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1.恋文
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「ふふふーん♪」
私は朝から上機嫌だった。
何故かと言うと、今日は待ちに待ったお茶会の日だから!
部下のマリエルが魔女様の城に滞在をして、帰ってきたと思ったら、彼女を抱いて送ってきたのは、何とも美しい黒い羽を生やした青年だった。
後からマリエルに話を聞くと、彼は魔女の息子のエアロさんという方で、鴉に変身出来る魔法が使えるらしい。魔力を羽だけに集中させれば、人型のまま飛ぶことが出来るということだった。
彼は体内で僅かな魔力が循環しているだけで、魔女様のように体外に出したり、他に影響を及ぼすことは出来ない。だから、外に出ることも可能だとマリエルは話していた。城に滞在中はよく二人で庭に出たり、屋根に登ったりしていたらしい。
エアロさんを初めて見た時は、真っ黒な大きい羽を生やした人型だったので、悪魔かと思った。流石に人外だけあって、人ならざる美しさだな…と有り得ないことなのに、ぼーっとした頭で思った。
銀糸のようなサラサラとした長い銀髪に、真っ赤な瞳。眼鏡をかけたその奥の瞳は鋭いようでありながらも、マリエルを見つめる瞳は柔らかかった気がする。
長身に程よい肉付き。あれは戦える人の身体だと思う。無駄な肉が一切付いていなかった。手足が長く、スタイルも抜群だ。彼が着ていた執事服のような物も足の長さを際立たせていた。
私は初めて会った時から彼が気になって仕方なかった。あんな綺麗な男性、初めて会ったし。
そして何より…
仲良くなって、一緒に飛んで欲しい!いつか空を飛ぶのが夢だったんだもの!彼と仲良くなればそれが叶う!!
私はエアロさんと仲良くなるべく、マリエルと彼のお茶会にお邪魔することにしたのだ。マリエルからもお願いされたしね。
無事にマリエルの婚約者となった騎士団長のジルベルトだが、マリエルが男性と二人きりになるのを絶対に許さない。しかも、ジルベルトと離れていた間、マリエルがエアロさんと仲良くなったことでジルベルトはエアロさんに対して厳戒態勢を敷いている。
私からしたら、ジルベルトは大袈裟だ。いつもマリエル可愛さに暴走する。マリエルだってそれなりに強いのだから、簡単に襲われないだろうに。それに、あんなにマリエルもジルベルトしか見えていないのに、何を心配する必要があるのか。私からしたら、ただの馬鹿なカップルだ。それに付き合わされる周りのことも考えてほしい。
今回に関しては、嬉しいからいいけど。
私はスキップでもしそうな勢いでお茶会の会場である来賓室に向かっていた。
すると、向かい側から第二王子付きの補佐官がやって来た。…最悪だ…こんなタイミングで会うなんて。引き返したい…引き返したいが、来賓室はこの奥だ。
「シルヴィさん!!」
補佐官のロイズさんが私に駆け寄ってくる。
私は顔を顰めて、対応する。
「…なんですか?」
ロイズさんは私の失礼な態度に苦笑いだ。
「はは…。セレク王子殿下のせいで僕もすっかり嫌われちゃいましたね。」
「別にロイズさんを嫌ってはいないですけど…
毎回ちゃんと王子殿下に私の言葉を伝えて下さってます?もういい加減にしていただきたいんですけど。」
私が軽く睨みながら、ロイズさんに言うと、ロイズさんはまたしても困ったように笑った。
「伝えてるんですけどねぇ…どうしてもシルヴィさんと仲良くなりたいみたいで。」
「私は別に仲良くなりたくないです。恐れ多いです。
第一、婚約式が終わったばかりなのに、他の女性に手紙を出すってどうなんですか?婚約者の姫様に悪いと思わないんですか?」
ロイズさんは眉を下げて、言った。
「まぁ…そのことに関しては王子も被害者みたいなものなので、そんなに悪く言わないであげてください。詳しくは言えませんが。」
