151 / 151
<第一王子>ルート
4<騎士A>視点
しおりを挟む
「踏み込みが浅い。そんなんじゃ、殺せないぞ」
「……」
口の端を上げて、肩をすくめるのが見える。舌打ちをして距離をとった。
―― そうだな、首を薙ぐには踏み込みが甘かった
音をさせぬように意識して、息を吸って吐き出す。挑発に冷静さを失った。殺してどうする。まだ情報を、探る必要があるだろうが。
「他には、誰が知ってる。何処まで、知っている。吐け。でなければ、また当主に戻る羽目になるぞ」
「おおっ息子よ。情けない。少しは取り繕うということを、覚えたらどうだ」
死にたくなければなんて脅しは、こいつには通じない。だから遠回しに、当主の首を挿げ替えると口にする。
『無理は、するなよ』
おっさんと違う穏やかな顔をした男の顔が浮かぶ。俺の立場も知ったうえで、案じてくる男だ。他人を弟だと、言い切るやつだ。貴族としての立場は置いておいて、良いやつではあるのだろう。少なくとも俺に害を、なそうとしない。
―― それでも
考えるまでもない。
あの子を想う王子の顔が浮ぶ。いつも冷静で理知的な、そんな人が馬鹿に変わっちまうほど、大事にしているあの子の顔も浮んだ。
―― だれを選ぶなんて
選択肢なんて、最初からないんだよ。ただ一人だ。
歪な音が、部屋に響く。
足を踏み出し距離を詰め、首筋に突きつけようとした短刀は、軽く止められた。同時に周りを取り囲もうとした風の刃も、四散する。
―― クソが
俺は、強くなった。泥水すすってでも生き残ろうとしていたときよりも、拾われて鍛えられ何度も死にそうになっていたときよりも強くなったはずだ。
けどこいつは、あの時と変わらずに悠然と笑んでいる。
「だから冷静になれと、言っているだろう。引退したとは言えファンブルクの当主だったんだぞ。王家に忠義を忠誠を、ってな。牙をむくわけがない」
「あんたが王家に忠誠誓ってるなんざ、初耳だ」
「なんてことを言うんだ息子よ。俺は海より深く王家を、愛しているぞ」
左手を胸に当て右手は開き、大仰に首を振ってやがる。胡散臭いという印象しか抱かない。いや嘘だと知っているから、余計にそう思うんだろうな。
「あんたが愛してるのは、この国だろう」
「そうはっきり言うな。俺にも一応は保つべき面目というものがある」
こいつにとって王家は、国を保つための駒みたいなもんだ。王家じゃない王族でもない。おのれが愛した国が持続させるために、必要ならば切り捨てる。だから体の弱い前王を、排することを許容した。
王という頭が弱ければ、国が滅ぶ。弱いということは、付け入る隙を与えるってことだ。他国からの侵略を、許すことになる。それがすべての要因になるわけではないけれど、一因となるならばこいつは動く。こいつにとって大事な国を守るためにだ。
ファンブルクの前当主が、認めている後続はリシュワルド様だ。もしその存在に危険が及ぶとなれば、排するために動く。
―― 今のところ、不利な要素しかないだろ
冷静ない人を、理知的な人を、おかしくさせる存在。そして素性がつかめない。
俺のことが嫌いなのに、優しさを見せる子の顔が浮かぶ。王子が誰よりも、大事に思う存在だ。
―― あっーくそっ!
さっさと無理やりにでも、そこそこの貴族の養子にさせればよかった!
