救いない怪異の世界をRPGの世界と勘違いしてるやつ

流石ユユシタ

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1章 山神編

黎明の独白 1

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 俺は生まれ変わっていた。


 ゲームでもそういう一度死んで、もう一度生まれるなんてものはあった。


 でも、まさか自分がそうなるとは思ってもみなかった。車が止まらなくて事故にあったのを覚えている。


 生まれ変わった場所は、山奥の家だった。五歳くらいの時だろうか。唐突に前世の記憶が蘇ったのだ。


 まぁ、戻ったと言っても、何も起こりはしなかったのだが。


 今世はじーちゃん、朝霧玄蔵という人と山奥で二人暮らしだった。なぜか、この人はずっと山奥で暮らしている。



「じーちゃん、山降りないの?」
「……降りられねぇんだ」



 降りられないらしい。足腰が弱いからかと思ったけど、割とじーちゃんは歩ける。


 なぜか、この場所に、縛られてるみたいに見えた。


 じーちゃんを見てると、前世の自分を思い出す。ずっと、両親の言いなりで、自分で何も決められなかった。



 スマホという機器が前世にはあった。俺は田舎に住んでいたけど、周りの同年代はみんな持っていた。


 そりゃ、皆が持ってたら、俺も欲しいと思ったけど、国に監視されるとか、洗脳されるとかで、両親は買ってくれなかった。


 一人だけ、何も持ってない。それが理由か、友達もできなかった。ずっと、両親から渡された宗教の本を読んだり、変な主教の会合に行ったりしただけだった。


 ご飯も宗教の決まりで、量も種類も制限されていた。一日一食、消毒とか言ってアルコールスプレーをかけて食べさせられていた。


 だから、吐いてしまう時もあったりで、俺は同年代で一番小さかった。それは男子だけでなく、女子よりも細くて小さかった。


 ずっと、一人で学校で過ごしていたっけ。図書室で本も読みたかったけど、それも許されなかった。



──なんか。ずっと、変われていない



 鏡を見た時、小さい体の自分が見えて、そう思った。ずっとずっと、俺は成長をしていない。


 何も変わっちゃいない。変われていない。


 周りの同年代は体も大きいし、色んな物を持ってて、色んなことを知っている。テレビの芸能人とか、SNS? 

 最新のゲームとか? 


 ……友達、欲しいなぁ。そう思った。


 だから、親に殴られてもゲームが欲しいとお願いをした。すると、古いゲームならやってもいいと言われた。



 周りと違う……そう思ったけど、やっぱり洗脳されるからこれしかダメと言われて、【ブレイブクエスト】というゲームをやってみた。PΩ2プレイオメガ2、略称PΩ2ピーオメ・ツーというゲーム機で出来た。


 

 RPG、と言われるゲーム。戦うほどにレベルアップし、色んな魔法や、技能が使えるようになる。どんどん強い武器とか、強い敵が増えてきて、知り合いも増えて、仲間も増えて。

 魔王を倒して、世界を救う。


 そんな夢のような話だった。すごくどハマりした。ずっと、その世界のことだけを考えていた。

 親は、宗教に従えば、望んだ世界にいけるといってた。
 もしそうなら、こういうゲームみたいな世界にいきたい。いって活躍したい。
 毎晩のように、そんな妄想をしながら寝るのが日課になっていた。



 その世界だけは、俺は成長ができて、どんな職業にもなれたから。





 その時に気づいた。




 ──俺は前に進みたい、変わりたい。このままで居たくない。そう思っていたんだ。





 だから、死ぬ瞬間に……ゲームのような世界に行きたい。変わりたいと願っていたんだ。




 前の親が言っていた、経典の通りに過ごせば来世では幸せになれると。思い通りの人生が過ごせるって。


 だから、もしかして、今の俺は……




「……うーん、これは?」




 ふと、六歳の時だ。自分の体に謎のオーラのようなエネルギーがあることに気づいた。


 これって、もしかして……。MPとかなのだろうか?


 前世にこんなエネルギーはなかった。両親は念波とかの講習を受けていたが、特に何も感じなかった。


 しかし、これはそれとは違う。確かにある。しかも、俺の中にだ!




「……もし、そうなら」



 そう思って、俺は冒険に出かけた。じーちゃんに内緒で、こっそりと家の中にある刀を持って。


 そして、俺は願いながら走っていたんだ。



 変わりたい、前に進みたい、ゲームの中のように。俺は、成長したい。停滞したくない。


 強くなりたい。強くなりたい、色んな事ができるように、色んなモンスターを倒したりしたい。


 色んな魔法を使ったりしたい。





「……ニンゲン、クウ、コロス」





──俺は出会ってしまった。





 全身から血が吹き出している。成人男性くらいに大きい黒鳥だった。ビシバシと、その鳥からは何やら威圧的なオーラを感じる。これはきっとMPなのだろう。


 これは、これは……モンスターだ。紛れも無い、モンスターだ。





「……倒したら、経験値、貰えるかな」








──俺は、その日、初めてモンスターと戦い、倒した。






「あ、なんか、感じる。流れてくる」




 
 体の中に、知らないエネルギーが流れてきた。全身から力が溢れてくるような、何か自分が大きい存在になったかのような、そんな感覚だ。




「これ、経験値とレベルアップ……? は、はは、マジかよ……これが成長ってやつ……?」




 体が歓喜に震えていた。変わりたい、前に進みたいそう思っていた俺は、ようやく自分を大きくする事ができたのだ。


 この感覚をなんて表現しようか。言葉で表せないほどの喜び。




「……まだ、いるよね。全部、経験値にしてやる」



 レベリングは、前世から嫌いではなかった。



 それが、俺の冒険の始まりだった。今でも前世の経験からか、強く思っている。


 強くなりたい、成長をしたい、前に進みたい、変わりたいと。



 だから、俺は今日もモンスターを狩るのだ。


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