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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第十章 蝶の夢(下)
第五話 空中城での話し合い
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獅子の面を持つ魔族ローエングリンは、魔族の中でも強い力を持つ高位魔族だった。
ルドガーはそのことを知っていた。だが、高位魔族のローエングリンが挑んだとしても白銀竜二頭に勝つことは難しいと考えている。
なにせ、白銀竜二頭は未だに、黄金竜ウェイズリーことシルヴェスター国王の精神に力を及ぼしている。
白銀竜がシルヴェスターをけしかけた日には、白銀竜二頭+シルヴェスター(黄金竜)対ローエングリン+魔族軍団の戦いになり、そして竜達の圧倒的な力に負けるだろう。
また次に考えうる最悪のケースとしては、王城に赴いた瞬間、ローエングリンの配下の魔族達が、白銀竜の精神支配魔法に支配されてしまうケースだった。それに白銀竜がローエングリンに対して、本気を出してその精神を支配しようと術をかけることだって考えられる。
ルドガーは、白銀竜に無策で挑んでも負けるだけだとローエングリンを懸命に説得していた。結局、ローエングリンを引き留めることが出来た言葉は次のものだった。
「ユーリスが、ずっと眠りについたままなのです。一度、ローエングリン殿にも見てもらえないでしょうか。何かしらのお知恵を拝借できないかと思います」
それで、獅子面の騎士ローエングリンは、ゴルティニア王国の王城に巣食う白銀竜達の成敗を、取り合えず今は止めておこうと鉾を収めた。
シルヴェスター国王の伴侶ユーリスのことが、ローエングリンも気にかかったのだ。
シルヴェスターの伴侶ユーリスには、これまでローエングリンは何度も会ったことがある。
シルヴェスターが、黒髪の美貌のその青年をこよなく愛していることは、傍目からも明らかで、二人は常に一緒にいた。そして穏やかな性格のユーリスは非常に優秀で、彼はシルヴェスターによく尽くしていたから、シルヴェスターの忠実な部下でもあるローエングリンは、ユーリスに対して極めて好印象を持っていた。
ローエングリンはシルヴェスターが黄金竜ウェイズリーと“同化”していることも、シルヴェスターから直接説明を受けて知っていたし、シルヴェスターの伴侶ユーリスが、人間であったのに別の存在に変えられていることも知っていた。何故なら、シルヴェスターのそばに居るユーリスに、何度会ったとしても、彼は年を重ねることなく若々しい姿のままであったからだ。そしてユーリスは、男の身でありながらも卵まで産んで、その卵から黄金竜ルドガー王子が孵ったこともローエングリンは知っていた。
そのユーリスが、今、どうしているのかローエングリンは気になっていた。
だからルドガーは、ローエングリンが気を変えない内に、空中城で眠りについているユーリスに会わせようと、ローエングリンを連れて、再び空中城に転移したのだった。
空中城に転移したルドガーは驚いた。
そこに、長い眠りから目を覚ましたユーリスがいたからだった。
小人達に案内された部屋にいたのは、小人達の精緻な刺繍の施された薄いグリーンの衣装をまとったユーリスで、彼は椅子に座り、現れたルドガー王子を見つめた後、ローエングリンに向かって挨拶の声をかけた。
「ご無沙汰しています、ローエングリン殿」
獅子面の騎士の男は、ユーリスの顔を見てから、ルドガー王子に対して不機嫌そうに言った。
「グルグルグルゥグル(寝ていないではないか)」
ルドガーは目を大きく見開き、呆然とした声で言う。
「ユーリス、目覚めたのか」
その驚きっぷりに、ローエングリンもルドガーが、ユーリスの目覚めを知らなかったと知る。
ユーリスの傍らにいる青年が、説明するように口を挟んだ。
「少し前にお目覚めになったのです。ルドガー殿下にご連絡しようと思ったのですが、空中城から殿下に連絡する手段がなかったため、申し訳ありません」
半年間目覚めることがなかったユーリス。
このままずっと目覚めないことも考えられると、ルドガーは少しだけ暗い思いも抱いていた。そしてプトレイセン王国の件もあったため、ユーリスのことを気に掛ける気持ちもあったが、それが後回しになっていたことは事実だった。
