転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第十章 蝶の夢(下)

第十五話 見つける(上)

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 ユーリスが、ゴルティニア王国にあるバンクール商会の王都支店に滞在して三日が経とうとしていた。この支店は、ユーリスがゴルティニア王国の王子であるシルヴェスターと婚姻を結んですぐに、父ジャクセンが設けたものだった。
 ラウデシア王国原産の素晴らしい毛皮や革製品、手の込んだ彫金の宝飾品、柔らかな布地を使った衣装などを販売し、相応の収益を上げていた。

 王城にいるユーリスの姿が消えた後、支店の者達は心配して、王城に何度も遣いを出していたが、ろくな返事がもらえずにいて、どうしたものかとラウデシア王国にいるコレット達と連絡をとっていた。
 そして一年が経って、ようやくユーリスの無事な姿を見られた支店の者達は安堵していた。

 支店長は王城で何が起きているのかとユーリスに尋ねる。
 ここでもユーリスは、バンクール商会が、ゴルティニア王家の事情に踏み込まない方が良いと告げた。バンクール商会が口を挟んで良い結果になるとは思えない。むしろ、商会の者達が人の身であるならば、逆に白銀竜達から洗脳されてしまう可能性がある。出来るだけ、距離をとるように忠告した。

 ユーリスは自分の姿がすっぽりと隠れる灰色のフードのついたマントを、商会で購入した。
 そして胸元には、小さな黄金竜ウェイズリーを入れる。
 ウェイズリーはユーリスの温かな胸元に入れることが嬉しくて、甘えて鳴いて、頭を擦りつけてきた。その頭頂にユーリスは優しくキスをする。

「明日、シルヴェスターが王都の東街を視察にくると聞いた」

 バンクール商会の支店長が教えてくれた。
 ユーリスは、シルヴェスターの姿を人混みに紛れて見るつもりだった。
 早く、彼の無事な姿を確認したかった。

 それからなんとか王城に忍び込む方法を考えようと思っている。
 バンクール商会の店員達に頼んで、王城に一緒に入らせてもらうことも考えたが、商会の者達を出来るだけ巻き込みたくなかった。自分一人なら忍び込むことも出来そうだと考えていた。

 ともあれ、シルヴェスターの無事な姿を見てから考えよう。

「早くヴィーに会いたい」

 ぽつりと呟くように言うと、小さな黄金竜も「キュルー」と鳴いて同意してくれる。

「ウェイズリーは優しいな。慰めてくれるのかい」

「キュイキュイ」

 コクリコクリと頷く小さな竜に、ユーリスは笑った。そしてその笑い顔を見て、小さな竜も嬉しそうに目を輝かせる。
 この小さな竜、ウェイズリーの分身がそばにいてくれることで、随分と自分は慰められているとユーリスは思っていた。シルヴェスターに会いたい。そして勿論、その中にいるウェイズリーにも早く会いたかった。
 シルヴェスターは、同化しているウェイズリーに交代することなく、ずっとシルヴェスターの姿のまま過ごしているようだった。きっと白銀竜達にウェイズリーが抑え込まれているような状況にあるのだろう。そのことを考えると、このまま放っておくことは絶対に出来ないとユーリスは考えている。

 この胸元の小さな黄金竜が、シルヴェスターの身体に少しでも触れれば、それが鍵となって過去の記憶が解放されると聞いている。そのことはユーリスにとっての大きな希望だった。

 翌日になり、ユーリスは一人、胸元に小さな黄金竜を隠し入れたまま、国王シルヴェスターが護衛達と共に通るという大通りに足を運んだ。
 すでに大勢の人達が、王と護衛の騎士達が通るのをいまかいまかと待ち構えている。

 ゴルティニア王国の若く凛々しい国王シルヴェスターは、国民の間でも高い人気があった。

 街の人々の間に紛れ込んでいたユーリスは、周囲の人々の話す声を耳にした。

「ユーリス様はどこに行かれたのだろうね」

「ずっとお見掛けしなくなっちゃったじゃないか」

 王城の外、王都では、白銀竜達の魔法の効果は無く、人々は王城から消えた国王の伴侶について噂していた。

「ご病気だって聞いたよ」

「いや、事故で亡くなったって聞いた」

 それらの噂話を耳にした、ユーリスの胸元の小さな黄金竜は不機嫌そうに唸り声を上げる。慌ててユーリスは声を潜めながら言った。

「ウェイズリー、いいんだ」

「キルキルキュルルルル!!(ユーリスはここにいるのに!!)」

 小さな黄金竜がカチカチと歯を鳴らして、怒りを表しているのを、ユーリスはなだめる。

「いいんだ、ウェイズリー」

 そこに、少し離れた場所から人々の歓声が聞こえた。
 「わぁ」という明るい声に、ユーリスは顔を上げる。次第にその歓声も近くで上がるようになり、遠目からでも馬に跨る騎士の男達の姿が見えた。

 幾重にも周囲を大柄な騎士達に囲まれながら馬に跨り進んで行く黄金の髪の若者の姿が見えた時、ユーリスはフードの下で目を凝らし、じっと彼を見つめた。

(ヴィーだ)

 陽の光を浴びて燦然と輝く黄金の髪。そして深い碧い瞳。騎士出身らしいがっしりとした鍛えられた身体。相変わらず整った凛々しい面をしているが、以前と違って、どこか鋭さがあり、甘さが消えている。

(一年ぶりだ。様子が少し変わっていても……仕方ない)

 一年会っていないのだ。
 自分の知らぬ一年をシルヴェスターが過ごしてきたことに、ユーリスの胸はきしむように痛む。
 
(でも、怪我もなく元気そうだ)

 そのことにホッとする。
 
(良かった)

 ユーリスが、心密かに安堵して、馬に跨がり道を進んで行くシルヴェスターの姿を目で追っていると、その時、シルヴェスターが一瞬ユーリスの方に顔を向けた。
 そして群衆の中のユーリスの視線と、シルヴェスターの視線が交差したのだ。

(え……)

 シルヴェスターは手綱を引き、護衛の騎士達に手を挙げて馬の歩みを止めさせる。
 彼の視線はユーリスの姿を捉えたままだった。

 突然馬を止めた若き国王に、ユーリスの周りの人々も戸惑いと共に、歓迎の声を上げている。

「陛下だ」

「陛下が止まったぞ」

「こちらを見ていらっしゃる」

 若い娘達は慌てて髪を整えたりしだしている。ユーリスは群衆の中で後ずさる。

「キュイキュイキュルル(ユーリス、行こう)」

 胸元の小さな黄金竜がそう言う。

「キュルキュルキュイキュルルキュイイイイル(シルヴェスターがユーリスに気が付いた。早くこの場から立ち去った方がいい)」
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