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第二章 希望を求めて
第六十三話 決着
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顔面に飛んできた父の拳を手で受け流す。
だがその拳に力は込められていない。
フェイントだ。
そのまま父は私の長い髪を掴み、引っ張る。
「くっ……」
「彩音!長い髪は弱点になるぞ!習わなかったのか!!」
父はそのまま髪を引っ張り私を投げ飛ばそうとする。
だがそれよりも早く、父の掴んでいる部分の毛が自壊して消滅する。
「なにっ!?」
「ここだぁ!」
掴んでいた髪が消滅した事でできた一瞬の虚。
私はそこを突き。
全力の拳を叩き込む。
「ぐぁああ」
確かに長い髪は格闘戦においては弱点になり易い。
ルール無用の戦いでは、ほぼ間違いなく相手も掴みにかかって来る。
だからこそ残しておいた。
確かに元の世界に居た頃なら只の弱点でしかない。
だがここは異世界ルグラント。
剣や魔法もあれば――
この世界には闘気もある!
髪は掴まれた瞬間気で自ら自壊させたのだ。
この世界に来た時から考えていた戦法。
まさか父相手に使う事になるとは夢にも思わなかったが。
「決める!」
体をくの字に折って吹き飛ぶ父に全力で突っ込み、容赦なく追撃を叩き込む。
父と私の力量はほぼ互角。
時間制限がある分私の方が不利だ。
だから遠慮はしない。
父もそんな事は望んではいないはずだ。
「回復魔法も使わせない!」
父の元の職はヒーラー。
回復魔法を使われると長期戦になって厄介になる。
だから私は手や足に魔力を纏わせ、それを打撃に乗せて打ち込む事で父の魔法の妨害を行う。
魔力の消費は激しいが。
どうせもう大して魔力の使い道がない以上、残しておいても意味はない。
此処ですべて吐き出させてもらう。
「彩ね!躱せぇ!!!!」
私の一撃をもろに受けた父が、吹き飛びながら雄叫びを上げる。
途端、その内側から途轍もないエネルギーが膨れ上がるのが感じられた。
背筋にぞくっと寒気が走る。
これは――
「自爆!?」
私は咄嗟に圧倒的力の力をフルに発揮して自信を完全に包み込み、亀の様に丸まり相手の自爆に備える。
次の瞬間父の体は膨れ上がり、閃光と共に破裂する。
凄まじい衝撃が全身を貫く。
皮膚が焦げ。
閉じた瞼の奥が閃光で赤く染まる。
衝撃に全てを持って行かれそうだ。
だがこれで――
父は道連れにしようと自爆したのだろうが、例え死ぬ程の痛手を受けたとしても、最悪私は霊竜に全てのダメージを肩代わりしてもらう事が出来る。
その為私は死ぬ事はない。
――私の勝ちだ。
衝撃が過ぎ去った。
倒れていた私は痛む上半身を起こし、辺りを見回す。
そこには衝撃も閃光も、もう何もない。
只大きく抉れたクレーターの様なだけが残り、辺りには静寂のみが漂っていた。
「終わった……か」
私はゆっくりと体を起こして立ち上がる。
正直ボロボロで立っているのが精いっぱいの状態だ。
早くティーエ辺りと合流して回復をかけて貰わなければ……
いや、魔力はそこそこ残っている。
父から得た力…で……
そこで私は気づく。
レベルが上がっていない事に。
そして父からヒーラーの力を継承できていない事に。
まさか――
≪上です!まだ終わっていません!≫
霊竜の声に従い、視線を空へと上げる。
空は既に白み始めている。
その中に浮かぶ明けの明星。
そこに重なるかの様に、父はそこに居た。
いや、父だった物という方が正しい。
その姿は最早只の小さな肉塊。
それが不気味に蠢いていた。
恐らくコアとなる部分だけは崩壊しない様、結界で守ったのだろう。
だが、最早あの状態では戦えまい。
そう考えた瞬間、魔法陣がそれを包み込む。
「回復魔法か!?」
見る見るうちに肉痕が大きくなっていく。
このままでは完全回復もあり得る。
そうなればこちらに勝ち目はない。
「はあぁぁぁぁぁ」
だから私は全ての力を振り絞り、最後の一滴まで右拳に集約させる。
相手の回復が勝るか。
此方の破壊が勝るか。
この一撃に全てをかける!
