エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します

一色孝太郎

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第102話 焼け跡

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 証拠が全部消える? そんなことをさせてたまるか!

 消防車がないなら水を大量に降らせればいい。何もないところで火柱を上げられるんだ。水だって!

 俺は手を前に突き出し、消防車が放水する要領で手から大量の水を火災の建物にかける。だが火の勢いが収まる気配がまったくない。どうやらこの程度の水では意味がないようだ。

「リリス様……」

 ウスターシュさんが心配そうな表情で俺を見てくる。

 そうだ。まだ諦めるのは早い。きっと何か方法はあるはずだ。

 消火。消火。消火するには……。

 俺はガスコンロの火を消すときのことを思い出す。

 ガスの供給を止められれば……いやいやいや。無理だろう。あれはガスが燃えているんじゃない。建物の木材なんかが燃えているのだから、それがなくなるということはつまり燃え尽きたということだ。

 なら……ん?

 俺の目の端に、無造作に打ち捨てられている割れたランプが目に入った。

 ランプ? ……そうだ! アルコールランプ! 理科の実験で使ったあれは、たしかガラスのふたを燃えている炎に被せて火を消していたはずだ。

 そうすれば酸素とアルコールが反応できなくなって、火が消えるんだったよな?

 よし! それなら、風を操って同じことができるはずだ。

 俺は再び手を突き出し、建物全体を空気の膜で覆い、新しい空気が入ってこないようにと念じてみる。

「リリス様? 一体何を?」
「リリスちゃん?」

 二人が怪訝そうに声を掛けてくるが、たぶんこれは上手く言っているはずだ。その証拠に、火はどんどん小さくなっていき……。

「え? 嘘?」
「これは一体?」

 やがて消えた。

 ああ、良かった。上手くいった。上手く行ったのはいいのだが、なんだか、お腹が減ってきた。

 俺はあまりの空腹にがっくりと膝をついた。

「リリス様!?」
「リリスちゃん! 大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。ちょっと力を使いすぎたみたいで……」
「そうでしたか。ではやはり火が消えたのはリリス様が?」
「はい。なんとか……」
「すごーい! さすがアルテナ様の使徒ね!」
「う……それより早く捜索を」
「おっと、そうでしたな。レオニー、行くぞ」
「はーい」

 こうして俺たちは鎮火したばかりの現場に足を踏み入れるのだった。

◆◇◆

 消火に集まっていた警備隊の人たちと協力し、俺たちは焼け跡の調査をしているのだが、中にあったものはほとんど燃え尽きてしまっている。

「やはり書類はすべて燃え尽きていますね」
「すみません。消火するのが遅れたせいで……」
「そんな! リリス様のせいでは!」
「そうよ。建物が崩れてないだけでもリリスちゃんのおかげなんだから」
「はい……」

 二人はそう慰めてくれるが、火事が目に入った瞬間に消火していれば燃え残ったものがもっとあったのではないかと思ってしまうのだ。

「おや? あれは……遺体ですかね?」

 ウスターシュさんはそう言うと、隣の部屋へと入っていった。続いてレオニーさんが入っていき、俺もその後に続く。

 するとその部屋の端で、壁にもたれるように尻もちをついた黒焦げの遺体があった。

 服は燃え尽きているが、体格からして恐らく男の人だろう。逃げ遅れたのだろうか?

「む! もしや……」

 ウスターシュさんが遺体に近づき、そしておもむろに遺体の口に手を突っ込んだ。

「え? ウスターシュさん? 一体何を?」

 遺体を冒涜するなんて、と思ったのだが、ウスターシュさんは力ずくで口を開かせた。

「やはり! この男は処理業者の社長のブノワです! この金歯がその証拠です!」

 ウスターシュさんはそう言って焼死体の口の中を見せてきた。たしかに金歯が二つあるのだが、気持ち悪いので勘弁してほしい。

「わ、分かりましたから……」
「ちょっと! リーダー! リリスちゃんになんてもの見せてるんですか?」
「あ! も、申し訳ありません。ともかく、この者が処理業者の社長で間違いありません」
「え、ええと、じゃあ……」
「はい。書類もすべて燃えてしまいましたし……」

 ウスターシュさんは悔しそうに唇をんだ。

 しかしその隣でレオニーさんが何かに気付いたようで、遺体の胸元を確認し始めた。

「レオニーさん?」
「あ! やっぱり! リーダー! これ、誰かに殺されてますよ。ほら! ここ!」
「ん? おお! 本当だ! 刺殺だな」
「はい!」
「え? ええと……」

 言われればたしかに刺し傷っぽいような?

「リリス様! これは大きな手掛かりです!」
「ええと、つまり、消されたってことですか?」
「はい! 麻薬の密売組織は我々が横流しに気付いたことを知り、そこから辿たどられることを恐れてブノワを殺し、証拠書類をすべて燃やしたのです」
「な、なるほど」
「すぐに捜査をしなければ!」

 ウスターシュさんはそう言うと、消火に集まっていた警備隊の人たちに声を掛け始めるのだった。
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