姫様は平民騎士のお嫁さんになりたい

柴田

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ep.15

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「グレイス皇女でーんかー! 朗報ですよ! アーサーさんがドラゴン討伐に成功したそうです!」

 そう言ってグレイスにヘラヘラと笑いかけたのは、アーサーがいない間代わりを務める護衛騎士、ナズナだ。
 アーサーと仲がいいらしく、彼直々の推薦だった。これまでもアーサーが皇帝から言いつけられた用事で不在にするときは、ナズナが護衛をした。少々軟派な部分はあるが、アーサーのお墨付きだからとグレイスは一応信頼して護衛を任せている。

 明るい茶髪をぴょこぴょこと跳ねさせスキップせんばかりのナズナの報告に、グレイスは言葉を失い、じわじわと目に涙を浮かばせていった。しまいには顔を覆って泣き出してしまったグレイスの背中をさすり、ナズナはハンカチを差し出す。

 実に一ヶ月の間、アーサーとドラゴンの死闘が繰り広げられた。
 その間ずっと生きた心地のしなかったグレイスは、討伐成功の報告を聞いてやっと息ができたような気分だった。

「帰還にはあと3日ほどかかると思います。それまでにちゃんと寝て、食べて、元気いっぱいにならないと。僕がアーサーさんに怒られちゃいますから」
「うん……うん、そうね」
「そうだ、帰還パレードをやるらしいですよ! そのあとはきっと盛大なパーティーですね! ドレスの準備とかあるんじゃないですか? ほらほら、忙しくなりますよ」
「ええ。……涙がひっこんでからやるわ……」

 その後すぐにドラゴンの討伐成功の話が広がり、城中がお祝いムードに包まれた。皇帝の指示によりパーティーの準備が進められ、久しぶりに活気を取り戻した城には商人たちがたくさん出入りしている。徐々に賑やかさを増していく様子に、グレイスの気持ちもだんだん上向いていった。

(もうすぐアーサーが帰ってくるわ!)

 弾む足取りで廊下を進む。ドレスは準備できたけれど、気に入る宝石がなかなか見つからず、城を出入りする商人から買い付けようと思っていた。
 グレイス以外の皇族たちも久しぶりのパーティーの準備に忙しくしている。スカーレットの部屋の前を通りかかると、それはもうたくさんの商人が列をなしていた。きっと今回もまた、まるでスカーレットが主役かのように美しく着飾るのだろう。

 しかし今はそんなことはどうでも良かった。グレイスは早くアーサーに会いたいという気持ちでいっぱいだったからだ。
 そんななかふと聞こえた商人たちの言葉に、無視などとてもではないができずグレイスは足を止める。

「ドラゴン討伐の褒美に、皇帝陛下がソードマスター様になんでも願いを叶えてやると仰せだとか」
「ほう……もしや、皇女殿下を嫁がせる可能性もあるということですな」
「それなら相応しいのはやはりスカーレット皇女殿下では? ソードマスター様には、皇后陛下の娘であるスカーレット皇女殿下ほどのお方でないとつり合いませんぞ」
「皇后陛下の出身である公爵家はまだ男児が生まれていないらしいな? もしかしたら、スカーレット皇女殿下と結婚して公爵家を継ぐのではとも言われているとか」
「ホホ、ですからこれほどパーティーへ向けての準備が入念なのではありませんかな?」
「ですがソードマスター様は第8皇女殿下の専属護衛騎士らしいですよ」
「ああ、あの皇女様か……。美しいが……後ろ盾がちと弱いなぁ」
「ははは! 第8皇女殿下では褒美にはなりますまい!」

 商人たちの話を耳にしたグレイスは思わず踵を返した。

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