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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第十章 蝶の夢(下)
第三話 三カ国の後始末
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そしてその頃、シルヴェスターとユーリスの子であるルドガー王子は、苛立ちの中にあった。
空中城にいるユーリスが目覚め、卵を孕んでいるという話をルドガー王子はまだ耳にしていなかった。それというのも、彼は、空中城に足を運ぶ余裕がなかった。彼はゴルティニア王国の政に巻き込まれていた。
伴侶であるユーリスの記憶を失ったシルヴェスター。
シルヴェスターは、同じ王城の中に、別の黄金竜としてルドガーが存在することを「おかしなこと」だとは思っていない。ルドガーのことは、シルヴェスターを手伝ってくれる仲間の黄金竜だと考えているようだ。自分の息子であるという考えはない。ルドガーの存在に違和感を感じ、その出自に疑問を抱くことも無い。それもやはり、白銀竜達の精神支配魔法によるもののようだ。
こんなにもシルヴェスターに顔立ちが似ていて、王子の身分にルドガーはあるのに。
その出自にまったく疑問を抱いていないという事実に、ルドガーは白銀竜達の精神支配魔法の強さを感じていた。
しかし、白銀竜達は、そのバカバカしいほどの他への恐るべき破壊力・攻撃力と精神支配魔法など魔法の強さとは裏腹に、政に関する能力はからっきしなかった。
彼らがあっさり滅ぼしてしまったプトレイセン王国、イーサ王国とフェルゼナ王国の後処理は結局、シルヴェスター国王やルドガー王子が担うことになった。
「三か国の王族達は憂いなきよう、すべて始末して参りました」と白銀竜達は意気揚々と告げたが、「すべて」始末せずに「少しは残しておく」必要があった。おかげでルドガーはシルヴェスターの指示で現地三か国すべてに足を運び、三か国の王座につける人物を四方八方探さなければならなかった。
シルヴェスターは、三か国をゴルティニア王国に併合するつもりはなかった。
そのことに、白銀竜の姉弟は驚いていた。
「陛下、わたくし達が力を貸します。このゴルティニア王国をもっと大きくして、陛下の偉大なる力を大陸中に知らしめましょう」
と、大陸制覇に乗り気であった。
白銀竜達は知らぬことであったが、言っていることは黄金竜ウェイズリーと全く一緒である。
黄金竜ウェイズリーも、番ユーリスの膝の上で仁王立ちして「ゴルティニアに併合してしまえばいい」「この大陸全土の支配が可能だぞ」と言い放っていたのだ。
そしてその時、黄金竜ウェイズリーはユーリスからたしなめられていたのだ。
でも今、シルヴェスターのそばにはユーリスはいない。シルヴェスターにそれを進言するものはいない。
けれど、シルヴェスターの心の奥底にはユーリスからの言葉が残っているかのように、シルヴェスターは白銀竜達の言葉に同意することはなかった。
また、プトレイセン王国、イーサ王国とフェルゼナ王国の三か国の王族達をあっさり滅ぼしてしまったことに対して、今や、ゴルティニア王国は周辺の国々から非常に警戒心を抱かれてしまっている。
かつてこの大陸全土に覇を唱えようと、周辺国に侵攻したサトー王国と同じことを、ゴルティニア王国も始めようとしているのではないかと懸念されているのだ。当然のことだった。
だからこそ、ゴルティニア王国は三カ国の王族達を滅ぼしたのは、ゴルティニア王国へ先に侵攻した三カ国に非があることであり、それゆえに起こした対応だったと述べるしかない。それ以上の、より多くの利を得てはならないのだ。
実際、シルヴェスター国王に助言する貴族会議の委員達も慎重論を唱えている。
国として新しく興ったばかりのゴルティニアである。どれほど強国であろうとも、すべての国を敵に回しては生き残っていけない。
シルヴェスター国王の命令で、ルドガー王子はプトレイセン王国他二か国を、官僚達と足を運び、無条件降伏文書を受け取った後の処理をしなければならなかった。不可侵条約は元より、友好条約の締結、ゴルティニア側からの援助などの取り決めをするなどである。ルドガーは内心(こんな仕事、ユーリスがいたら彼がする仕事なのに)とブツブツと不満を呟くが、もしユーリスをルドガーが眠らせず、白銀竜達をゴルティニア王国の王城に招かなければ、そもそも、白銀竜がプトレイセン王国他二か国の王族達をすべて滅ぼすという暴挙に出ることは絶対になかったはずである。
すべて自分が招いたことである。
それをルドガーは分かっていた。
だから不満をぐっと飲み込んで、ルドガーはゴルティニア王国の王子としての仕事を果たすため、懸命に働いていたのだった。
ただ裏では、白銀竜達に対して、ルドガーは強く言った。
「いいか、もう他の国の王族達を勝手に始末するな」
ルドガーの苛々とした声に、白銀竜エリザヴェータは心外そうな顔をしていた。
「陛下のお許しを得てやったことです」
「シルヴェスターは王族達を全滅させて良いなど言っていないだろう!!」
「害する国の始末を任せて欲しい」と白銀竜の姉弟は、国王シルヴェスターに進言した。
確かに細かなことは決めていなかったけれど、逆らう者は見せしめのためにも全滅させるのが一番良い。