空中城に、ユーリスに会いに行くたびに、彼はずっと変わらず、眠り続けていた。
それは自分のせいだとルドガーは知っていたし、そのことに対する罪悪感がまったくないわけではなかった。
でも、今は素直にユーリスが目覚めたことが嬉しかった。
「…………よかった、ユーリスが……目を覚まして」
ぽつりぽつりと呟くように言うルドガーに、ユーリスは複雑な視線を向ける。
ユーリスは、自分が長い眠りに就く前、ルドガーによって魔法をかけられたことを覚えていた。
それをルドガーに会ったのなら、問い質さなければならないとユーリスは当然考えていたのだった。
しかし、今、この場には獅子面の騎士ローエングリンもいる。
問い質すことは後回しにせざるを得ない。
ローエングリンは、ユーリスの無事を素直に喜びながらも、彼はこう尋ねた。
「グルグルグルゥグルグルルルル(それで、ユーリス殿はシルヴェスター陛下の状況をご存知なのですか?)」
ローエングリンとルドガーは椅子に座り、ユーリスと向かい合って話を始める。
ユーリスもまた、ローエングリンの口から発せられる魔族の言葉を解することが出来ていた。
ローエングリンの質問に、ユーリスは頷いた。
「ええ。こちらの私の部下が、現状について報告をしてくれました」
「グルゥグルグルグルルルルルグル!!(もしユーリス殿が、シルヴェスター陛下を奪還したいとお考えなら、私も加勢致しますぞ!!)」
そのローエングリンの言葉に、(こいつなんてことをユーリスに言っているんだ!!)とルドガーはローエングリンを睨みつける。
ユーリスは、たとえ黄金竜によって、人の身から“竜人”という身体に変えられたとしていても、不老で長命で、身体が頑丈で馬鹿力になったくらいで、竜と戦うなんてことは到底出来ない。返り討ちに遭うのが関の山である。
当然、ルドガーは反対を口にする。
「無茶だ。ユーリスが王城に向かっても、白銀竜達にやられるだけになる」
「グルゥグルグルグルルルルゥ!!(なら、シルヴェスター陛下をそのままにしておくつもりなのか!!)」
ローエングリンもまた、ルドガーを睨みつけ、二人して険悪な雰囲気になりかけた時、ユーリスが口を開いた。
「私は卵を孕んでいるから、今は動けないです」
その言葉に、ローエングリンもルドガーも、瞬間、ユーリスの方を振り向いて、二人して目を見開き呆然としていたのだった。
ルドガーはそのことを知っていた。だが、高位魔族のローエングリンが挑んだとしても白銀竜二頭に勝つことは難しいと考えている。
なにせ、白銀竜二頭は未だに、黄金竜ウェイズリーことシルヴェスター国王の精神に力を及ぼしている。
白銀竜がシルヴェスターをけしかけた日には、白銀竜二頭+シルヴェスター(黄金竜)対ローエングリン+魔族軍団の戦いになり、そして竜達の圧倒的な力に負けるだろう。
また次に考えうる最悪のケースとしては、王城に赴いた瞬間、ローエングリンの配下の魔族達が、白銀竜の精神支配魔法に支配されてしまうケースだった。それに白銀竜がローエングリンに対して、本気を出してその精神を支配しようと術をかけることだって考えられる。
ルドガーは、白銀竜に無策で挑んでも負けるだけだとローエングリンを懸命に説得していた。結局、ローエングリンを引き留めることが出来た言葉は次のものだった。
「ユーリスが、ずっと眠りについたままなのです。一度、ローエングリン殿にも見てもらえないでしょうか。何かしらのお知恵を拝借できないかと思います」
それで、獅子面の騎士ローエングリンは、ゴルティニア王国の王城に巣食う白銀竜達の成敗を、取り合えず今は止めておこうと鉾を収めた。
シルヴェスター国王の伴侶ユーリスのことが、ローエングリンも気にかかったのだ。
シルヴェスターの伴侶ユーリスには、これまでローエングリンは何度も会ったことがある。
シルヴェスターが、黒髪の美貌のその青年をこよなく愛していることは、傍目からも明らかで、二人は常に一緒にいた。そして穏やかな性格のユーリスは非常に優秀で、彼はシルヴェスターによく尽くしていたから、シルヴェスターの忠実な部下でもあるローエングリンは、ユーリスに対して極めて好印象を持っていた。
