滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢

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05 試練と挑戦

運命に挑む

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 高原を発つときと同じように、彼らはわたしを見送りに来てくれた。

 でもあのときとは違って、みんな笑っていた。
 

「頑張ってね、スズネ!」

 大きく手を振るレイスさん。


「……うん、頑張れ」

 フェンネルさんは頷いて、わたしに手を振ってくれた。


「怪我するなよ!」

 とアリスメードさんは相変わらず心配そうだった。でも笑顔で送り出してくれた。


「また会おうね!」

 とスードル。今度会うときは、立派な魔導士になってるのかな。
 ついでにレイスさんとの仲も進展してるといいんだけど。


「楽しい旅になるといいわね」

 シアトルさんはそう言って笑った。



 エリオットさんたちは、乗り物を持っていない。

 だから火山へは徒歩で行く。
 
 でもそれほど遠くない。
 険しいのは火山に入ってからだ。


「エリオット、任せたわよ」

「分かってるって。ちゃんと送り届けるよ」

 エリオットさんは胸をドンと叩いて、「任せなさい!」と言った。
 
「カカカ! 心配いらないの!」
「……」

 頼もしい限りだ。


 わたしはふと、この前レイスさんと話したことを思い出した。

 たしかにわたしは基本的には一人で、パーティには入っていない。
 
 だからこの旅は、キースとわたし、1人と1匹の旅だけど、それでもわたしは独りぼっちなわけじゃない。

 
 アリスメードさんにも、フェンネルさんにも、いやワンダーランドのメンバー以外にも、たくさん助けてもらったし、親切にしてもらった。

 思えば最初からそうだった。

 どうせ滅びる世界なのに、たった一年で終わる旅なのに。
 それはとてもきれいで、優しい人がたくさんいて、楽しいことがたくさんあって。

 わたしはもらうばかりで、何にも恩返しができてない。


 もしも、この世界をわたしの手で救ったりなんかできちゃったら。

 そしたらまさか、ちょっとは恩返しになったりするのかな?


「……エリオットさん」

「へ? 何?」

「わたし、頑張ります!」


 急に謎の宣言をされたエリオットさんは、キョトンとして「が、頑張れ」と言った。
 

 自分でも何を頑張るか、わたしには全然分からない。

 それでも何だか、これまで漫然と歩いてきた道の先に、ゴールみたいなものが見えたような気がした。

 そこに辿り着けるかどうかは分からないけど、なんていうか、変な高揚感みたいなものがわたしの中に巣食っている。


「ねえキース、神様は怒ると思う?」
「キー?」


 滅びる異世界に転生し、生きることを諦めること。
 運命を定めと受け入れ、静かに過ごすこと。


 それがわたしに課せられた使命なのだとしたら、わたしは完全にそれに逆らっていることになる。


 でも、もう決めちゃたし。

 これは反逆じゃなくて、挑戦だ。

 神様は、わたしたちに乗り越えられない試練なんて与えないはずだから。



 歩みは遅々としている。最近乗り物に乗ってばかりだったので、余計にそう思う。

 でもきっと、この一歩は、今までのどんな旅よりも前進している一歩だ。


 あんなに大きかった王都が、ゆっくりと地平線へと隠れていった。

 今なら、なんでもできるような気がする。



 遠くで、オオカミの遠吠えが聞こえた気がした。

 駆り立てるように、祝福するように。
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