「…被害者?」
「ははっ、気にしないで下さい。
こちらの話です。
はい、こちら殿下からのお手紙です。
今回は必ず目を通してくださいね。
では、失礼します。」
そう言って、私の手に王子殿下からの手紙を押し付けると、足早に去って行ってしまった。
「はぁ……」
私は手元に残った手紙を見て、大きくため息をついた。
私は昔から男性によく言い寄られる。昔からあまりにも多いので、流石に自分でも人目を引く容姿だと自覚している。
ストロベリーブロンドの髪はやたらと艶々としているし、瞳はあまり見ない紫だ。瞳はまんまるとして大きいし、睫毛はやたらとバサバサしている。唇は小さく、血色も良い。胸は大きく、お尻もバランス良く膨らんでいる。「可愛い」「綺麗」だと幾度となく言われて来たが、私にとっては困ったことの方が多かった。
この容姿のせいで昔からよく誘拐されそうになったり、襲われそうになったりしていたし、騎士団に入ってからも顔だけ綺麗で何が出来るんだと馬鹿にされた。騎士としての実力を示した後も惚れられることが多くて、断るのが面倒だったし、無理矢理組み敷こうとする馬鹿もいた。もちろん実力でねじ伏せたが。
でも、そういうのはまだいい。一番面倒なのは権力がある上に純粋なタイプ…そう、まさに第二王子殿下なのだ。
あれは私は騎士になって四年目の十八の頃だった。私は第二王子殿下の護衛に就いたことがあった。当時十三歳だった王子殿下は、それはとても可愛らしかった。王家特有の金髪碧眼で、少し不安そうに瞳を揺らす様はまるで人の世に迷い込んだ妖精のようだった。
私は思わず可愛がってしまった。ニコニコと笑いかけ、空き時間には王子殿下の話を熱心に聞いてあげた。
そこからだ。王子殿下から恋心を寄せられてしまったのは。毎月のように恋文が届けられ、愛の言葉を贈られる。最初は若い故に歳上に憧れているのかと思い、微笑ましく受け取っていたが…もう七年目になる。長すぎる。
容姿と剣の腕しかない私の何が気に入ったのか分からないが、よくこうも不毛な片思いを続けられるものかと呆れる。
それも今回王子殿下が隣国の姫と婚約したことで終わるとホッとしていたのに、また…。
私は手元の手紙を仕方なくポケットに入れた。
よしっ!気持ちを切り替えて、エアロさんに会いに行こう!王子殿下も美しく成長したけど、私のタイプは断然エアロさんだ。なんたって飛べるし!
私は足早に来賓室に向かった。
◆ ◇ ◆
今回来賓室がお茶会の会場に選ばれたのは、外から見えにくいことと、小さな庭が付いているからだった。小さな庭があれば、鴉に変身できるエアロさんがここに直接降り立てる。鴉で出入りすれば、周りからは分からないからね。
マリエルはもう来賓室に来ていた。エアロさんはまだのようだ。良かった、間に合って。二人きりにしたら、ジルベルトにどんな小言を言われるか。本当に面倒な奴だ。
「マリエル!もう来てたのね。」
「はい!副団長、今日は宜しくお願いします。
すみません、ジルベルト様が…。」
マリエルはペコっと頭を下げた。本当にマリエルは見た目だけじゃなく、性格まで素直で可愛い。ジルベルトが夢中になるのも分かる。
私はマリエルに笑いかける。
「いいの、いいの。
実を言うと、私もエアロさんと仲良くなりたかったし!」
「ふふっ!知ってました。副団長、高いのとか速いのとか好きだから、エアロと飛びたいって言うだろうなって。」
二人で笑い合う。
「やっぱりバレてたか。ついでに魔女様にも会いたいわ。元々会ってみたかったけど、マリエルの話、聞いて、素敵な方なのかな…って思ったし。お友達になりたいわ。」
「やっぱり!さすが副団長。実はもうシーラ様にもお友達連れて行きますって言ってるんです。あ、上司って言うのも変かな、と思って。」
マリエルは少し照れたように下を向いた。
「マリエルが結婚して騎士団辞めたら同僚っていうより友達だもんね!嬉しいわ!
