう尋ねるユーリスに、シルヴェスターは「大丈夫だ。お前の方こそ疲れているのではないか」と少し心配そうに聞いてくるので、ユーリスはクスクスと笑った。そしてユーリスもシルヴェスターの寝間着の前を解き始める。互いに互いの服を脱がし合い、温かな素肌を合わせる。触れ合う肌のその気持ち良さに喜びを覚える。何度も口付け、寝台の上に横になりながら、互いの身体を絡ませ合う。
いつものように、ゆっくりと身体を重ねる。寝台の上で甘く声を上げて、やがて乱れるユーリスの姿をシルヴェスターは目を細めて見つめる。もう何度となく身体を繋げているはずなのに、飽きることなく、ただただ互いへの愛おしさだけが込み上げてくる。
シルヴェスターは、ユーリスの下腹に刻まれた魔法の紋様に触れた。
建国から三十年過ぎてなお、ユーリスとシルヴェスターは忙しさの中にあり、次の子を作ることはなかった。ただ、忙しさを言い訳にしているところもある。ユーリスは、父ジャクセンの死後、口数のめっきり少なくなったルドガーのことを案じている。そのせいもあって、次の子を望む気になかなかならないようだった。
無理に子を作る必要はない。今でも十分幸せだとユーリスは口にする。だが、黄金竜ウェイズリーには番のユーリスにたくさんの卵を産ませたいという野望(?)があるようで、本当なら、下腹の魔法紋も消してしまいたい様子だ。でも、魔法紋をユーリスの身体に刻んだ契機になった出来事が、ウェイズリーが自分勝手にユーリスに何も知らせずに、孕ませたことにあったため、「魔法紋を消したい」とは、ウェイズリーの方から言い出しにくいようだ。
シルヴェスター自身も、実はユーリスとの間にまた子が欲しい。
今度は、ユーリスに似ている子が生まれたらと願っているが、やはりシルヴェスターもそのことは口に出せない。卵を孕むことの決定権は、ユーリスにあると考えていたからだ。
それに、シルヴェスターもウェイズリーも、そしてユーリスもまだまだ長く生きるというのなら、急ぐ必要はない。きっとユーリスも、いつか気持ちが変わるだろうと、この時は随分と悠長に構えていたのだった。
仕事を終えたら、こんな遅い時間になってしまったのだ。
ユーリスもシルヴェスターも二人とも、それぞれ仕事に追われる生活をしている。どちらかが眠っている時に、もう一人が部屋へ入って来るとなると、せっかく眠っていたのを起こしてしまう。十分休息を取るためにも、寝室は分けた方が良いのではないかと、ユーリスが申し出た事があった。しかし、シルヴェスターも黄金竜ウェイズリーも断固反対を口にした。番と同じ寝床で眠らないなんて、あり得ない。
「そんなことになるのなら、私は王なんぞ辞めるぞ!!」と黄金竜ウェイズリーは本気で口にしていたので、ユーリスは慌てた。まさかそんなことくらいで、王座を放り出すなんて考えられなかったのだ。しかし、黄金竜ウェイズリーの目は本気だった。
ウェイズリーはまた文句をぶつぶつと言い始める。その文句が長いので、ユーリスはいつも閉口してしまう。ウェイズリー曰く、こうだった。
「シルヴェスターが王になりたいと言っているので、私は仕方なく付き合ってやっているのだ!! 王なんて面倒ごとばかりではないか!! そのせいで私は、ユーリスと過ごす時間がたくさん減って、ユーリスに〇〇も××も、△△もする時間が無くなっている!! 私はもっと〇〇したいのに!!」
性的な言葉を平気で口にするウェイズリーに、サッとユーリスの頬が赤くなる。
「もっと××××できる時間が欲しい!!」
「…………ウェイズリー、君はそういうことをすることしか頭にはないのか」
ユーリスが赤くなりながら、睨みつけるように言うと、ウェイズリーは頷いた。
「だってユーリスは私の番なのだから、私はいつも交尾したい!! 交尾したいと思うのは当然だ!!」
