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1章 山神編
第7話 勇者の実力
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白妙詩は黎明と共に夜の町を歩いている。黎明が新たに引っ越してきた場所は、影森町。
自然豊かで、人口も三万ほど、つまりは田舎町である。
夜は誰も外に出ない。街灯がつく程度で、なぜか人が町からは消えてしまう。誰もが家の中でずっと朝を待つだけの不思議な場所だ。
夜は静か。なんの音も聞こえないほどの静けさが特徴なのだが……どこか不気味な気配が充満する。
「うーん、やっぱり夜の方がテンション上がるなー」
「そんな人間はお前だけだ……」
黎明と白妙詩は夜道を手を繋ぎながら歩く。夜の静けさを壊すように、黎明は呑気だった。
詩は夜に出る怪異にびくびくしているが、黎明は怪異に早く会いたくてわくわくしているのだった。
「モンスター、早く出ないかな。山だったらすぐに出たんだけど」
「あの山は封印場所の内側。外からも呼び寄せられるように出来ているからな。遭遇率が違う。しかも、封印範囲も山一つ程度だからな。あっちの方がよくモンスターは出る」
「えぇ、それなら俺山に帰りたい。レベリングがっつりやりたいタイプなんだけど」
「おい、待て。帰ろうとするな。あの山にはやばい怪異、ではなくモンスターがいる。十六歳からの人間を食べるんだ。今の坊やでは流石に食べられる可能性がある、だからこそ、別の場所で修行して帰ると言う話だったろう」
「あ、そうだった。忘れてた」
黎明はでは、ここで怪異を倒していくしかないと納得をした。二人は歩きながら、町を見回る。すると田んぼが大量にあるあたりで奇妙な現象が起こった。
「なぁ、詩」
「どうした」
「あの田んぼでくねくねしてる、白い塊ってモンスターかな?」
「──!!!!? 馬鹿者!!! 見るな!!!!!!」
そう言って、黎明を抱き寄せて顔を胸に埋めた。お、こんな柔らかい感触は初めてだなと、黎明は思った。
「それはくねくねだ!!」
「……胸が」
「見ると精神に異常をきたす怪異、元々はネットの怪談から生まれた怪異だ!! 作り話の怪談だったが人間が恐怖することによって、概念として生まれてしまったんだ!! 見れば発狂、そのまま自死に至る!!! 微かに見ただけなら、助かった人間もいる!! 見るな!!」
「胸……」
顔にぎゅうぎゅうと胸があたり、流石に黎明も困った様子だった。しかし、そろそろ、このまま居るわけには行かないと思ったのか。黎明は彼女から一旦離れた。
「そんな慌てないで大丈夫。こっちは職業勇者だし。さっさとあのモンスター倒しておくか。【フレアボム】」
黎明の手のひらに集中した火球が、田んぼに向かって飛んでいく。くねくねと動いていた、怪異に命中し、火柱が空に上がった。
「ぎゃうあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
大きな絶叫のような声が聞こえた。黎明は満足気な表情をしながら、肩を回す。そのまま、自らの強くなった実感を得ていた。
「おっし、戦闘終了」
「……マジか。本当に、祓えるのか……」
黎明にとってはいつものことである。今まで怪異を倒してきた人生であるので、これくらいで何を驚くのかというレベルであった。
しかし、白妙詩にとっては違う。彼女は怪異を祓える存在など見たことがない。怪異とは人間が祓えない存在、台風や地震といった自然現象のようなものであると認識していた。
「……凄まじい術だ。五行術の炎宝か?」
「フレアボムね」
「あ、あぁ……そうか……随分と射程も長かった気がしたが、どれくらいまで飛ばせるんだ?」
