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14.ドレス
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スカーレット姫の呼び出しを受けた日、エアロは一日中私と一緒にいた。もちろん朝まで。
エアロがあの時何かを考えていたから、私を心配して、姫のところに行ってしまうんじゃないかと不安だったけど、私の勘違いのようだった。エアロも「行くはずないじゃないですか」と笑ってくれたし、夜はずっと私を抱いてくれた。
問題が起こったのは、呼び出しの日から一週間が経った時だった。私の育ての親とも言うべき、叔母さんから手紙が届き、お店まで来て欲しいと書いてあった。
最近、顔を出せてなかったから、モデルになってとか、お店手伝ってとか、そう言った類かと思い、お店に顔を出すと予想外のことが起こっていた。
「叔母さん、戻ったよ~。」
「シルヴィ。おかえり…」
叔母さんが力なく溜息を吐く。
「ど、どうしたの?というか、お店ガラガラね。」
「そうなのよ!!四日前からうちの目の前に女性服のお店が出来ちゃったの!オープンセールとか言って安売りしちゃってて、お客さんがそっちに流れてるの!」
「あらら。でも、最初だけなんじゃないの?」
「それならいいんだけど…どうやら今度、第二王子に嫁がれる隣国の姫が贔屓にしている店らしいのよ。豊かな隣国に憧れている若い子も多いから…。」
「そっか…。でも、これからは貴族相手に売ってくって叔母さん言ってたよね?夜着の注文入ってるんでしょ?」
「それがね…貴族の方からもキャンセルが相次いでいるのよ。」
叔母さんは大きく溜息を吐いて、首を横に振った。
「キャンセル?」
「うん…。
キャンセルの理由を聞いても教えてくれないし…。」
その時、お店の扉が開いて、エアロが入ってきた。
「シルヴィ?」
「あ、エアロ。こっちよ。」
叔母さんは、突然のエアロの登場に固まっている。
今日はせっかくだから、叔母さんにエアロを紹介しようと思って、呼んでいたのだった。
「叔母さん、話の途中でごめんね。
こちらエアロ。今、お付き合いしている方なの。」
「エアロ…さん…」
「初めまして。エアロと申します。」
エアロがにっこりと挨拶をすると、叔母さんはうっとりとして、エアロを見つめる。
「叔母さん?」
エアロの笑顔にすっかり吸い込まれてしまった叔母さんに声をかける。叔母さんはハッとした。
「あぁ、ごめんなさい!あまりにも綺麗なお顔だから、つい見惚れちゃったわ!!シルヴィも姪っ子ながら超美人だけど、エアロさんもすっごい美形ねぇ…。」
「ありがとうございます。」
エアロがもう一度微笑むと、叔母さんは頬を染めた。
「本当に素敵だわー!!
このあたりでは見ないけど、王宮に勤めてたりするの?」
叔母さんは興味津々で尋ねてくる。
エアロが恐る恐る口を開く。私に目配せをしてくるので、笑顔で頷く。
「あの…実は北に住む魔女の息子なんです。
普段は母とラボラ城に住んでいます。」
「へー!魔女様の!!
なら、これだけ美しいのも納得だわ!!」
ニコニコと返答する叔母さんにエアロは目を丸くする。
「魔女が…怖くないんですか?」
「怖くないわよ。何なら過去に感染症と食糧難から国を救った聖女だと私は思ってるわ!」
叔母さんは胸を張って、にっこり笑う。
「聖女…。」
エアロは呟いた。まだ唖然としている。
私はあまりにもエアロが驚くものだからおかしくなって、笑った。
「ふふっ。叔母さんはずっとそう言ってるの。
珍しいでしょう?」
私がそう言うと、エアロは嬉しそうに笑った。
「…こんな素敵な叔母様だから、シルヴィが優しく聡明に育ったのですね。」
「素敵だなんて!顔が良いだけじゃなくて、口も上手いわね!!うちの店で働いてもらいたいくらいだわー!!」
叔母さんは、エアロの肩をバシバシ叩いた。
叔母さんの勢いに、エアロは苦笑いだ。叔母さんはエアロの手を引いて、奥に行こうとする。
「せっかくエアロさんが来たんだし、奥でお茶飲みながら話しましょ!どうせお客なんか今日は来ないから。」
「大丈夫なんですか?」
エアロが不思議そうに問う。
私はエアロの耳元で答えた。
「スカーレット姫の嫌がらせみたいなの。