あまりにもあけすけに、無邪気にそう言い放つウェイズリーの言動に、ユーリスは疲れた思いがある。出会った時からもう三十年以上経つのに、黄金竜ウェイズリーはいつも子供じみた事ばかり言う。黄金竜というのは、歳月が経っても精神はそれほど成長しないのだろうか。
出会った時は、小さくて可愛らしい雛竜だったウェイズリー。三十年経っても、子供のような我儘ばかり言う。
文句を言うウェイズリーをいつもなだめすかして、今日のこの日までユーリスは過ごしてきた。
ユーリスが、物音を立てぬように、シャツの襟元を緩めているところで、寝台から手が伸びて、ユーリスの身体を寝台の上に倒した。
ユーリスのすぐ横に、シルヴェスターが肘をついて横になっている。そして碧い双眸がユーリスを見つめた。
「遅かったな」
「ええ」
現場での壊れた橋の除去はうまくいったが、その後、こまごまとした報告書類の作成や橋を再建するための技術者の手配などの処理があったのだ。
「全部うまく済みました。陛下」
ユーリスがそう言うと、その顎にシルヴェスターは噛みつく真似をする。
「今はヴィーと呼べ。お前に寝台の中でまで陛下と呼ばれたくない」
そうシルヴェスターが言うと、ユーリスは笑って、シルヴェスターの身体に両手を回して口づけた。
「仰せのままに」
角度を変えて、優しく啄むように口づける。シルヴェスターの手が、ユーリスのシャツの胸元のボタンを外していく。
「疲れていらっしゃるのでは」
そう尋ねるユーリスに、シルヴェスターは「大丈夫だ。お前の方こそ疲れているのではないか」と少し心配そうに聞いてくるので、ユーリスはクスクスと笑った。そしてユーリスもシルヴェスターの寝間着の前を解き始める。互いに互いの服を脱がし合い、温かな素肌を合わせる。触れ合う肌のその気持ち良さに喜びを覚える。何度も口付け、寝台の上に横になりながら、互いの身体を絡ませ合う。
いつものように、ゆっくりと身体を重ねる。寝台の上で甘く声を上げて、やがて乱れるユーリスの姿をシルヴェスターは目を細めて見つめる。もう何度となく身体を繋げているはずなのに、飽きることなく、ただただ互いへの愛おしさだけが込み上げてくる。
シルヴェスターは、ユーリスの下腹に刻まれた魔法の紋様に触れた。
建国から三十年過ぎてなお、ユーリスとシルヴェスターは忙しさの中にあり、次の子を作ることはなかった。ただ、忙しさを言い訳にしているところもある。ユーリスは、父ジャクセンの死後、口数のめっきり少なくなったルドガーのことを案じている。そのせいもあって、次の子を望む気になかなかならないようだった。
無理に子を作る必要はない。今でも十分幸せだとユーリスは口にする。だが、黄金竜ウェイズリーには番のユーリスにたくさんの卵を産ませたいという野望(?)があるようで、本当なら、下腹の魔法紋も消してしまいたい様子だ。でも、魔法紋をユーリスの身体に刻んだ契機になった出来事が、ウェイズリーが自分勝手にユーリスに何も知らせずに、孕ませたことにあったため、「魔法紋を消したい」とは、ウェイズリーの方から言い出しにくいようだ。
シルヴェスター自身も、実はユーリスとの間にまた子が欲しい。
今度は、ユーリスに似ている子が生まれたらと願っているが、やはりシルヴェスターもそのことは口に出せない。卵を孕むことの決定権は、ユーリスにあると考えていたからだ。
それに、シルヴェスターもウェイズリーも、そしてユーリスもまだまだ長く生きるというのなら、急ぐ必要はない。きっとユーリスも、いつか気持ちが変わるだろうと、この時は随分と悠長に構えていたのだった。
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