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しおりを挟む「口にあうか、わからないが」
「ありがとうございます」
扉を開けるとサイジェスが、何かの包みを渡してくる。見たことがあるものだ。確か焼き菓子を扱っている店のものだったはずだ。
仕事の話をするのだから、手土産を持ってくる必要性はない。ここはお気遣いなくと、一度遠慮するべきなのだろうが礼を言って受け取っておく。今は菓子を買う余裕がないからな。貴重な糖分だ。後でありがたく頂くとしよう。
サイジェスが来たら、ジルベールはどうするだろうかと思ったが大人しく寝室に下がっていった。
サイジェス目当てに、来たのかと思ったが違うのだろうか。
「今お茶を、いれてきます」
「すまないな」
客に茶の一つも入れないのも、失礼だと思ったんだが安物の茶葉しかない。しょうがないのでジルベールから、もらった茶葉を使うことにした。
「いい茶葉だな」
「ジルベールから、貰いました」
味を褒めてくれたサイジェスに、正直にもらいものだと話す。ここで見栄をはって もしどこで買ったのかとか聞かれてもこたえられない。その段階でもらいものだというのは、なんというか恥ずかしいものがある。
「それは俺が、飲んでも良かったのか?」
「かまいませんが」
珍しい顔を見た。サイジェスが、目を丸くして凝視してくる。
「お前がいいのなら、かまわないが……」
なんか微妙な表情だ。あれか貰いものを、それもさっき貰ったばかりものもをだすのは非常識だという事だろうか。
家には客に出すような、いい茶葉がなかったんだ。そこは勘弁してもらいたい。とりあえず次に誰かにだすときは、貰いものだと言わないことにしよう。
「あのご希望を、伺ってもいいでしょうか?」
「ああ、そうだ。どんなものがあるか見せてもらえるか?」
茶葉のことは、置いておいて本題に入る。商品を見せてほしいというサイジェスに、頷き返して用意しておいた商品の説明を始める。
続けて送り相手である妹の好みを、聞いてどんなものを作るか決めていく。
こういうときに、絵心が欲しいと思う。あれば商品のイメージを、イラストにすることができる。そうすればサイジェスも、分かりやすいだろう。
だが残念なことに、俺にはそんなものはない。頭の中で、イメージは湧くんだ。ただそれを氷の置物として、作ることはできても絵にすることができない。壊滅的といっていいほどに、絵が下手なんだ。ある意味、芸術の域に達しているんじゃないだろうか。
「こういう感じでしょうか」
「ああ、こっちのほうがいいな」
絵心の無さを、なげいてもいきなり上手くなるわけでもない。しょうがないので、簡易だが氷の置物を作ってイメージのすり合わせをしていく。
―― 笑顔の率が、高いな
妹のことを、考えているからだろう。いつもは硬い表情が標準なのに、今は始終穏やかな表情をしている。
堅物な講師主任が、妹想いの面も持ち合わせている。その時に見せる笑顔が、穏やかだったらギャップ萌えになるだろうか。行き過ぎるとただのシスコンに、なってしまうがこれは問題ない範囲だ。
俺としてはジルベールか、シーディスさんがおすすめなんだがロイはどうなんだろか。そういえば好みのタイプを、聞いていなかったな。今度さりげなく聞いてみよう。
「礼を言う。これなら喜んでくれると思う」
「喜んでもらえるように、精一杯作ります。あの微調整したいので、ある程度作ったら見ていただけますか。途中なら考えていたものと、違っても修正できますので」
「ああもちろんだ」
―― なんだろうな
なぜだが微笑みサイジェスを見ていると、懐かしいような感じを覚える。きっとこれはサイジェスに対して、感じているものじゃないと思う。懐かしいと思うほど、付き合いはないしな。
―― 考えてもしょうがないか
きっと大したことじゃない。横にそれそうになった思考を、戻して席を立つサイジェスの後に続いて見送る。
扉を閉めて、寝室に向かう。といっても、歩いて数歩だ。直ぐにつく。結局、ジルベールは、最後まで割り込んでくることはなかった。
どうやら俺の想像は、間違っていたらしい。一安心である。
「またせたな」
寝室の扉を開けると、なぜか扉の前に立っていたジルベールがいた。
怪しいこと、この上ない。なんで椅子も用意してあるというのに、立っているんだ。
「何か用が、あったのか」
「ううん、なんでもないよ。それよりサイジェス先生は、帰ったのかい?」
「ああ」
―― 怪しい
なんでもないなら、なんで立ったまま扉の真ん前にいる。もしや『俺のサイジェス先生と、いつまで二人きりでいるんだ』と、割り込んでくる十秒前だったのかもしれない。
でも好きな子は、同い年と言っていた。いやまてそれも、誤魔化すための嘘かもしれない。
どっちにしろ、萌えイベントを見るためには油断ならないな。気を引き締めていこう。
「どんなものが、いいのか決まっているのか?」
「大体はね。でもレイザードの意見も聞いて決めたいんだ」
―― お前のセンスだけで、構成したほうがいいと思うぞ
自分のセンスのなさは、よくわかっているから思わずそう返しそうになる。ただ せっかく意見を聞きたいと、言っている相手にいうのは気が引けた。
「そうかなら、ならこっちにこい。此処は狭い」
リビングだろうが、寝室だろうがジルベールの家と比べると狭いことに変わりはない。ただより寝室のほうが、狭いんだ。
「わかった。あっレイザード、この本を借りられないかな?」
「かまないが」
この本と言って、指したのは騎士Bが渡してきた本だ。最初は何かあるかと、怪しんだが何もなかったから問題ないだろう。
やっぱり水の術に関しても、かなり詳しい知識を習得済みらしい。ジルベールにアドバイスをもらったから、詳しいのは分かってはいた。けれど高度なことが、書いてあるこの本を借りたいという事は俺が予想しているより詳しいのだろう。
―― 結構、勉強熱心な奴だよな
努力しなくても、何でもできるイメージがジルベールにはある。けど地道な努力を、重ねているらしい。
「他にも借りたいのが、あれば遠慮せずに持っていけ」
「うん、ありがとう」
本をかしてやると、言っただけだ。なのにまたいつものように、嬉しそうに笑みを浮かべて微笑み返してきた。
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