自分達は間違えたことはしていないというように、白銀竜エリザヴェータとコンラートは顔を見合わせている。そうした様子に邪気を感じられず、余計ルドガーは腹立たしく思っていた。
悪意のない無能が大きな力を持つことこそが、一番タチが悪い。
そんなことをルドガーは格言のように心に抱いたのだった。
空中城にいるユーリスが目覚め、卵を孕んでいるという話をルドガー王子はまだ耳にしていなかった。それというのも、彼は、空中城に足を運ぶ余裕がなかった。彼はゴルティニア王国の政に巻き込まれていた。
伴侶であるユーリスの記憶を失ったシルヴェスター。
シルヴェスターは、同じ王城の中に、別の黄金竜としてルドガーが存在することを「おかしなこと」だとは思っていない。ルドガーのことは、シルヴェスターを手伝ってくれる仲間の黄金竜だと考えているようだ。自分の息子であるという考えはない。ルドガーの存在に違和感を感じ、その出自に疑問を抱くことも無い。それもやはり、白銀竜達の精神支配魔法によるもののようだ。
こんなにもシルヴェスターに顔立ちが似ていて、王子の身分にルドガーはあるのに。
その出自にまったく疑問を抱いていないという事実に、ルドガーは白銀竜達の精神支配魔法の強さを感じていた。
しかし、白銀竜達は、そのバカバカしいほどの他への恐るべき破壊力・攻撃力と精神支配魔法など魔法の強さとは裏腹に、政に関する能力はからっきしなかった。
彼らがあっさり滅ぼしてしまったプトレイセン王国、イーサ王国とフェルゼナ王国の後処理は結局、シルヴェスター国王やルドガー王子が担うことになった。
「三か国の王族達は憂いなきよう、すべて始末して参りました」と白銀竜達は意気揚々と告げたが、「すべて」始末せずに「少しは残しておく」必要があった。おかげでルドガーはシルヴェスターの指示で現地三か国すべてに足を運び、三か国の王座につける人物を四方八方探さなければならなかった。
シルヴェスターは、三か国をゴルティニア王国に併合するつもりはなかった。
そのことに、白銀竜の姉弟は驚いていた。
「陛下、わたくし達が力を貸します。このゴルティニア王国をもっと大きくして、陛下の偉大なる力を大陸中に知らしめましょう」
と、大陸制覇に乗り気であった。
白銀竜達は知らぬことであったが、言っていることは黄金竜ウェイズリーと全く一緒である。
黄金竜ウェイズリーも、番ユーリスの膝の上で仁王立ちして「ゴルティニアに併合してしまえばいい」「この大陸全土の支配が可能だぞ」と言い放っていたのだ。
そしてその時、黄金竜ウェイズリーはユーリスからたしなめられていたのだ。
でも今、シルヴェスターのそばにはユーリスはいない。シルヴェスターにそれを進言するものはいない。
けれど、シルヴェスターの心の奥底にはユーリスからの言葉が残っているかのように、シルヴェスターは白銀竜達の言葉に同意することはなかった。
また、プトレイセン王国、イーサ王国とフェルゼナ王国の三か国の王族達をあっさり滅ぼしてしまったことに対して、今や、ゴルティニア王国は周辺の国々から非常に警戒心を抱かれてしまっている。
かつてこの大陸全土に覇を唱えようと、周辺国に侵攻したサトー王国と同じことを、ゴルティニア王国も始めようとしているのではないかと懸念されているのだ。当然のことだった。
だからこそ、ゴルティニア王国は三カ国の王族達を滅ぼしたのは、ゴルティニア王国へ先に侵攻した三カ国に非があることであり、それゆえに起こした対応だったと述べるしかない。それ以上の、より多くの利を得てはならないのだ。
実際、シルヴェスター国王に助言する貴族会議の委員達も慎重論を唱えている。
国として新しく興ったばかりのゴルティニアである。どれほど強国であろうとも、すべての国を敵に回しては生き残っていけない。
シルヴェスター国王の命令で、ルドガー王子はプトレイセン王国他二か国を、官僚達と足を運び、無条件降伏文書を受け取った後の処理をしなければならなかった。不可侵条約は元より、友好条約の締結、ゴルティニア側からの援助などの取り決めをするなどである。ルドガーは内心(こんな仕事、ユーリスがいたら彼がする仕事なのに)とブツブツと不満を呟くが、もしユーリスをルドガーが眠らせず、白銀竜達をゴルティニア王国の王城に招かなければ、そもそも、白銀竜がプトレイセン王国他二か国の王族達をすべて滅ぼすという暴挙に出ることは絶対になかったはずである。
すべて自分が招いたことである。
それをルドガーは分かっていた。
だから不満をぐっと飲み込んで、ルドガーはゴルティニア王国の王子としての仕事を果たすため、懸命に働いていたのだった。
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「害する国の始末を任せて欲しい」と白銀竜の姉弟は、国王シルヴェスターに進言した。
確かに細かなことは決めていなかったけれど、逆らう者は見せしめのためにも全滅させるのが一番良い。
自分達は間違えたことはしていないというように、白銀竜エリザヴェータとコンラートは顔を見合わせている。そうした様子に邪気を感じられず、余計ルドガーは腹立たしく思っていた。
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そんなことをルドガーは格言のように心に抱いたのだった。
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