「 全てを貫く一撃!」
私の全てを乗せて拳を撃ち放つ。
手から放たれた破壊の光が父の全てを包み込み――
そして結果を見届ける事なく、私は意識を失った。
「よくやった。流石俺の娘だ」
消え去る意識の中、父がそう言ってくれた気がする。
だがその拳に力は込められていない。
フェイントだ。
そのまま父は私の長い髪を掴み、引っ張る。
「くっ……」
「彩音!長い髪は弱点になるぞ!習わなかったのか!!」
父はそのまま髪を引っ張り私を投げ飛ばそうとする。
だがそれよりも早く、父の掴んでいる部分の毛が自壊して消滅する。
「なにっ!?」
「ここだぁ!」
掴んでいた髪が消滅した事でできた一瞬の虚。
私はそこを突き。
全力の拳を叩き込む。
「ぐぁああ」
確かに長い髪は格闘戦においては弱点になり易い。
ルール無用の戦いでは、ほぼ間違いなく相手も掴みにかかって来る。
だからこそ残しておいた。
確かに元の世界に居た頃なら只の弱点でしかない。
だがここは異世界ルグラント。
剣や魔法もあれば――
この世界には闘気もある!
髪は掴まれた瞬間気で自ら自壊させたのだ。
この世界に来た時から考えていた戦法。
まさか父相手に使う事になるとは夢にも思わなかったが。
「決める!」
体をくの字に折って吹き飛ぶ父に全力で突っ込み、容赦なく追撃を叩き込む。
父と私の力量はほぼ互角。
時間制限がある分私の方が不利だ。
だから遠慮はしない。
父もそんな事は望んではいないはずだ。
「回復魔法も使わせない!」
父の元の職はヒーラー。
回復魔法を使われると長期戦になって厄介になる。
だから私は手や足に魔力を纏わせ、それを打撃に乗せて打ち込む事で父の魔法の妨害を行う。
魔力の消費は激しいが。
どうせもう大して魔力の使い道がない以上、残しておいても意味はない。
此処ですべて吐き出させてもらう。
「彩ね!躱せぇ!!!!」
私の一撃をもろに受けた父が、吹き飛びながら雄叫びを上げる。
途端、その内側から途轍もないエネルギーが膨れ上がるのが感じられた。
背筋にぞくっと寒気が走る。
これは――
「自爆!?」
私は咄嗟に圧倒的力の力をフルに発揮して自信を完全に包み込み、亀の様に丸まり相手の自爆に備える。
次の瞬間父の体は膨れ上がり、閃光と共に破裂する。
凄まじい衝撃が全身を貫く。
皮膚が焦げ。
閉じた瞼の奥が閃光で赤く染まる。
衝撃に全てを持って行かれそうだ。
だがこれで――
父は道連れにしようと自爆したのだろうが、例え死ぬ程の痛手を受けたとしても、最悪私は霊竜に全てのダメージを肩代わりしてもらう事が出来る。
その為私は死ぬ事はない。
――私の勝ちだ。
衝撃が過ぎ去った。
倒れていた私は痛む上半身を起こし、辺りを見回す。
そこには衝撃も閃光も、もう何もない。
只大きく抉れたクレーターの様なだけが残り、辺りには静寂のみが漂っていた。
「終わった……か」
私はゆっくりと体を起こして立ち上がる。
正直ボロボロで立っているのが精いっぱいの状態だ。
早くティーエ辺りと合流して回復をかけて貰わなければ……
いや、魔力はそこそこ残っている。
父から得た力…で……
そこで私は気づく。
レベルが上がっていない事に。
そして父からヒーラーの力を継承できていない事に。
まさか――
≪上です!まだ終わっていません!≫
霊竜の声に従い、視線を空へと上げる。
空は既に白み始めている。
その中に浮かぶ明けの明星。
そこに重なるかの様に、父はそこに居た。
いや、父だった物という方が正しい。
その姿は最早只の小さな肉塊。
それが不気味に蠢いていた。
恐らくコアとなる部分だけは崩壊しない様、結界で守ったのだろう。
だが、最早あの状態では戦えまい。
そう考えた瞬間、魔法陣がそれを包み込む。
「回復魔法か!?」
見る見るうちに肉痕が大きくなっていく。
このままでは完全回復もあり得る。
そうなればこちらに勝ち目はない。
「はあぁぁぁぁぁ」
だから私は全ての力を振り絞り、最後の一滴まで右拳に集約させる。
相手の回復が勝るか。
此方の破壊が勝るか。
この一撃に全てをかける!
「 全てを貫く一撃!」
私の全てを乗せて拳を撃ち放つ。
手から放たれた破壊の光が父の全てを包み込み――
そして結果を見届ける事なく、私は意識を失った。
「よくやった。流石俺の娘だ」
消え去る意識の中、父がそう言ってくれた気がする。
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