叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐

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友達として1

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 祖母にお土産の袋を渡したら、歓声を上げられた。

 「え?おばあちゃん、どうしたの?」

 「由花、これどうしたの?誰かにもらったの?」

 「だから、今日そこへお夕飯食べに行ったのよ」

 「えー!誰と?もしかして、玖生さんと行ったの?そうでしょ。この店に普通の人が行くはずないわ」

 「やっぱりそういう店なのね。すごく美味しかった。今までで一番美味しい和食というか懐石料理だった」

 「ふふふ。良かったわね。おごりだったんでしょ、もちろん」

 「うん。就職祝いとか言われた。訳わかんない。雇った人がお祝いって何それ?て感じ。歓迎会っていうならわかるけど」

 「まあ、いいじゃない。そう、お土産もくれたのね。ここの美味しいのよ。おばあちゃんも最後に行ったのは二十年以上前かもしれない」

 「そんな前からある店なの?」

 「そうよ。創業昭和のはじめくらいじゃないの?」

 「へえ。おばあちゃんを連れて行ってあげたいなって思ったんだよ。お金が高そうだから、もう少し待ってね」

 「それは楽しみだわ。歩けなくなる前に連れて行ってちょうだいね」

 「もう。変なこと言わないで。分かった。近いうちに行こうね」

 「それで、玖生さんとはどうなの?」

 「……友達になった」

 おばあちゃんはお腹を抱えて笑ってる。

 「はー。面白い。そうなの?少しは話が出来るくらいにはちゃんとしてきたのね、彼……」

 「そうなのよね。話は出来るけど、なんというか、人の気持ちをよむのはいいんだけど、言葉がストレートすぎる」

 おばあちゃんはまた笑い出した。

 「……ふふふ。とにかく、由花が教えてあげなさいよ。女の人が相手でも、人に話すときは目を見てきちんと話しましょうってね」

 「おばあちゃんったら……」

 「そう。友達になったのね。大奥様にも言っておかないと。このあんみつのお礼と一緒にね。きっと喜ぶわ」

 おばあちゃんったら、すっかり人ごと。面白おかしく話してるけど、結構私は大変なのよ。心配かけたくないから言わないけどね。
 
 「明日の花材、来てる?」

 「ああ、そっちに入っているから確認しておきなさい。明日は花を生けたら帰ってくるのよね。昼過ぎから家でお稽古入っているけど任せて大丈夫?」

 「うん。任せてもらっていいから、おばあちゃんは明日ゆっくり休んでね」

 「ありがとう。そうさせてもらいますよ」

 そう言って、あんみつを嬉しそうに冷蔵庫に入れて、寝室へ下がっていった。

 私は花材を確認した後、玖生さんにメールしてお礼を言った。祖母がお土産をとても喜んでいたことを話した。
 すると、急に電話がなりだした。びっくりして見ると、彼からだ。

 「はい、どうしたんですか?」

 「ああ。お疲れ」

 「ふふふ。会社じゃないんだから、お疲れじゃないでしょ」

 「……まあ、いい。次の約束をしたい」

 何なの、その言い方。本当に行間がないのよねえ。どうやったら出来るようになるかしら?

 「次の約束って何の約束ですか?」
 
 「男友達なら飲みだな。女友達って何がしたいんだ?」

 私はおかしくて笑い出してしまった。

 「何でしょうね?というか、お互いが好きなことをするんじゃないかしら。友達なんだから、共通点があるとか、趣味が一緒とか、まあ相手に合わせてもいいし」

 「由花が好きなことはなんだ?花か?」

 「花は好きですけど、仕事だし、休みは別のことをしたいかな」

 「何したいんだ?」

 「そうですねえ。お買い物とか、映画も行きますよ。玖生さんこそお休み何してるんですか?」

 「……俺は本を読んでるか、映画を家で見てる」

 あまりに想像通りで驚く。

 「外には行かないの?」

 「そうだな。仕事でイベントにも行ったりまあ、休日も色々あるから、完全オフは家にいることが多い」

 「お忙しいんですね。そうですよね、すべてのグループの取りまとめされてるんですものね。お父様もいるからまだそんな忙しくないのかと思っていました」

 「父はほとんど仕事をしていない」

 「え?お身体の具合でも悪いんですか?」

 「そうじゃない。ボランティア中心で、実質俺が跡取りに近いことをしているんだ」

 「え!?それって皆さんご存じのことですか?」

 「まあ、そうだな。口に出さずとも皆知ってるだろうな、関係者は特に」

 「まさか、本当にそうなる可能性があるってことなの?」

 「そうだな。おじいさまからはそうしたいと言われてる。父に継ぐ気持ちがない可能性もある」

 どうして、そんな他人行儀なの?聞きたいけど、聞けない。

 「大変な立場なんですね。私と出かけてる場合ではありません」

 「なぜ、祖母が君に会わせたと思っているんだ?もし祖父の跡を俺が継ぐとなった場合、困ったことに妻を娶る必要があるらしい」

 「それが条件なんですか?」

 「条件というか、まあ実質、仕事上でもパートナーが必要なんだ。妻の仕事というものが結構あるんだ。うちは母が他界しているので、祖母がやっている」

 そうか……わかった。だから、大奥様が私を紹介してきたのか。要はどうしても嫁が必要なんだわ。それなら余計まずいかも。早めにそういう関係にはなりませんって言わないと勘違いさせてしまう。

 「……」

 「おい、由花?聞いてるのか?」

 「あ、聞いてます。ごめんなさい。眠くなってきちゃった。明日起きられないと困るから、寝ます。切りますね。また、メールします。今日はごちそうさまでした。ありがとうございました」

 「なんだ、子供みたいに。もう寝るのか?まだ十時だぞ」

 「ええ。私、子供なんです。では、おやすみなさい」

 そう言って、切った。玖生さんはいい人だし、嫌いじゃないけど、結婚相手としては私では役不足。身分違い。私は学んだから今度は間違わない。

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