対策を考えなくちゃ。」
私はエアロをお店の奥へ押し込んだ。
叔母さんの話によると、向かい側にあった男性服のお店が急に閉店して、女性服のお店になったらしい。叔母さんのお店と似たような商品が多く、価格帯も叔母さんのお店より安く設定されているらしい。
「まるでうちの店を潰そうとしているみたいだわ!あんな価格帯でやって、採算が取れるはずないもの!!うちを潰してから、価格を釣り上げるつもりなのよ!!」
「あ、あのね…叔母さん…」
私が自分のせいで姫から嫌がらせを受けていると伝えようとしたら、エアロが手を握って、首を振った。そして、エアロは叔母さんに一つの提案をした。
「叔母様、一週間ほど待っていただけないでしょうか?この店の看板商品になる物をお持ちします。」
「一週間?全然構わないわよ。今のところ私には手立てがないもの。」
叔母さんは降参とばかりに手を挙げる。
「ありがとうございます。必ずや素晴らしい商品をお持ちしますね。」
「楽しみにしてるわ!宜しくね、エアロさん!」
その時、店のベルが鳴った。常連のお客さんが来たようだった。叔母さんが出ていく。
私はエアロに言う。
「看板商品って…どういうつもり?」
「ふふっ。
一人、とびきり腕の良い職人を知ってるんです。」
「え…。それって…。」
エアロは微笑んで頷く。
「シルヴィ、今日はこの後お休みでしたよね?一緒に城まで飛んでくれますか?」
「もちろん!!」
私たちは叔母さんへの挨拶もそこそこにシーラ様へ会いに行った。
◆ ◇ ◆
「シルヴィ!おかえりなさい!」
シーラ様は大喜びで、私を迎え入れてくれた。シーラ様とギュッと抱きしめ合う。
「ただいま!シーラ様はお変わりないですか?」
「えぇ!!元気よ。
最近は料理やお菓子作りにも挑戦するようになったの。今更だけど、エアロに頼ってばかりもいられないからね。お陰でお茶は美味しく淹れられるようなったわ!!」
エアロは私たちの様子を見て、微笑み、口を開いた。
「母上。嬉しいのは分かりますが、座って話しましょう。」
「それもそうね。じゃあ、二人とも先に座ってて、私がとびきり美味しいお茶を淹れるわ!」
「母上、張り切りすぎて手順を間違えないで下さいね。」
「分かってるわよ!もう、一言多いんだから。」
シーラ様は口をとんがらせて、文句を言いつつ、お茶を淹れてくれた。
私はその二人のやり取りを微笑ましく見ていた。私の大好きな空間がそこにはあった。
シーラ様の淹れてくれたちょっと渋めのお茶と、エアロが前日に作ったクッキーがテーブルに並んだ。
シーラ様はしょんぼりしている。
「いつもなら、もっと上手く淹れられるのよ?
なんで今日に限って…。」
いじけているシーラ様が可愛い。
「シーラ様、美味しいですよ。
クッキーが甘いのでちょうどいいくらいです!」
私がそう言うと、エアロの指摘が飛ぶ。
「シルヴィ、母上を甘やかさないで下さい。お茶の一杯くらいまともに淹れられるようにならなくては。」
私はエアロを睨む。
「もう!エアロ!!
それなら私だって上手く淹れられないわ。
頑張ってるシーラ様に意地悪しないで!!」
シーラ様が感激したように私を見つめる。
「シルヴィ…!本当に貴女は可愛いわ!!」
エアロは、短く溜息を吐く。
「まぁ、いいです。自分で淹れようと思えるようになったのが成長ですからね。
では、お茶も入ったことですし、本題に入りましょうか?」
シーラ様は首を傾げる。
「本題?」
私は姿勢を正して、シーラ様に向き直る。
「…シーラ様。
シーラ様のお力を貸していただきたいんです。」
シーラ様は顔を強張らせる。
「…何に魔力を使えばいいの?」
私は慌てて首を横に振る。
「あ、魔力じゃないんです。」
シーラ様はポカンとする。
しばらくして、口を開いた。
「……魔力じゃない?
それ以外で私がしてあげられることなんて…。」
私はシーラ様に頭を下げた。
「シーラ様の裁縫の腕を貸していただきたいんです!!」
「裁縫?」
首を傾げるシーラ様を私はまっすぐ見つめて言う。
「えぇ!シーラ様は服作りはもちろん、ドレス作りも出来ますよね?」
「出来るけど…」
「シーラ様の作ったドレスを私の叔母の店で取り扱わせていただけないでしょうか?!」
シーラ様は目を丸くする。
「…え。私の作った物を…売るの?
