永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第四章 – 「威光の軌跡」

威光の軌跡Ⅴ

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夏の始まりを告げる風が、山陰の村々を柔らかく撫でる頃、毛利家の支配は一層の広がりを見せていた。月山富田城を中心に、旧尼子領の各地では毛利家の家臣団による地場統治が整えられ、兵農分離と村役の制度が徐々に浸透し始めていた。

元就は、軍事力によって得た領地を単なる版図の拡大としてではなく、「統治の器」として捉え、そこに民を宿らせ、文化を育み、秩序を根づかせようとした。山陰の寒村にも読み書きの教習が始まり、寺社への支援が進められるなど、「威光」は刀を掲げずとも人々の心に広がっていく様相を見せていた。

一方、山中鹿之介は、戦場から離れた山間の小集落で、傷を癒す戦友たちと共に密かに身を潜めていた。彼の耳にも、毛利家の仁政と巧みな支配の噂は届いていた。しかし鹿之介は、武力のみをもってそれに抗すことの愚を知っていた。「再び起つとしても、今までと同じではならぬ。時の流れに耳を澄ませ、民の声に応える新しき旗を掲げるべきだ」と、仲間たちに語る彼の声は、戦場の剣のように鋭くはなかったが、確かに強く、温かかった。

やがて毛利家による領国支配は形式上の安定を迎えるが、それは同時に、旧尼子の人々にとって「失われたものの輪郭」が次第に色濃く浮かび上がる時間でもあった。敗者の記憶は葬られず、むしろ語られ始める。それは民草の間に燻る哀惜であり、かつての理想を知る者たちが抱いた静かな祈りであった。

鹿之介が旧臣たちとともに密かに再興を志す「誓いの刻」を迎え、その言葉がかつての尼子家の魂を再び呼び覚ます瞬間へとつながっていく。「失ったのは城ではなく、志だったのかもしれぬ」と呟く鹿之介の眼差しに、仲間たちは再びかつての誓いを重ねる。
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