あの子には確実に、さらに嫌われる。意思を無視する行動だ。王子も激怒するだろう。正直、行動した結果、俺の首がつながってるか疑問だ。
それでも少なくとも、おっさんがすぐに手を出せない防波堤は作っておくべきだった。
「安心しろ。息子よ。まだ俺しかしらん」
―― やっぱり、殺そう
おっさんのことだ。もうどうとでも動ける網を、張り終えている。そんな想像と違う言葉が、耳に届く。その瞬間、どんな手段を使ってでも、目の前の存在を屠ることに決めた。
「……」
口の端を上げて、肩をすくめるのが見える。舌打ちをして距離をとった。
―― そうだな、首を薙ぐには踏み込みが甘かった
音をさせぬように意識して、息を吸って吐き出す。挑発に冷静さを失った。殺してどうする。まだ情報を、探る必要があるだろうが。
「他には、誰が知ってる。何処まで、知っている。吐け。でなければ、また当主に戻る羽目になるぞ」
「おおっ息子よ。情けない。少しは取り繕うということを、覚えたらどうだ」
死にたくなければなんて脅しは、こいつには通じない。だから遠回しに、当主の首を挿げ替えると口にする。
『無理は、するなよ』
おっさんと違う穏やかな顔をした男の顔が浮かぶ。俺の立場も知ったうえで、案じてくる男だ。他人を弟だと、言い切るやつだ。貴族としての立場は置いておいて、良いやつではあるのだろう。少なくとも俺に害を、なそうとしない。
―― それでも
考えるまでもない。
あの子を想う王子の顔が浮ぶ。いつも冷静で理知的な、そんな人が馬鹿に変わっちまうほど、大事にしているあの子の顔も浮んだ。
―― だれを選ぶなんて
選択肢なんて、最初からないんだよ。ただ一人だ。
歪な音が、部屋に響く。
足を踏み出し距離を詰め、首筋に突きつけようとした短刀は、軽く止められた。同時に周りを取り囲もうとした風の刃も、四散する。
―― クソが
俺は、強くなった。泥水すすってでも生き残ろうとしていたときよりも、拾われて鍛えられ何度も死にそうになっていたときよりも強くなったはずだ。
けどこいつは、あの時と変わらずに悠然と笑んでいる。
「だから冷静になれと、言っているだろう。引退したとは言えファンブルクの当主だったんだぞ。王家に忠義を忠誠を、ってな。牙をむくわけがない」
「あんたが王家に忠誠誓ってるなんざ、初耳だ」
「なんてことを言うんだ息子よ。俺は海より深く王家を、愛しているぞ」
左手を胸に当て右手は開き、大仰に首を振ってやがる。胡散臭いという印象しか抱かない。いや嘘だと知っているから、余計にそう思うんだろうな。
「あんたが愛してるのは、この国だろう」
「そうはっきり言うな。俺にも一応は保つべき面目というものがある」
こいつにとって王家は、国を保つための駒みたいなもんだ。王家じゃない王族でもない。おのれが愛した国が持続させるために、必要ならば切り捨てる。だから体の弱い前王を、排することを許容した。
王という頭が弱ければ、国が滅ぶ。弱いということは、付け入る隙を与えるってことだ。他国からの侵略を、許すことになる。それがすべての要因になるわけではないけれど、一因となるならばこいつは動く。こいつにとって大事な国を守るためにだ。
ファンブルクの前当主が、認めている後続はリシュワルド様だ。もしその存在に危険が及ぶとなれば、排するために動く。
―― 今のところ、不利な要素しかないだろ
冷静ない人を、理知的な人を、おかしくさせる存在。そして素性がつかめない。
俺のことが嫌いなのに、優しさを見せる子の顔が浮かぶ。王子が誰よりも、大事に思う存在だ。
―― あっーくそっ!
さっさと無理やりにでも、そこそこの貴族の養子にさせればよかった!
あの子には確実に、さらに嫌われる。意思を無視する行動だ。王子も激怒するだろう。正直、行動した結果、俺の首がつながってるか疑問だ。
それでも少なくとも、おっさんがすぐに手を出せない防波堤は作っておくべきだった。
「安心しろ。息子よ。まだ俺しかしらん」
―― やっぱり、殺そう
おっさんのことだ。もうどうとでも動ける網を、張り終えている。そんな想像と違う言葉が、耳に届く。その瞬間、どんな手段を使ってでも、目の前の存在を屠ることに決めた。
21
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(15件)
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?
北川晶
BL
BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。
乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。
子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ?
本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
わぁーい!最近更新続いて嬉しいです!✨️楽しみにしてます!
喜んでいただけて、嬉しいです。ありがとうございます。
こんにちは
とても面白く、愛読させてもらっています。
更新楽しみに待ってます😌
こんばんは
楽しんでいただけて、嬉しいです。ありがとうございます。
こんばんは!!!
最新めちゃくちゃ嬉しいです!!
めちゃくちゃ初期からこの小説追いかけていて、主人公の性格とジルベールの性格がもういい組み合わせすぎて!!!過去一好きな小説です!!
好みどストライク!!!!!
続きが気になりすぎるー!!!
こんばんは
二人のことを気に入ってきただけて、嬉しいです。ありがとうございます。