…そんなの売れるかしら…?」
「売れます!絶対に売れます!!」
私は前のめり気味に訴える。
唸りながら考えるシーラ様にエアロが言う。
「ずっとマリエルからも言われていたでしょう?
王太子妃殿下やマリエルのお姉上も母上のドレスが欲しいと言っていると。」
シーラ様は俯き、髪をクルクルと弄る。
「でも…なんだか信じられなくて。
ずっと外に出てなくて、流行りも分からないし…。」
私は訴える。
「シーラ様が流行りを作り出せばいいんです!王太子妃殿下が既にシーラ様のファンなら流行りを作り出せたも同然です!!」
エアロが追い討ちをかける。
「母上もマリエルから言われて、ずっと考えてたでしょう?母上のドレスを欲しがる人にドレスを作ってあげられないかと。
でも、お店なんて開けないし、城の外に出れないから出来ないことも多い。そのあたりを代わりにやってくれる人がいれば、と。」
「そうだけど…私と一緒に仕事がしたい人なんていないわ。私は怖がられているし…。」
私は笑顔で言った。
「シーラ様!いるんです!
私の叔母です!
シーラ様のことをずっと前から聖女と呼んでいます!」
「せ、聖女?」
「母上、私も今日お会いしてきましたが、とても気さくな良い方でした。さすがシルヴィの叔母様だな、と言った方です。
私が母上の息子だと伝えても、まったく恐れることなく、美しいのも納得だと言って、笑っていました。」
「随分と変わった方なのね…。」
シーラ様は驚いた様子で呟く。
「最初のうちは私を通して、やり取りして下さって構いません。でも、きっと叔母ならシーラ様と上手くやれると思うんです。
…どうですか?考えて下さいますか?」
シーラ様は私を見ると、フフフッと笑った。
「シルヴィは凄いわね…。
私の周りを次々に変えていく。今まで狭い世界で過ごしていたのが、馬鹿らしくなるくらい。
……いいわ!私も喜んでくれる方がいるなら、ドレスを作りたいと思っていたの。前にシルヴィが叔母様の話をした時から実は気になっていたし。
私からもお願い出来るかしら。」
私とエアロは、笑顔で顔を見合わせた。
「やったー!」
私がそう叫ぶと、エアロとシーラ様も声を出して笑ってくれた。
こうしてシーラ様の作ったドレスが世に出されることとなった。
エアロがあの時何かを考えていたから、私を心配して、姫のところに行ってしまうんじゃないかと不安だったけど、私の勘違いのようだった。エアロも「行くはずないじゃないですか」と笑ってくれたし、夜はずっと私を抱いてくれた。
問題が起こったのは、呼び出しの日から一週間が経った時だった。私の育ての親とも言うべき、叔母さんから手紙が届き、お店まで来て欲しいと書いてあった。
最近、顔を出せてなかったから、モデルになってとか、お店手伝ってとか、そう言った類かと思い、お店に顔を出すと予想外のことが起こっていた。
「叔母さん、戻ったよ~。」
「シルヴィ。おかえり…」
叔母さんが力なく溜息を吐く。
「ど、どうしたの?というか、お店ガラガラね。」
「そうなのよ!!四日前からうちの目の前に女性服のお店が出来ちゃったの!オープンセールとか言って安売りしちゃってて、お客さんがそっちに流れてるの!」
「あらら。でも、最初だけなんじゃないの?」
「それならいいんだけど…どうやら今度、第二王子に嫁がれる隣国の姫が贔屓にしている店らしいのよ。豊かな隣国に憧れている若い子も多いから…。」
「そっか…。でも、これからは貴族相手に売ってくって叔母さん言ってたよね?夜着の注文入ってるんでしょ?」
「それがね…貴族の方からもキャンセルが相次いでいるのよ。」
叔母さんは大きく溜息を吐いて、首を横に振った。
「キャンセル?」
「うん…。
キャンセルの理由を聞いても教えてくれないし…。」
その時、お店の扉が開いて、エアロが入ってきた。
「シルヴィ?」
「あ、エアロ。こっちよ。」
叔母さんは、突然のエアロの登場に固まっている。
今日はせっかくだから、叔母さんにエアロを紹介しようと思って、呼んでいたのだった。
「叔母さん、話の途中でごめんね。
こちらエアロ。今、お付き合いしている方なの。」
「エアロ…さん…」
「初めまして。エアロと申します。」
エアロがにっこりと挨拶をすると、叔母さんはうっとりとして、エアロを見つめる。
「叔母さん?」
エアロの笑顔にすっかり吸い込まれてしまった叔母さんに声をかける。叔母さんはハッとした。
「あぁ、ごめんなさい!あまりにも綺麗なお顔だから、つい見惚れちゃったわ!!シルヴィも姪っ子ながら超美人だけど、エアロさんもすっごい美形ねぇ…。」
「ありがとうございます。」
エアロがもう一度微笑むと、叔母さんは頬を染めた。
「本当に素敵だわー!!