ねぇ、行ってもいいって?」
「はい!女性なら歓迎するって。」
「ほんと?!良かったー!」
その時、鴉の鳴き声が聞こえた。庭に出て、外を見上げると、鴉がスゥーと綺麗に降下し、庭の中央に降りた。鴉は器用にバスケットの様な物を握っていた。
鴉はみるみるうちに姿を変え、あの美しいエアロさんになった。エアロさんは、私達を交互に見ると、優しく微笑んだ。
「シルヴィ様、マリエル。本日はお招き頂き、ありがとうございます。どうぞ宜しくお願いします。」
エアロさんはそう言って、私に近付き、手の甲にキスを落とした。こんな綺麗な人にキスを贈られるなんて…色んな男性に言い寄られて来た私だが、未だかつてこんなにドキドキしたことはない。手の甲も、顔も熱い気がする。
…いつも一緒にいるのがジルベルトだし、イケメン耐性はついてるはずなんだけどな。
私の顔を一瞥すると、エアロさんは柔らかく笑ってくれた。
「シルヴィ様に怖がられているわけではなさそうで、安心しました。」
「怖がるなんて、そんなことあり得ませんよ!」
エアロさんは少し寂しそうに笑う。
「普通の御令嬢は鴉が目の前で人間に変身したら、気味が悪いと悲鳴を上げるものですよ。」
「でも、エアロさんは綺麗ですし…。」
エアロさんは一瞬ポカンとした後、声を出して笑った。
「シルヴィ様のように綺麗な人に綺麗と言われるのは変な感じですね。私からすると、シルヴィ様の方がずっと美しく、綺麗ですよ。」
なんて言うか…すごい。こんな風に優しく笑いかけて、嬉しいことを言われたら、女の子なら誰だって惚れてしまいそう。この人は自分の持つ魅力を分かっていないのだろうか?
「ありがとうございます…。」
「いえ、こちらこそ。」
御礼を言うと、エアロさんもにこやかに返事してくれた。
エアロさんはマリエルの方へ行き、マリエルの頭を撫でた。その瞳はとても優しい。
「マリエル、正式に婚約したんだってね。
本当におめでとう。」
マリエルは幸せそうに笑う。
「うん!ありがとう!
今日も来てくれてありがとね!
さぁ、座って話しましょう!」
マリエルは、そう言って、エアロさんの背を押し、席に促した。私もそれについて行く。
エアロさんの背に添えられたマリエルの手を見ながら、何故か、もやもやとした。
私は朝から上機嫌だった。
何故かと言うと、今日は待ちに待ったお茶会の日だから!
部下のマリエルが魔女様の城に滞在をして、帰ってきたと思ったら、彼女を抱いて送ってきたのは、何とも美しい黒い羽を生やした青年だった。
後からマリエルに話を聞くと、彼は魔女の息子のエアロさんという方で、鴉に変身出来る魔法が使えるらしい。魔力を羽だけに集中させれば、人型のまま飛ぶことが出来るということだった。
彼は体内で僅かな魔力が循環しているだけで、魔女様のように体外に出したり、他に影響を及ぼすことは出来ない。だから、外に出ることも可能だとマリエルは話していた。城に滞在中はよく二人で庭に出たり、屋根に登ったりしていたらしい。
エアロさんを初めて見た時は、真っ黒な大きい羽を生やした人型だったので、悪魔かと思った。流石に人外だけあって、人ならざる美しさだな…と有り得ないことなのに、ぼーっとした頭で思った。
銀糸のようなサラサラとした長い銀髪に、真っ赤な瞳。眼鏡をかけたその奥の瞳は鋭いようでありながらも、マリエルを見つめる瞳は柔らかかった気がする。
長身に程よい肉付き。あれは戦える人の身体だと思う。無駄な肉が一切付いていなかった。手足が長く、スタイルも抜群だ。彼が着ていた執事服のような物も足の長さを際立たせていた。
私は初めて会った時から彼が気になって仕方なかった。あんな綺麗な男性、初めて会ったし。
そして何より…
仲良くなって、一緒に飛んで欲しい!いつか空を飛ぶのが夢だったんだもの!彼と仲良くなればそれが叶う!!