「え? あー、あんまりやったことないしな。遠距離攻撃って嫌いなんだよね。経験値が薄いって言うかさ。だから、あんまりしたことはないけど……まぁ、もうちょっと飛ばせる気がする。あ、あそこにモンスターいるじゃん? やってみるか」
黎明と詩の位置から、およそ三百メートル離れた道の曲がり角付近。田んぼから住宅街に変わっている付近に、大きな蜂のような化け物が立っていた。
──何やら興奮をしているようで、羽の低空音があたりに響いている。
「フレアボム」
その蜂の怪異に向けて、黎明は再度、陰陽術炎宝を放射した。
(やはり、言霊を省き、正装すら関係ないか……とんだ規格外だ……)
詩は声には出さないが、驚愕するしかなかった。実は彼女は強気な物言いをするが実際は、寂しがり屋のびびりである。
だからこそ、その炎の鮮やかさには目を奪われていた。
(ここまでの術は初めてだ。そもそも五行術など、私は使えん。使えるだけでもすごいが、それでいて怪異を祓えるほどとはな。火之迦具土神の補助なしでここまでの出力を出せるなど、安倍晴明でも不可能だろうに)
陰陽術にはいくつかの分類がある。その中でも【五行術】と言われるのは、火、水、土、木、金の系統の術であり、それぞれの神から補助を受けなければ成立しない。
火の場合は火之迦具土神と言う神から、多大なる援助を受け、ようやく成立するのだ。朝霧玄蔵の場合は狩衣姿、言霊、そして呪符によるさらなる補助を使い、初めて成立させている。
しかし、それでも怪異を祓えるほどの出力などさせたことがない。
全てを省き、単独で怪異を吹き飛ばす──それはもはや“偉業”という言葉すら足りなかった。
「お、当たった」
「そのようだな……本当にすごいな」
「勇者だからね」
「……そうか、勇者か。分かった。本当にすごかった、もう坊やとは呼べないな。黎明と呼ぼう」
「お、それいいね。坊やはちょっと子供っぽいなと思ってたんだ」
黎明は命中した蜂の怪異が燃えるのを、見ていた。数秒経つと、燃え切った蜂の怪異は最初から居なかったように、霧散した。
「倒せたか。さて、次のモンスターを狩ろう」
次なる怪異を探そうとする黎明。だが、そのタイミングで詩はある提案をする。
「そろそろ帰るか」
「えぇ? まだ出たばっかりじゃん。もうちょっと倒したい。いつもは三十がノルマなの」
「……マジか、ただ、ちょっと私が疲れてきた。黎明に驚かされっぱなしだ」
「そう? じゃあ、一人で帰ってて。俺もうちょっと回るから。さっき廃墟とか、廃病院もあったし、あの辺いそうだから」
「いや、ダメだ、今日は帰るぞ。この短時間で二体も怪異と遭遇した、これは異常だ。普通はこんなに姿を目にすることはない」
「え、でも山だともっと居たけど」
「封印の内側だからだ。とにかく、これは異常事態だ」
「それは嬉しいな。もっとモンスターと会いたい」
黎明は怪異がたくさんいることを知り、ワクワクしているが、反対に詩は頭を悩ませていた。
「とにかく、今日は帰るぞ」
「ええー、それならやっぱり先帰っててよ、もうちょっと見たいし」
「……いや、その……」
一人で帰るのは怖いから、一緒にいてくれと詩は言いたかった。なんだかんだで、白妙詩と言う女は孤独であった。
それでいて、本当は夜が何よりも怖く、怪異が恐ろしくてたまらない。だが、ある理由から、その恐怖を押し殺して今の職業を続けているのだった。
しかし、そんな彼女の元にそれらを全て吹き飛ばす太陽のような少年が現れたのだ。
気づけば、なんとなくで繋いでいた手は、もう離さないと言わんばかりに握られていた。
「うーん、まぁ、良いけど、疲れてるのは本当みたいだし。今日は帰ろうか。ただ、明日はモンスターもっと探すからね」
「あ、あぁ、気を遣わせたな」
「それじゃ、帰ろー」
「あぁ……それと私は少し明日から留守にする、急に用事ができた」
「あ、そう」
「明日は存分に回ると良い。ここまで活発だと、訳ありかもしれん。何か分かったら教えてくれ」
