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第十三章「帝国猟兵」(2)
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「わはははははは!! まつおさんと、決闘!」
「秒だ、秒で負ける!!」
「おなかいたい、おなかいたいよぉ~!」
「ちょっとォ、そんな言い方、いくらなんでもかわいそうダワ」
花京院とキム、ユキ、ジョセフィーヌが爆笑している。
「ジェルディクの帝国猟兵どもを束ねるこの私が秒で負けるだと……? 噂には聞いていたが、それほどの猛者だったとは……」
「どんな噂を聞いてきたんだよ」
まったく逆の受け取り方をされて、キムがドン引きしている。
「しかも、私の素性を聞かされても机に伏したまま微動だにしない。私など歯牙にもかけぬということか……」
「いや、めんどくさそうだから関係ないフリしているだけなんじゃ……」
ユキの力ないツッコミが入る。
「いずれにせよ、決闘の承認はすでにボイド教官から得ている。今日の放課後、訓練場にご足労願う!」
「だから補習なんだってば……」
「ふふふ、その手には乗らん。それでは、待っているぞ!」
ゾフィアは上機嫌な様子でそれだけ言うと、颯爽と教室を去っていった。
「なんて話を聞かないやつなんだ……」
僕はげんなりしながら机から顔を上げる。
「顔に机のカドの跡がついてるぞ」
キムに言われて、顔をごしごしとこする。
「それで、どうするの?」
「どうって?」
「帝国猟兵の隊長から決闘を申し込まれたのよ?」
心配そうに尋ねるメルに、僕は答える。
「断る」
「あ、それは多分無理よ」
「へ?」
ユキがにやにやしながら言った。
「無理だな」
本当だった。
ボイド教官がにやにやしながら言った。
「当士官学校では生徒同士の試合を認めている。正当かつ合理的な理由であれば、基本的に承認される。承認されれば、指名された側に拒否権はない」
「試合? あの人、『決闘』って言ってましたけど……」
「わっはっは! 彼女はジェルディクの人間だからな。少し言い間違えただけだろう」
「……」
とてもそうは思えないんだけど。
「帝国軍のエリートが士官学校の劣等生をボコボコにする正当かつ合理的な理由ってなんなんですか」
「彼女はジェルディク帝国からの記念すべき留学生第一号だ。両国の親善のためと言われれば、我が校としても承認しないわけにはいくまい?」
「両国の親善というのであれば、もっとジルベール公爵みたいな優等生とすればいいじゃないですか」
「そのジルベール公爵から君の評判を聞いたらしいぞ?」
「……あの野郎」
帝国猟兵を僕にぶつけて赤っ恥をかかせるつもりか。
適当に負ければいいやと思っていたけど、だんだん腹が立ってきたぞ。
「ほう、顔付きが変わったな」
ボイド教官が口元を緩めた。
「私は君の長所を1つだけ知っている」
「1つだけ」
「それは、自問自答だ」
「自問自答……」
「たとえば君は今、自分の能力を遥かに凌駕する相手に勝ちたいと思っているが、私にどうすれば彼女に勝てるかとは聞かない」
「勝てる方法があるんですか?」
「ないんじゃないか」
ボイド教官がきっぱりと答えた。
ですよね。
「君は仲間や周囲の人を味方に付けるのがうまい。天才的といっていいだろう。だが、君は仲間や周囲に判断を委ね、依存するようなことは決してしない。常に何かについて考え、悩んでいる」
「そうですかね。頼ってばかりの気がしますけど」
「そう、そこが君のすごいところだ。君は多くの人の手を借り、自分一人では何もできないことを理解した上で、大事なことは必ず他者に甘えず、自分で考え、自分の責任の下で決断しているんだ。これはなかなかできることではない。常に自問自答している」
自問自答、ねぇ。
そりゃ、みんなより能力がないんだから考えるしかないじゃないか。
「君がゾフィアくんに勝てる可能性は万に一つもないだろうが……、勝てることがあるとすれば、その自問自答の先にあるんじゃないか」
「放課後まであと数時間しかないんですが……」
