平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

24.試着

　学園祭まで残り一週間となったある日、ついにメイド衣装が届いた。

「凛音、衣装が来たぞ！」

　クラスメイトの一人が、大きな箱を抱えて教室に入ってきた。

「わあ、ついに……」

　教室中が興奮に包まれる中、ぼくは少し緊張していた。

「開けてみよう」

　箱を開けると、中から美しいメイド服が現れた。黒を基調とした上品なデザインに、白いエプロンとフリル。胸元にはリボンがついていて、スカート部分はふんわりと広がる形になっている。

「すげー、本格的だ」

「絶対に似合う」

「早く着てみてよ」

　クラスメイトたちの熱い視線を感じて、頬が熱くなった。

「でも、ここで着替えるのは……」

「じゃあ、更衣室で着替えて、また戻ってきて」

「そうしよう。写真も撮らせて」

「写真は禁止だって言ったでしょ」

「えー」

　結局、更衣室で着替えることになった。真白くんと夏目くんが付き添ってくれる。

「緊張する……」

「大丈夫だよ。本当に似合うから」

　真白くんが励ましてくれる。

　更衣室で制服を脱いで、メイド服に袖を通す。思ったより着やすくて、サイズもぴったりだった。

「どう？」

　真白くんに振り返ると、彼の顔が真っ赤になった。

「す、すごく……可愛い」

　夏目くんの方を見ると、彼は固まったように動かなくなっていた。

「夏目くん？」

「……」

「大丈夫？」

「あ、ああ……」

　夏目くんが顔を逸らした。でも、耳が真っ赤になっているのが見えた。

　鏡で自分の姿を確認すると、確かに普段とは全然違う印象だった。メイド服を着ると、より一層女の子っぽく見える。

「本当に大丈夫かな……」

「大丈夫だよ。というか、これはやばいレベルで可愛い」

　真白くんが興奮気味に言う。

「みんなが見たら、絶対に大騒ぎになる」

　それが心配だった。

　教室に戻ると、クラス全体が静まり返った。そして、次の瞬間——

「うおおおおお！」

「可愛すぎる！」

「天使だ！」

「これは反則だろ！」

　教室が大混乱になった。

「みんな、落ち着いて……」

　でも、もう誰も聞いていない。

「学園祭当日、絶対に大成功だ」

「他のクラスの連中が見たら嫉妬する」

「というか、上級生たちも絶対に見に来る」

　そんな騒ぎの中、教室の扉が開いた。

「何事だ、この騒ぎは……」

　入ってきたのは、朝比奈先生だった。そして、ぼくのメイド姿を見た瞬間、先生も固まった。

「あ、朝比奈先生……」

「り、凛音くん……？」

　先生の顔が、見る見る赤くなっていく。

「そ、その格好は……」

「学園祭のメイド衣装です」

「そうですか……とても、その……」

　朝比奈先生が言葉に詰まっている。

「似合ってますか？」

「に、似合いすぎて困ります……」

　先生の正直な感想に、教室がどよめいた。

「先生も認める可愛さだ」

「これは本当にやばい」

　朝比奈先生は慌てて教室を出て行った。廊下から、「落ち着け、朝比奈千景……」という先生の声が聞こえてきた。