(朝霧黎明、これは間違いなく、逸材だ。いや、そんな言葉では生ぬるいほどの可能性の塊。この原石をなんとしても曇らせないようにしなくては)
(朝霧家は人柱を量産する一族。そんな家には勿体ない。黎明のことは秘匿し、裏で育てる。人間の中には怪異に従う愚者もいる。こんな逸材がいると知られれば暗殺される可能性もある。まぁ、黎明を暗殺できる人間ってなんだよとは思うが……)
(あまり、知られない方がよい。この子が最強になり、神格すら打破できるまでにはな。それに、海外の術師の目もある、あまり広く知られて引き抜かれでもしたら、損失どころではない)
(この子は秘匿し、名家にも知られないようにしなくては……そのために早めに戸籍を偽装。そして、朝霧黎明と言う少年は死んだことにしておくか)
白妙詩は国家公認の陰陽師。国家にて公認となるとさまざまな権限が与えられる。人間が怪異によって殺された場合の戸籍の登録や、変更、抹消もできる。
これは術を使う際に、人間が必要になる場合もあるからである。しかし、陰陽師となるからには常に死と隣り合わせの仕事であるため、そんな権限があってもなるものは居ない。
黎明を知られないようにするため、白妙詩は彼の戸籍を偽造することを考えついた。
朝霧家と呼ばれる名家は、常に人柱を量産する一家。そのため、その場所に置いておけば、人柱として使われてしまう可能性もあった。また、この逸材は逸材だからこそ、秘匿をした方が良いと彼女は思ったのだ。
(それにしてもこの子は強いが常識がなさすぎる。良くも悪くも素直な感じがするからな。騙されないように、私が色々と教えてあげなくては……ただ、この子の個性は消したくないところだ)
(いい塩梅を見つけなくてはな……)
(まぁ、それは後で考えるとして。すぐに戸籍の偽装は取り掛かるとするか。明日にでも……だが、その前に)
「今日は一緒に寝るぞ」
「えー、いいけど」
(明日動くにはよく寝ないといけないからな……。黎明が居れば安心して眠れる……)
見上げた夜空には、優しく月が輝いているように見えた。
自然豊かで、人口も三万ほど、つまりは田舎町である。
夜は誰も外に出ない。街灯がつく程度で、なぜか人が町からは消えてしまう。誰もが家の中でずっと朝を待つだけの不思議な場所だ。
夜は静か。なんの音も聞こえないほどの静けさが特徴なのだが……どこか不気味な気配が充満する。
「うーん、やっぱり夜の方がテンション上がるなー」
「そんな人間はお前だけだ……」
黎明と白妙詩は夜道を手を繋ぎながら歩く。夜の静けさを壊すように、黎明は呑気だった。
詩は夜に出る怪異にびくびくしているが、黎明は怪異に早く会いたくてわくわくしているのだった。
「モンスター、早く出ないかな。山だったらすぐに出たんだけど」
「あの山は封印場所の内側。外からも呼び寄せられるように出来ているからな。遭遇率が違う。しかも、封印範囲も山一つ程度だからな。あっちの方がよくモンスターは出る」
「えぇ、それなら俺山に帰りたい。レベリングがっつりやりたいタイプなんだけど」
「おい、待て。帰ろうとするな。あの山にはやばい怪異、ではなくモンスターがいる。十六歳からの人間を食べるんだ。今の坊やでは流石に食べられる可能性がある、だからこそ、別の場所で修行して帰ると言う話だったろう」
「あ、そうだった。忘れてた」
黎明はでは、ここで怪異を倒していくしかないと納得をした。二人は歩きながら、町を見回る。すると田んぼが大量にあるあたりで奇妙な現象が起こった。
「なぁ、詩」
「どうした」
「あの田んぼでくねくねしてる、白い塊ってモンスターかな?」
「──!!!!? 馬鹿者!!! 見るな!!!!!!」
そう言って、黎明を抱き寄せて顔を胸に埋めた。お、こんな柔らかい感触は初めてだなと、黎明は思った。
「それはくねくねだ!!」
「……胸が」
「見ると精神に異常をきたす怪異、元々はネットの怪談から生まれた怪異だ!! 作り話の怪談だったが人間が恐怖することによって、概念として生まれてしまったんだ!! 見れば発狂、そのまま自死に至る!!! 微かに見ただけなら、助かった人間もいる!! 見るな!!」
「胸……」
顔にぎゅうぎゅうと胸があたり、流石に黎明も困った様子だった。しかし、そろそろ、このまま居るわけには行かないと思ったのか。黎明は彼女から一旦離れた。
「そんな慌てないで大丈夫。こっちは職業勇者だし。さっさとあのモンスター倒しておくか。【フレアボム】」
黎明の手のひらに集中した火球が、田んぼに向かって飛んでいく。くねくねと動いていた、怪異に命中し、火柱が空に上がった。
「ぎゃうあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
大きな絶叫のような声が聞こえた。黎明は満足気な表情をしながら、肩を回す。そのまま、自らの強くなった実感を得ていた。
「おっし、戦闘終了」
「……マジか。本当に、祓えるのか……」
黎明にとってはいつものことである。今まで怪異を倒してきた人生であるので、これくらいで何を驚くのかというレベルであった。
しかし、白妙詩にとっては違う。彼女は怪異を祓える存在など見たことがない。怪異とは人間が祓えない存在、台風や地震といった自然現象のようなものであると認識していた。
「……凄まじい術だ。五行術の炎宝か?」
「フレアボムね」
「あ、あぁ……そうか……随分と射程も長かった気がしたが、どれくらいまで飛ばせるんだ?」
「え? あー、あんまりやったことないしな。遠距離攻撃って嫌いなんだよね。経験値が薄いって言うかさ。だから、あんまりしたことはないけど……まぁ、もうちょっと飛ばせる気がする。あ、あそこにモンスターいるじゃん? やってみるか」
黎明と詩の位置から、およそ三百メートル離れた道の曲がり角付近。田んぼから住宅街に変わっている付近に、大きな蜂のような化け物が立っていた。
──何やら興奮をしているようで、羽の低空音があたりに響いている。
「フレアボム」
その蜂の怪異に向けて、黎明は再度、陰陽術炎宝を放射した。
(やはり、言霊を省き、正装すら関係ないか……とんだ規格外だ……)
詩は声には出さないが、驚愕するしかなかった。実は彼女は強気な物言いをするが実際は、寂しがり屋のびびりである。
だからこそ、その炎の鮮やかさには目を奪われていた。
(ここまでの術は初めてだ。そもそも五行術など、私は使えん。使えるだけでもすごいが、それでいて怪異を祓えるほどとはな。火之迦具土神の補助なしでここまでの出力を出せるなど、安倍晴明でも不可能だろうに)
陰陽術にはいくつかの分類がある。その中でも【五行術】と言われるのは、火、水、土、木、金の系統の術であり、それぞれの神から補助を受けなければ成立しない。
火の場合は火之迦具土神と言う神から、多大なる援助を受け、ようやく成立するのだ。朝霧玄蔵の場合は狩衣姿、言霊、そして呪符によるさらなる補助を使い、初めて成立させている。
しかし、それでも怪異を祓えるほどの出力などさせたことがない。
全てを省き、単独で怪異を吹き飛ばす──それはもはや“偉業”という言葉すら足りなかった。
「お、当たった」
「そのようだな……本当にすごいな」
「勇者だからね」
「……そうか、勇者か。分かった。本当にすごかった、もう坊やとは呼べないな。黎明と呼ぼう」
「お、それいいね。坊やはちょっと子供っぽいなと思ってたんだ」
黎明は命中した蜂の怪異が燃えるのを、見ていた。数秒経つと、燃え切った蜂の怪異は最初から居なかったように、霧散した。
「倒せたか。さて、次のモンスターを狩ろう」
次なる怪異を探そうとする黎明。だが、そのタイミングで詩はある提案をする。
「そろそろ帰るか」
「えぇ? まだ出たばっかりじゃん。もうちょっと倒したい。いつもは三十がノルマなの」