「ふふ、ならば、さっさと自問自答してきたまえ」
「わはははははは!! まつおさんと、決闘!」
「秒だ、秒で負ける!!」
「おなかいたい、おなかいたいよぉ~!」
「ちょっとォ、そんな言い方、いくらなんでもかわいそうダワ」
花京院とキム、ユキ、ジョセフィーヌが爆笑している。
「ジェルディクの帝国猟兵どもを束ねるこの私が秒で負けるだと……? 噂には聞いていたが、それほどの猛者だったとは……」
「どんな噂を聞いてきたんだよ」
まったく逆の受け取り方をされて、キムがドン引きしている。
「しかも、私の素性を聞かされても机に伏したまま微動だにしない。私など歯牙にもかけぬということか……」
「いや、めんどくさそうだから関係ないフリしているだけなんじゃ……」
ユキの力ないツッコミが入る。
「いずれにせよ、決闘の承認はすでにボイド教官から得ている。今日の放課後、訓練場にご足労願う!」
「だから補習なんだってば……」
「ふふふ、その手には乗らん。それでは、待っているぞ!」
ゾフィアは上機嫌な様子でそれだけ言うと、颯爽と教室を去っていった。
「なんて話を聞かないやつなんだ……」
僕はげんなりしながら机から顔を上げる。
「顔に机のカドの跡がついてるぞ」
キムに言われて、顔をごしごしとこする。
「それで、どうするの?」
「どうって?」
「帝国猟兵の隊長から決闘を申し込まれたのよ?」
心配そうに尋ねるメルに、僕は答える。
「断る」
「あ、それは多分無理よ」
「へ?」
ユキがにやにやしながら言った。
「無理だな」
本当だった。
ボイド教官がにやにやしながら言った。
「当士官学校では生徒同士の試合を認めている。正当かつ合理的な理由であれば、基本的に承認される。承認されれば、指名された側に拒否権はない」
「試合? あの人、『決闘』って言ってましたけど……」
「わっはっは! 彼女はジェルディクの人間だからな。少し言い間違えただけだろう」
「……」
とてもそうは思えないんだけど。
「帝国軍のエリートが士官学校の劣等生をボコボコにする正当かつ合理的な理由ってなんなんですか」
「彼女はジェルディク帝国からの記念すべき留学生第一号だ。両国の親善のためと言われれば、我が校としても承認しないわけにはいくまい?」
「両国の親善というのであれば、もっとジルベール公爵みたいな優等生とすればいいじゃないですか」
「そのジルベール公爵から君の評判を聞いたらしいぞ?」
「……あの野郎」
帝国猟兵を僕にぶつけて赤っ恥をかかせるつもりか。
適当に負ければいいやと思っていたけど、だんだん腹が立ってきたぞ。
「ほう、顔付きが変わったな」
ボイド教官が口元を緩めた。
「私は君の長所を1つだけ知っている」
「1つだけ」
「それは、自問自答だ」
「自問自答……」
「たとえば君は今、自分の能力を遥かに凌駕する相手に勝ちたいと思っているが、私にどうすれば彼女に勝てるかとは聞かない」
「勝てる方法があるんですか?」
「ないんじゃないか」
ボイド教官がきっぱりと答えた。
ですよね。
「君は仲間や周囲の人を味方に付けるのがうまい。天才的といっていいだろう。だが、君は仲間や周囲に判断を委ね、依存するようなことは決してしない。常に何かについて考え、悩んでいる」
「そうですかね。頼ってばかりの気がしますけど」
「そう、そこが君のすごいところだ。君は多くの人の手を借り、自分一人では何もできないことを理解した上で、大事なことは必ず他者に甘えず、自分で考え、自分の責任の下で決断しているんだ。これはなかなかできることではない。常に自問自答している」
自問自答、ねぇ。
そりゃ、みんなより能力がないんだから考えるしかないじゃないか。
「君がゾフィアくんに勝てる可能性は万に一つもないだろうが……、勝てることがあるとすれば、その自問自答の先にあるんじゃないか」
「放課後まであと数時間しかないんですが……」
「ふふ、ならば、さっさと自問自答してきたまえ」
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