内弟子物語 ー捨てきれない夢、武術の究極「活殺自在」を求める5名の青春群像ー

藤堂慎人

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内弟子物語 第Ⅱ話 稽古20

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 その中には、きちんとした正拳の効果を実感するシーンもあった。
 高山と一番入門の時期が近い堀田の突きと、藤堂の突きを受け比べるのだ。その役を高山が行い、自らの身体で拳の質の違いが実際の突きにどのように影響するかを確認してもらう、という体験だ。
 もちろん、両者とも本気で突くわけではない。ある程度セーブして突くわけだが、それくらいでも明確な違いを感じるだろうからとということで行なう。
 まず、堀田が高山の腹部を突く。
 高山にしても、腹筋はそれなりに鍛えているつもりなので、耐えることができた。ただ、堀田も藤堂の内弟子だ。大学の時の部員の突きとは比べ物にならない。フルパワーでなくても、昔経験した突きよりも重い。これが本気だったと思ったら、ぞっとした。
 続いて藤堂が突くことになった。
 突くスピードは目で見ていても堀田より遅い。
 だが、当たった時の衝撃が違う。腹に食い込んでくるような感じなのだ。
 思わず上体が「く」の字になり、身体も2~3歩下がってしまった。高山はその状態でしばらくお腹を押さえていた。 
「正拳一つ作ることが、こんなに難しかったのか」
 改めて空手の奥深さを知った高山だった。細かく指導を受けたことで、この日の早朝稽古は正拳の作り方で終了した。
 稽古後、高山は他の内弟子に尋ねた。
「みなさんは正しい正拳をきちんと握れるんですよね」
「いや、そんなことはないよ。正拳一つ握るのでも上手くいかなくてね。だから先生は前に説明したことも、ある程度行ったらまた戻って教えてくれる。その度に自分の不出来なところが分かるよね」
 御岳の返事に龍田が口をはさんだ。
「そう言えば御岳さん、今日も正拳の握りの甘さを言われていましたよね」
「お前に言われなくても分かっているよ。なかなか先生のような正拳は握れないよな」
「それ、正拳だけじゃないでしょう」
 堀田や松池も同じようなことを言った。
「だから内弟子としてしっかり稽古しているんだろう」
 照れくさそうな感じで後輩たちに言った。その上で高山に視線を向け、改めて先輩として話した。
「高山君もだんだん分かってくると思うけれど、やればやるほど奥の深さを感じるし、同時に自分の未熟さも感じるよ。それにここでは空手だけじゃなく活の意識で整体もやらなくてはいけないので、大変だよ。これからも一緒に頑張ろうな」
 高山はまだ内弟子に入ったばかりだ。先輩の言葉は大変ありがたく心に響いた。
「そうか、何年も内弟子でやっている人たちも同じように感じているんだ。だったらこれからもっと頑張って、一つでも多くいろんなことを吸収していこう」
 高山は本格的な内弟子修業のスタートを切ったと感じた。
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