このあたりでは見ないけど、王宮に勤めてたりするの?」
叔母さんは興味津々で尋ねてくる。
エアロが恐る恐る口を開く。私に目配せをしてくるので、笑顔で頷く。
「あの…実は北に住む魔女の息子なんです。
普段は母とラボラ城に住んでいます。」
「へー!魔女様の!!
なら、これだけ美しいのも納得だわ!!」
ニコニコと返答する叔母さんにエアロは目を丸くする。
「魔女が…怖くないんですか?」
「怖くないわよ。何なら過去に感染症と食糧難から国を救った聖女だと私は思ってるわ!」
叔母さんは胸を張って、にっこり笑う。
「聖女…。」
エアロは呟いた。まだ唖然としている。
私はあまりにもエアロが驚くものだからおかしくなって、笑った。
「ふふっ。叔母さんはずっとそう言ってるの。
珍しいでしょう?」
私がそう言うと、エアロは嬉しそうに笑った。
「…こんな素敵な叔母様だから、シルヴィが優しく聡明に育ったのですね。」
「素敵だなんて!顔が良いだけじゃなくて、口も上手いわね!!うちの店で働いてもらいたいくらいだわー!!」
叔母さんは、エアロの肩をバシバシ叩いた。
叔母さんの勢いに、エアロは苦笑いだ。叔母さんはエアロの手を引いて、奥に行こうとする。
「せっかくエアロさんが来たんだし、奥でお茶飲みながら話しましょ!どうせお客なんか今日は来ないから。」
「大丈夫なんですか?」
エアロが不思議そうに問う。
私はエアロの耳元で答えた。
「スカーレット姫の嫌がらせみたいなの。
対策を考えなくちゃ。」
私はエアロをお店の奥へ押し込んだ。
叔母さんの話によると、向かい側にあった男性服のお店が急に閉店して、女性服のお店になったらしい。叔母さんのお店と似たような商品が多く、価格帯も叔母さんのお店より安く設定されているらしい。
「まるでうちの店を潰そうとしているみたいだわ!あんな価格帯でやって、採算が取れるはずないもの!!うちを潰してから、価格を釣り上げるつもりなのよ!!」
「あ、あのね…叔母さん…」
私が自分のせいで姫から嫌がらせを受けていると伝えようとしたら、エアロが手を握って、首を振った。そして、エアロは叔母さんに一つの提案をした。
「叔母様、一週間ほど待っていただけないでしょうか?この店の看板商品になる物をお持ちします。」
「一週間?全然構わないわよ。今のところ私には手立てがないもの。」
叔母さんは降参とばかりに手を挙げる。
「ありがとうございます。必ずや素晴らしい商品をお持ちしますね。」
「楽しみにしてるわ!宜しくね、エアロさん!」
その時、店のベルが鳴った。常連のお客さんが来たようだった。叔母さんが出ていく。
私はエアロに言う。
「看板商品って…どういうつもり?」
「ふふっ。
一人、とびきり腕の良い職人を知ってるんです。」
「え…。それって…。」
エアロは微笑んで頷く。
「シルヴィ、今日はこの後お休みでしたよね?一緒に城まで飛んでくれますか?」
「もちろん!!」
私たちは叔母さんへの挨拶もそこそこにシーラ様へ会いに行った。
◆ ◇ ◆
「シルヴィ!おかえりなさい!」
シーラ様は大喜びで、私を迎え入れてくれた。シーラ様とギュッと抱きしめ合う。
「ただいま!シーラ様はお変わりないですか?」
「えぇ!!元気よ。
最近は料理やお菓子作りにも挑戦するようになったの。今更だけど、エアロに頼ってばかりもいられないからね。お陰でお茶は美味しく淹れられるようなったわ!!」
エアロは私たちの様子を見て、微笑み、口を開いた。
「母上。嬉しいのは分かりますが、座って話しましょう。」
「それもそうね。じゃあ、二人とも先に座ってて、私がとびきり美味しいお茶を淹れるわ!」
「母上、張り切りすぎて手順を間違えないで下さいね。」
「分かってるわよ!もう、一言多いんだから。」
シーラ様は口をとんがらせて、文句を言いつつ、お茶を淹れてくれた。
私はその二人のやり取りを微笑ましく見ていた。私の大好きな空間がそこにはあった。
シーラ様の淹れてくれたちょっと渋めのお茶と、エアロが前日に作ったクッキーがテーブルに並んだ。
シーラ様はしょんぼりしている。
「いつもなら、もっと上手く淹れられるのよ?
