BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

文字の大きさ
132 / 151
<ジルベール>シリアス ルート

8

しおりを挟む

「ここなんですが……」
「ああ、ここか」
 ―― 普通に、話をしてるだけだな
 ロイの後を追うと、廊下でサイジェスといるのが見えた。物陰に隠れて様子を伺うが、イベントが起きそうな空気は全くない。
 離れた所にいるから、はっきりとは聞こえない。だが所々で聞こえてくる単語で、さっきの講義について質問しているのが分かった。

 ―― 早合点だったか。
 頭の中で乱舞していた萌えと言う文字が、一つ一つ消えていく。それにともない上がっていたテンションも下がっていた。

 ―― いや、待て
 がっかりするには、まだ早い。確かにイベントは起きなかったが、ロイ自らサイジェスに関わりに言っている。ということは少なくとも、悪い感情は持っていないはずだ。
 ならば今はまだイベントが起きるほどの好感度に、達していないだけかもしれない。
現状はきっとイベントが起る前の好感度が、上がっている最中に違いない。イベントは起きないけれど、こういう小さな積み重ねが萌えイベントに繋がっていくんだ。きっとそのうち萌えを摂取できる日がやってくるはずだ。きっとそうだ。

 ―― がんばれ、ロイ
 俺もイベントが起きるまで、自家発電で頑張るから。この世界に来てロイと出会うまでに、かなりの年月を要したんだ。あと少しくらいなら、頑張れる。きっと素晴らしい萌えを、提供してくれることだろう。
 期待を胸にそっと心の中で声援を、送りながら背を向ける。


 ―― 急ぐか
 そんなに時間は経っていないが、腹を空かせいるかもしれない。先に食べて入れば良いけれど、ジルベールは律儀なところがあるから食べずに待っていそうだ。
 廊下を早歩きで、進む。走った方が早いけれど、誰かにぶつかったら危険だ。それと持ってきた弁当が、シェイクされたらとんでもないことになってしまう。

 ―― 良い匂いがする……
 競歩のように速度を上げていると、なんとも食欲をそそる匂いがした。ここからだと食堂が、近いからだろう。学園にある食堂は、安くて美味しい。あと売店も、お得な値段で財布に優しいんだ。
 だがいくら財布思いの値段だからって、買えば財布は軽くなる。借金がある身としては、なるべく節約したい。だから弁当を、持ってきた。

「待たせたな」
「そんなに、待っていないよ。用事は、もう済んだの?」
 中庭までたどり着いて、辺りを見渡す。直ぐに見つかったジルベールの所まで、行って声をかけた。

「ああ、済ませたきた。何も買って来てないのか?」
「レイザードが買いに行くなら、一緒にいこうかと思ってね」
 テーブルの上には、何ものっていない。てっきり食堂か売店で、買ってきているのかと思ったが予想が外れた。

「……持ってきたものがあるが、それで良ければ食べるか」
「えっ、嬉しいけど、君の分が減っちゃうんじゃ……」
 今から買いに行くと、混んでいて時間がかかる。そうすると食事にありつけるのが、だいぶ遅くなってしまう。俺を待っていたせいで、腹を空かせるのは可哀想だ。持ってきた弁当を、テーブルに置きながら尋ねると少し眉根を下げたのが見えた。

「多めに詰めてきたから、問題ない。口に合うかは、分からないが」
「レイザードが作ったのが、美味しくないわけないよ」
「……そうか」
 なぜかとても嬉しそうにしている。
 俺が作ったのは、適当に野菜を切っただけのサラダだけである。メインのおかずは、ヴァルが
持ってきてくれたものの余りを詰めたものだ。 

 ―― なんか言い辛いな
 もしかして友達と弁当を食べるのが、始めてなのかもしれない。喜んでいるところに水を差す気にもなれなくて、心の中でヴァルに謝って言うのは止めた。

 ―― そうだ、ちょうど良いな
 ヴァルにジルベールの好きな料理を、伝えないと行けない。せっかくだから感想を聞いておこう。そうすれば少なくとも、この料理に関しては好き嫌いが分かる。

 ―― 野菜が、好物なのか?
 食べ始めてから美味しそうに食べるジルベールを見て、ヴァルに申し訳なくなって本当のことを話した。特に気分を害してもいないようだし、ヴァルが作った料理も気に入っているようで問題はない。
 ただ俺が切って詰めただけの野菜まで、美味しいと食べているのが気になる。本当にただ切っただけだ。いつもよりゆっくりしていたから、時間がなくて余った隙間に野菜を切って詰めたんだ。
 確かに市場で、買った野菜は美味しい。新鮮だし余ったら凍らせているから、鮮度も落ちてない。けどそこまで喜ぶのかってほど、嬉しそうに食べているのが気になる。

 ―― もしかして、金がなくて食事ができてないのか?
 そんなわけないか。ジルベールは、金持ちだから食材が買えなくて食べられないなんて事はないだろう。

「どうかした?」
「いや……野菜好きなのか?」
 どうも凝視してしまって、いたらしい。不思議そうに、こっちを見ている。
 ちょうど良いから、聞くことにした。本人に聞けば、悩まなくて良い。

「うん、好きだよ」
「そうか」
 ただ野菜が大好きなだけったらしい。
 こんなに喜ぶほど好きなら、ヴァルに大量にサラダを作ってもらうことにしよう。きっと喜ぶ。そこまで考えて肝心のことを、聞くのを忘れたいたことを思い出す。

「ところで、前にヴァルが食事を一緒にって言っていただろう。都合が良い日を教えてほしいそうだ」
「今日でも明日でも大丈夫だよ。君の為ならいつでも予定を空けるから」
 友達の家に招かれて食事をするのが、初めてなのかもしれない。目を細めて嬉しそうにしている。
 ―― 俺もか
 そもそも俺もボッチだから、友達を招いて食事をするなんて始めてだ。ボッチ同士でお互いに、初体験というやつだな。
 喜んでもらえるように、俺も手伝うか。
 始めて友達を招いての食事を楽しみにしていることを、自覚して少し気恥ずかしい気分になった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶
BL
 BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。  乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。  子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ? 本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。

処理中です...