「……マジか、ただ、ちょっと私が疲れてきた。黎明に驚かされっぱなしだ」
「そう? じゃあ、一人で帰ってて。俺もうちょっと回るから。さっき廃墟とか、廃病院もあったし、あの辺いそうだから」
「いや、ダメだ、今日は帰るぞ。この短時間で二体も怪異と遭遇した、これは異常だ。普通はこんなに姿を目にすることはない」
「え、でも山だともっと居たけど」
「封印の内側だからだ。とにかく、これは異常事態だ」
「それは嬉しいな。もっとモンスターと会いたい」
黎明は怪異がたくさんいることを知り、ワクワクしているが、反対に詩は頭を悩ませていた。
「とにかく、今日は帰るぞ」
「ええー、それならやっぱり先帰っててよ、もうちょっと見たいし」
「……いや、その……」
一人で帰るのは怖いから、一緒にいてくれと詩は言いたかった。なんだかんだで、白妙詩と言う女は孤独であった。
それでいて、本当は夜が何よりも怖く、怪異が恐ろしくてたまらない。だが、ある理由から、その恐怖を押し殺して今の職業を続けているのだった。
しかし、そんな彼女の元にそれらを全て吹き飛ばす太陽のような少年が現れたのだ。
気づけば、なんとなくで繋いでいた手は、もう離さないと言わんばかりに握られていた。
「うーん、まぁ、良いけど、疲れてるのは本当みたいだし。今日は帰ろうか。ただ、明日はモンスターもっと探すからね」
「あ、あぁ、気を遣わせたな」
「それじゃ、帰ろー」
「あぁ……それと私は少し明日から留守にする、急に用事ができた」
「あ、そう」
「明日は存分に回ると良い。ここまで活発だと、訳ありかもしれん。何か分かったら教えてくれ」
(朝霧黎明、これは間違いなく、逸材だ。いや、そんな言葉では生ぬるいほどの可能性の塊。この原石をなんとしても曇らせないようにしなくては)
(朝霧家は人柱を量産する一族。そんな家には勿体ない。黎明のことは秘匿し、裏で育てる。人間の中には怪異に従う愚者もいる。こんな逸材がいると知られれば暗殺される可能性もある。まぁ、黎明を暗殺できる人間ってなんだよとは思うが……)
(あまり、知られない方がよい。この子が最強になり、神格すら打破できるまでにはな。それに、海外の術師の目もある、あまり広く知られて引き抜かれでもしたら、損失どころではない)
(この子は秘匿し、名家にも知られないようにしなくては……そのために早めに戸籍を偽装。そして、朝霧黎明と言う少年は死んだことにしておくか)
白妙詩は国家公認の陰陽師。国家にて公認となるとさまざまな権限が与えられる。人間が怪異によって殺された場合の戸籍の登録や、変更、抹消もできる。
これは術を使う際に、人間が必要になる場合もあるからである。しかし、陰陽師となるからには常に死と隣り合わせの仕事であるため、そんな権限があってもなるものは居ない。
黎明を知られないようにするため、白妙詩は彼の戸籍を偽造することを考えついた。
朝霧家と呼ばれる名家は、常に人柱を量産する一家。そのため、その場所に置いておけば、人柱として使われてしまう可能性もあった。また、この逸材は逸材だからこそ、秘匿をした方が良いと彼女は思ったのだ。
(それにしてもこの子は強いが常識がなさすぎる。良くも悪くも素直な感じがするからな。騙されないように、私が色々と教えてあげなくては……ただ、この子の個性は消したくないところだ)
(いい塩梅を見つけなくてはな……)
(まぁ、それは後で考えるとして。すぐに戸籍の偽装は取り掛かるとするか。明日にでも……だが、その前に)
「今日は一緒に寝るぞ」
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見上げた夜空には、優しく月が輝いているように見えた。
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