なんで今日に限って…。」
いじけているシーラ様が可愛い。
「シーラ様、美味しいですよ。
クッキーが甘いのでちょうどいいくらいです!」
私がそう言うと、エアロの指摘が飛ぶ。
「シルヴィ、母上を甘やかさないで下さい。お茶の一杯くらいまともに淹れられるようにならなくては。」
私はエアロを睨む。
「もう!エアロ!!
それなら私だって上手く淹れられないわ。
頑張ってるシーラ様に意地悪しないで!!」
シーラ様が感激したように私を見つめる。
「シルヴィ…!本当に貴女は可愛いわ!!」
エアロは、短く溜息を吐く。
「まぁ、いいです。自分で淹れようと思えるようになったのが成長ですからね。
では、お茶も入ったことですし、本題に入りましょうか?」
シーラ様は首を傾げる。
「本題?」
私は姿勢を正して、シーラ様に向き直る。
「…シーラ様。
シーラ様のお力を貸していただきたいんです。」
シーラ様は顔を強張らせる。
「…何に魔力を使えばいいの?」
私は慌てて首を横に振る。
「あ、魔力じゃないんです。」
シーラ様はポカンとする。
しばらくして、口を開いた。
「……魔力じゃない?
それ以外で私がしてあげられることなんて…。」
私はシーラ様に頭を下げた。
「シーラ様の裁縫の腕を貸していただきたいんです!!」
「裁縫?」
首を傾げるシーラ様を私はまっすぐ見つめて言う。
「えぇ!シーラ様は服作りはもちろん、ドレス作りも出来ますよね?」
「出来るけど…」
「シーラ様の作ったドレスを私の叔母の店で取り扱わせていただけないでしょうか?!」
シーラ様は目を丸くする。
「…え。私の作った物を…売るの?
…そんなの売れるかしら…?」
「売れます!絶対に売れます!!」
私は前のめり気味に訴える。
唸りながら考えるシーラ様にエアロが言う。
「ずっとマリエルからも言われていたでしょう?
王太子妃殿下やマリエルのお姉上も母上のドレスが欲しいと言っていると。」
シーラ様は俯き、髪をクルクルと弄る。
「でも…なんだか信じられなくて。
ずっと外に出てなくて、流行りも分からないし…。」
私は訴える。
「シーラ様が流行りを作り出せばいいんです!王太子妃殿下が既にシーラ様のファンなら流行りを作り出せたも同然です!!」
エアロが追い討ちをかける。
「母上もマリエルから言われて、ずっと考えてたでしょう?母上のドレスを欲しがる人にドレスを作ってあげられないかと。
でも、お店なんて開けないし、城の外に出れないから出来ないことも多い。そのあたりを代わりにやってくれる人がいれば、と。」
「そうだけど…私と一緒に仕事がしたい人なんていないわ。私は怖がられているし…。」
私は笑顔で言った。
「シーラ様!いるんです!
私の叔母です!
シーラ様のことをずっと前から聖女と呼んでいます!」
「せ、聖女?」
「母上、私も今日お会いしてきましたが、とても気さくな良い方でした。さすがシルヴィの叔母様だな、と言った方です。
私が母上の息子だと伝えても、まったく恐れることなく、美しいのも納得だと言って、笑っていました。」
「随分と変わった方なのね…。」
シーラ様は驚いた様子で呟く。
「最初のうちは私を通して、やり取りして下さって構いません。でも、きっと叔母ならシーラ様と上手くやれると思うんです。
…どうですか?考えて下さいますか?」
シーラ様は私を見ると、フフフッと笑った。
「シルヴィは凄いわね…。
私の周りを次々に変えていく。今まで狭い世界で過ごしていたのが、馬鹿らしくなるくらい。
……いいわ!私も喜んでくれる方がいるなら、ドレスを作りたいと思っていたの。前にシルヴィが叔母様の話をした時から実は気になっていたし。
私からもお願い出来るかしら。」
私とエアロは、笑顔で顔を見合わせた。
「やったー!」
私がそう叫ぶと、エアロとシーラ様も声を出して笑ってくれた。
こうしてシーラ様の作ったドレスが世に出されることとなった。
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