私はエアロさんと仲良くなるべく、マリエルと彼のお茶会にお邪魔することにしたのだ。マリエルからもお願いされたしね。
無事にマリエルの婚約者となった騎士団長のジルベルトだが、マリエルが男性と二人きりになるのを絶対に許さない。しかも、ジルベルトと離れていた間、マリエルがエアロさんと仲良くなったことでジルベルトはエアロさんに対して厳戒態勢を敷いている。
私からしたら、ジルベルトは大袈裟だ。いつもマリエル可愛さに暴走する。マリエルだってそれなりに強いのだから、簡単に襲われないだろうに。それに、あんなにマリエルもジルベルトしか見えていないのに、何を心配する必要があるのか。私からしたら、ただの馬鹿なカップルだ。それに付き合わされる周りのことも考えてほしい。
今回に関しては、嬉しいからいいけど。
私はスキップでもしそうな勢いでお茶会の会場である来賓室に向かっていた。
すると、向かい側から第二王子付きの補佐官がやって来た。…最悪だ…こんなタイミングで会うなんて。引き返したい…引き返したいが、来賓室はこの奥だ。
「シルヴィさん!!」
補佐官のロイズさんが私に駆け寄ってくる。
私は顔を顰めて、対応する。
「…なんですか?」
ロイズさんは私の失礼な態度に苦笑いだ。
「はは…。セレク王子殿下のせいで僕もすっかり嫌われちゃいましたね。」
「別にロイズさんを嫌ってはいないですけど…
毎回ちゃんと王子殿下に私の言葉を伝えて下さってます?もういい加減にしていただきたいんですけど。」
私が軽く睨みながら、ロイズさんに言うと、ロイズさんはまたしても困ったように笑った。
「伝えてるんですけどねぇ…どうしてもシルヴィさんと仲良くなりたいみたいで。」
「私は別に仲良くなりたくないです。恐れ多いです。
第一、婚約式が終わったばかりなのに、他の女性に手紙を出すってどうなんですか?婚約者の姫様に悪いと思わないんですか?」
ロイズさんは眉を下げて、言った。
「まぁ…そのことに関しては王子も被害者みたいなものなので、そんなに悪く言わないであげてください。詳しくは言えませんが。」
「…被害者?」
「ははっ、気にしないで下さい。
こちらの話です。
はい、こちら殿下からのお手紙です。
今回は必ず目を通してくださいね。
では、失礼します。」
そう言って、私の手に王子殿下からの手紙を押し付けると、足早に去って行ってしまった。
「はぁ……」
私は手元に残った手紙を見て、大きくため息をついた。
私は昔から男性によく言い寄られる。昔からあまりにも多いので、流石に自分でも人目を引く容姿だと自覚している。
ストロベリーブロンドの髪はやたらと艶々としているし、瞳はあまり見ない紫だ。瞳はまんまるとして大きいし、睫毛はやたらとバサバサしている。唇は小さく、血色も良い。胸は大きく、お尻もバランス良く膨らんでいる。「可愛い」「綺麗」だと幾度となく言われて来たが、私にとっては困ったことの方が多かった。
この容姿のせいで昔からよく誘拐されそうになったり、襲われそうになったりしていたし、騎士団に入ってからも顔だけ綺麗で何が出来るんだと馬鹿にされた。騎士としての実力を示した後も惚れられることが多くて、断るのが面倒だったし、無理矢理組み敷こうとする馬鹿もいた。もちろん実力でねじ伏せたが。
でも、そういうのはまだいい。一番面倒なのは権力がある上に純粋なタイプ…そう、まさに第二王子殿下なのだ。
あれは私は騎士になって四年目の十八の頃だった。私は第二王子殿下の護衛に就いたことがあった。当時十三歳だった王子殿下は、それはとても可愛らしかった。王家特有の金髪碧眼で、少し不安そうに瞳を揺らす様はまるで人の世に迷い込んだ妖精のようだった。
私は思わず可愛がってしまった。ニコニコと笑いかけ、空き時間には王子殿下の話を熱心に聞いてあげた。
そこからだ。王子殿下から恋心を寄せられてしまったのは。毎月のように恋文が届けられ、愛の言葉を贈られる。最初は若い故に歳上に憧れているのかと思い、微笑ましく受け取っていたが…もう七年目になる。長すぎる。
容姿と剣の腕しかない私の何が気に入ったのか分からないが、よくこうも不毛な片思いを続けられるものかと呆れる。
それも今回王子殿下が隣国の姫と婚約したことで終わるとホッとしていたのに、また…。
私は手元の手紙を仕方なくポケットに入れた。
よしっ!気持ちを切り替えて、エアロさんに会いに行こう!王子殿下も美しく成長したけど、私のタイプは断然エアロさんだ。なんたって飛べるし!
