61 / 106
第061話 グルーヴ
しおりを挟む
「ヘイ、エヴィバディ、セイ、ホーォ!!」
「「ホーォッ!!」」
「ホー!! ホー!!」
「「ホー!! ホー!!」」
「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」
「「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」」
「イェーァ!!」
「「ウワァァァアァァ!!」」
箱の中はグルーヴが蔓延している。
精霊さん達は歓喜に煌めき、一夜限りのダンスホールの開幕だ。
ちなみに、ほーという掛け声。
これ、翻訳されているのかと思えば、微妙に翻訳されてない。
この世界では、元々樵さんの間で危ないよと知らせる掛け声だったようで。
それが職人の間で気軽に交わされ、激励とか頑張れっていう意味に遷移したらしい。
本日は、このホーの合間にジョッキを空けるのが嗜みのようで。
明けたジョッキをテーブルに叩きつける音が、ビートを刻むのが心地良い。
合いの手のように、天井で瞬く精霊さん達。
ヒートアップする飲み手の感情に合わせるように、明滅を繰り返す。
「ヘイ、ヨー。本日お待ちかねのナンバー。期待の新人、ジョリーオ!!」
「「オー!!」」
「歌うは、捧げられた杯と剣に!! ヒィィィィアウィゴーォォ!!」
「「ワァァァァァ!!」」
急遽作られた壇上に、ちょっと苦笑いの少年がローブの頭を降ろしながらリュートもどきを刻み始める。
「乾杯をしよう、杯を乾そうー」
「「乾そうー!!」」
盛り上がり始めたのを見定めて、壇上から静かに退場する。
一夜限りのDJプレイだが、一体感は、ぱない。
各テーブルに設置された民芸コンロからは、温かな光が漏れ、馨しい香りを漂わせている。
マスターのなんじゃこりゃを頂いた川魚の燻製は、急遽私の奢りとして本日供給させてもらった。
だって、食べられないと暴動が起きそうな雰囲気だったのだ。
「楽しいね……」
リサさんが、カウンターに座って近くの壇上を見上げながら呟く。
「こんな楽しい世界、あったんだ……」
その言葉に、そっと頭を抱いて、呟きを捧げる。
「きっと、もっと楽しくなるよ。信じられない?」
上目で見つめるリサさんが、小さくこくりと頷き。
「信じられる……」
呟いたから、笑顔を返した。
はい。
マスター曰く、開店史上最大に酒が捌けた日だったと言わしめた夜は、歓喜のまにまに終了を迎えた。
飲み手の配偶者の方々が、戻ってこない宿六を心配して巻き込まれ楽しい夜を過ごしたり。
偶には二人で来るのも良いよねって感じで円満になって帰って行ったり。
様々なドラマを生み出して、朝日が昇る間際に終局と相成った。
私?
声の限りに盛り上げました。
精霊さんもたまには、はっちゃけないと頑張り過ぎですし。
リサさんが寝息を立てている周囲は、ちょっと大人しめの精霊さん達がムーディーに楽しみながら守っていました。
という訳で、なし崩しに提供した民芸コンロさん。
ハウマッチと行きたいところなのだけど、マスターがごそごそすると、ドンっと革袋を置く。
それ、昨日の儲け全部じゃない?
「どんな対価を払っても構わない。これは、欲しい」
欲しい頂きました。
でも、仕入れにも問題が出そうなので、ダリーヌさんと打ち合わせてから対価を貰う話でまとめました。
分割でも良いよと伝えると、呆れたような顔を向けられましたが、お店があるんだから信用大です。
日々の商いの誠実さは、大事なのだという典型ですね。
さてと。
黄色い太陽の下、ささっとダリーヌさんと話を付けますか、と。
寝不足気味のリサさんと共に、酒場を出たのでした。
「「ホーォッ!!」」
「ホー!! ホー!!」
「「ホー!! ホー!!」」
「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」
「「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」」
「イェーァ!!」
「「ウワァァァアァァ!!」」
箱の中はグルーヴが蔓延している。
精霊さん達は歓喜に煌めき、一夜限りのダンスホールの開幕だ。
ちなみに、ほーという掛け声。
これ、翻訳されているのかと思えば、微妙に翻訳されてない。
この世界では、元々樵さんの間で危ないよと知らせる掛け声だったようで。
それが職人の間で気軽に交わされ、激励とか頑張れっていう意味に遷移したらしい。
本日は、このホーの合間にジョッキを空けるのが嗜みのようで。
明けたジョッキをテーブルに叩きつける音が、ビートを刻むのが心地良い。
合いの手のように、天井で瞬く精霊さん達。
ヒートアップする飲み手の感情に合わせるように、明滅を繰り返す。
「ヘイ、ヨー。本日お待ちかねのナンバー。期待の新人、ジョリーオ!!」
「「オー!!」」
「歌うは、捧げられた杯と剣に!! ヒィィィィアウィゴーォォ!!」
「「ワァァァァァ!!」」
急遽作られた壇上に、ちょっと苦笑いの少年がローブの頭を降ろしながらリュートもどきを刻み始める。
「乾杯をしよう、杯を乾そうー」
「「乾そうー!!」」
盛り上がり始めたのを見定めて、壇上から静かに退場する。
一夜限りのDJプレイだが、一体感は、ぱない。
各テーブルに設置された民芸コンロからは、温かな光が漏れ、馨しい香りを漂わせている。
マスターのなんじゃこりゃを頂いた川魚の燻製は、急遽私の奢りとして本日供給させてもらった。
だって、食べられないと暴動が起きそうな雰囲気だったのだ。
「楽しいね……」
リサさんが、カウンターに座って近くの壇上を見上げながら呟く。
「こんな楽しい世界、あったんだ……」
その言葉に、そっと頭を抱いて、呟きを捧げる。
「きっと、もっと楽しくなるよ。信じられない?」
上目で見つめるリサさんが、小さくこくりと頷き。
「信じられる……」
呟いたから、笑顔を返した。
はい。
マスター曰く、開店史上最大に酒が捌けた日だったと言わしめた夜は、歓喜のまにまに終了を迎えた。
飲み手の配偶者の方々が、戻ってこない宿六を心配して巻き込まれ楽しい夜を過ごしたり。
偶には二人で来るのも良いよねって感じで円満になって帰って行ったり。
様々なドラマを生み出して、朝日が昇る間際に終局と相成った。
私?
声の限りに盛り上げました。
精霊さんもたまには、はっちゃけないと頑張り過ぎですし。
リサさんが寝息を立てている周囲は、ちょっと大人しめの精霊さん達がムーディーに楽しみながら守っていました。
という訳で、なし崩しに提供した民芸コンロさん。
ハウマッチと行きたいところなのだけど、マスターがごそごそすると、ドンっと革袋を置く。
それ、昨日の儲け全部じゃない?
「どんな対価を払っても構わない。これは、欲しい」
欲しい頂きました。
でも、仕入れにも問題が出そうなので、ダリーヌさんと打ち合わせてから対価を貰う話でまとめました。
分割でも良いよと伝えると、呆れたような顔を向けられましたが、お店があるんだから信用大です。
日々の商いの誠実さは、大事なのだという典型ですね。
さてと。
黄色い太陽の下、ささっとダリーヌさんと話を付けますか、と。
寝不足気味のリサさんと共に、酒場を出たのでした。
41
あなたにおすすめの小説
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる