ライブ!? 軽い文学部のお話 第1期

渋谷かな

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切ない別れ8

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「すいません。求人要りませんか?」
 俺はぎこちないながらも求人を取るための営業に明け暮れた。会社に電話があり求人を出す場合は楽である。アポイントメントを取って伺えばいいだけなのだから。しかし、それ以外は自分の足で数を回って取ってくるというものだった。
「いらない。」
「結構です。」
「塩を巻くぞ。」
 営業というものは、100件回っても、1件取れるか取れないかというくらい厳しい世界であった。もちろん、営業のやり取りに慣れていない俺の成績が良いはずもなかった。
「ああ~、学生の頃は良かったな。これだけ断られると心が折れるわ。」
 俺はゲッソリとして1日の終わりに会社に戻る。
「おかえり。どうだった? 今日の成果は?」
「坊主です。」
「よくやった。予定通りだ。」
「はあ?」
「最初っから求人を取ってきたら、先輩全員の顔を潰すことになるだろ。」
「そ、そうですね。」
「よし、これから、おまえの歓迎会だ。しっかり全員にお酒の相手をしながら挨拶をするように。」
「はい。」
 いまいち調子が狂う。俺の教育係の堂致先輩にテンポが狂う。悪い人ではなく、親切な人なのだろうが、素直に「ありがとう」と言わせてくれない独特な個性がある。ということで、新入社員歓迎の飲み会が始まる。
「乾杯!」
「佐用、おまえ今日は求人は取れたのか?」
「すいません、社長。取れませんでした。」
「そうかそうか、やっぱり、志麻のようにはいかないな。」
「そうです! 私は初日から契約を3件も取ってきました! ということで月間目標を達成! 1か月の間、遊んで暮らしていました!」
「な、なにー!?」
 俺は自分がバカにされていたと気づいた。先輩は社会人初日に求人を3件取って来たらしい。俺も1日回って理解した。営業でお店を回ったからって、簡単に仕事が取れるものではないということを実感した。
「全て私のおかげです!」
「違うだろう。やっぱり営業は女の方が得だからな。若い営業の女と話せるのは、まだまだ働く男が多い訳だから、女の方が仕事を獲得しやすいのは当然だ。」
「社長! それはないですよ! 男女差別ですよ!」
「ワッハッハー!」
 和気あいあいとした飲み会なのだが、俺は笑えなかった。こんな人間の集まりで、よく給料がでるものだと正直、思った。大学を卒業して、大変な会社に就職してしまったと感じた。家に着いたら新しい会社でも探そうと真剣に思った。
「佐用、最後に締めの挨拶を言っとけ。」
「はい。新入社員の佐用です。よろしくお願いします。」
「拍手。」
 パチパチパチと先輩方が拍手してくれる。俺は、こんな環境で後40年間、同じ仕事を続けていくのだろうか? 社会人になり立ての俺は将来の不安ばかり考える。
 つづく。
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