私は足早に来賓室に向かった。
◆ ◇ ◆
今回来賓室がお茶会の会場に選ばれたのは、外から見えにくいことと、小さな庭が付いているからだった。小さな庭があれば、鴉に変身できるエアロさんがここに直接降り立てる。鴉で出入りすれば、周りからは分からないからね。
マリエルはもう来賓室に来ていた。エアロさんはまだのようだ。良かった、間に合って。二人きりにしたら、ジルベルトにどんな小言を言われるか。本当に面倒な奴だ。
「マリエル!もう来てたのね。」
「はい!副団長、今日は宜しくお願いします。
すみません、ジルベルト様が…。」
マリエルはペコっと頭を下げた。本当にマリエルは見た目だけじゃなく、性格まで素直で可愛い。ジルベルトが夢中になるのも分かる。
私はマリエルに笑いかける。
「いいの、いいの。
実を言うと、私もエアロさんと仲良くなりたかったし!」
「ふふっ!知ってました。副団長、高いのとか速いのとか好きだから、エアロと飛びたいって言うだろうなって。」
二人で笑い合う。
「やっぱりバレてたか。ついでに魔女様にも会いたいわ。元々会ってみたかったけど、マリエルの話、聞いて、素敵な方なのかな…って思ったし。お友達になりたいわ。」
「やっぱり!さすが副団長。実はもうシーラ様にもお友達連れて行きますって言ってるんです。あ、上司って言うのも変かな、と思って。」
マリエルは少し照れたように下を向いた。
「マリエルが結婚して騎士団辞めたら同僚っていうより友達だもんね!嬉しいわ!
ねぇ、行ってもいいって?」
「はい!女性なら歓迎するって。」
「ほんと?!良かったー!」
その時、鴉の鳴き声が聞こえた。庭に出て、外を見上げると、鴉がスゥーと綺麗に降下し、庭の中央に降りた。鴉は器用にバスケットの様な物を握っていた。
鴉はみるみるうちに姿を変え、あの美しいエアロさんになった。エアロさんは、私達を交互に見ると、優しく微笑んだ。
「シルヴィ様、マリエル。本日はお招き頂き、ありがとうございます。どうぞ宜しくお願いします。」
エアロさんはそう言って、私に近付き、手の甲にキスを落とした。こんな綺麗な人にキスを贈られるなんて…色んな男性に言い寄られて来た私だが、未だかつてこんなにドキドキしたことはない。手の甲も、顔も熱い気がする。
…いつも一緒にいるのがジルベルトだし、イケメン耐性はついてるはずなんだけどな。
私の顔を一瞥すると、エアロさんは柔らかく笑ってくれた。
「シルヴィ様に怖がられているわけではなさそうで、安心しました。」
「怖がるなんて、そんなことあり得ませんよ!」
エアロさんは少し寂しそうに笑う。
「普通の御令嬢は鴉が目の前で人間に変身したら、気味が悪いと悲鳴を上げるものですよ。」
「でも、エアロさんは綺麗ですし…。」
エアロさんは一瞬ポカンとした後、声を出して笑った。
「シルヴィ様のように綺麗な人に綺麗と言われるのは変な感じですね。私からすると、シルヴィ様の方がずっと美しく、綺麗ですよ。」
なんて言うか…すごい。こんな風に優しく笑いかけて、嬉しいことを言われたら、女の子なら誰だって惚れてしまいそう。この人は自分の持つ魅力を分かっていないのだろうか?
「ありがとうございます…。」
「いえ、こちらこそ。」
御礼を言うと、エアロさんもにこやかに返事してくれた。
エアロさんはマリエルの方へ行き、マリエルの頭を撫でた。その瞳はとても優しい。
「マリエル、正式に婚約したんだってね。
本当におめでとう。」
マリエルは幸せそうに笑う。
「うん!ありがとう!
今日も来てくれてありがとね!
さぁ、座って話しましょう!」
マリエルは、そう言って、エアロさんの背を押し、席に促した。私もそれについて行く。
エアロさんの背に添えられたマリエルの手を見ながら、何故か、もやもやとした。
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