ローエングリンはシルヴェスターが黄金竜ウェイズリーと“同化”していることも、シルヴェスターから直接説明を受けて知っていたし、シルヴェスターの伴侶ユーリスが、人間であったのに別の存在に変えられていることも知っていた。何故なら、シルヴェスターのそばに居るユーリスに、何度会ったとしても、彼は年を重ねることなく若々しい姿のままであったからだ。そしてユーリスは、男の身でありながらも卵まで産んで、その卵から黄金竜ルドガー王子が孵ったこともローエングリンは知っていた。
そのユーリスが、今、どうしているのかローエングリンは気になっていた。
だからルドガーは、ローエングリンが気を変えない内に、空中城で眠りについているユーリスに会わせようと、ローエングリンを連れて、再び空中城に転移したのだった。
空中城に転移したルドガーは驚いた。
そこに、長い眠りから目を覚ましたユーリスがいたからだった。
小人達に案内された部屋にいたのは、小人達の精緻な刺繍の施された薄いグリーンの衣装をまとったユーリスで、彼は椅子に座り、現れたルドガー王子を見つめた後、ローエングリンに向かって挨拶の声をかけた。
「ご無沙汰しています、ローエングリン殿」
獅子面の騎士の男は、ユーリスの顔を見てから、ルドガー王子に対して不機嫌そうに言った。
「グルグルグルゥグル(寝ていないではないか)」
ルドガーは目を大きく見開き、呆然とした声で言う。
「ユーリス、目覚めたのか」
その驚きっぷりに、ローエングリンもルドガーが、ユーリスの目覚めを知らなかったと知る。
ユーリスの傍らにいる青年が、説明するように口を挟んだ。
「少し前にお目覚めになったのです。ルドガー殿下にご連絡しようと思ったのですが、空中城から殿下に連絡する手段がなかったため、申し訳ありません」
半年間目覚めることがなかったユーリス。
このままずっと目覚めないことも考えられると、ルドガーは少しだけ暗い思いも抱いていた。そしてプトレイセン王国の件もあったため、ユーリスのことを気に掛ける気持ちもあったが、それが後回しになっていたことは事実だった。
空中城に、ユーリスに会いに行くたびに、彼はずっと変わらず、眠り続けていた。
それは自分のせいだとルドガーは知っていたし、そのことに対する罪悪感がまったくないわけではなかった。
でも、今は素直にユーリスが目覚めたことが嬉しかった。
「…………よかった、ユーリスが……目を覚まして」
ぽつりぽつりと呟くように言うルドガーに、ユーリスは複雑な視線を向ける。
ユーリスは、自分が長い眠りに就く前、ルドガーによって魔法をかけられたことを覚えていた。
それをルドガーに会ったのなら、問い質さなければならないとユーリスは当然考えていたのだった。
しかし、今、この場には獅子面の騎士ローエングリンもいる。
問い質すことは後回しにせざるを得ない。
ローエングリンは、ユーリスの無事を素直に喜びながらも、彼はこう尋ねた。
「グルグルグルゥグルグルルルル(それで、ユーリス殿はシルヴェスター陛下の状況をご存知なのですか?)」
ローエングリンとルドガーは椅子に座り、ユーリスと向かい合って話を始める。
ユーリスもまた、ローエングリンの口から発せられる魔族の言葉を解することが出来ていた。
ローエングリンの質問に、ユーリスは頷いた。
「ええ。こちらの私の部下が、現状について報告をしてくれました」
「グルゥグルグルグルルルルルグル!!(もしユーリス殿が、シルヴェスター陛下を奪還したいとお考えなら、私も加勢致しますぞ!!)」
そのローエングリンの言葉に、(こいつなんてことをユーリスに言っているんだ!!)とルドガーはローエングリンを睨みつける。
ユーリスは、たとえ黄金竜によって、人の身から“竜人”という身体に変えられたとしていても、不老で長命で、身体が頑丈で馬鹿力になったくらいで、竜と戦うなんてことは到底出来ない。返り討ちに遭うのが関の山である。
当然、ルドガーは反対を口にする。
「無茶だ。ユーリスが王城に向かっても、白銀竜達にやられるだけになる」
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ローエングリンもまた、ルドガーを睨みつけ、二人して険悪な雰囲気になりかけた時、ユーリスが口を開いた。
「私は卵を孕んでいるから、今は動けないです」
その言葉に、ローエングリンもルドガーも、瞬間、ユーリスの方を振り向いて、二人して目を見開き呆然としていたのだった。
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