悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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閑話 タイラー視点

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「タイラー殿はこちらへ」


今まで共に過ごしてきた皆が牢屋に入り、リリーアンヌも入った。僕も勿論入るんだと思っていた。


「は?どういう事?」

「付いてきて下さい」


強引にマックスに引かれ地下の牢屋から出て俺は部屋に案内された。

部屋に入れられ、直ぐに扉が開けられた。


「タイラー」


勢いよく入ってきたのは、


「伯父上」

「タイラー、タイラーは私の息子になるんだ」

「嫌だ」

「タイラー!陛下の恩情が分からないのか!これはタイラーの為なんだ」

「僕の為って言うんだったらリリーアンヌ達と一緒が良い」

「タイラー、お前はこのままだと死ぬんだぞ!分かってるのか!」

「分かってるよ」

「分かってない!どうして死に急ぐ。どうして助かる命を粗末にする」

「伯父上、僕は死に急いんでいるんじゃない。僕はリリーアンヌと一緒にいたいだけなんだ。僕の意志でリリーアンヌと共に去りたいんだ。

分かってほしいとは思っていない。だから僕の事は諦めてほしい」

「まだ学びたいと言っていただろ?」

「学ぶよりもっと大切なものが出来たんだ」

「タイラー、お前まで、なぜ……」

「父上も母上も自分の命をかけるならと心から思う人がいた。それは共にどこまでも付いていきたいと思う人だ。父上は叔父上を、母上は父上を、僕はリリーアンヌだ。その人と共に去れる事は本望だよ、伯父上」

「何を言っても無駄なのか」

「無駄だね」

「分かった。勝手にしろ。私はもう知らんからな」

「ああ、勝手にする。ありがとう伯父上」


伯父上が出て行った部屋に僕は一人残された。

僕も地下の牢屋に行きたい。リリーアンヌの、皆の側に行きたい。

それに何が恩情だ。そんなの僕は信じない。


僕は誰かが迎えに来てくれるのを待っていた。その誰かが最も会いたくない人だとは思わなかったけど。

部屋に入って来たのはアルバートだった。僕が座るソファーの向かいにアルバートは座った。


「タイラー、タイラーだけは助けてやっても良い。だから、」

「ハハハッ、助けてやっても良い?君はいつからそんなに偉くなったんだ?」

「タイラー、俺は王だ」

「フッ、威勢だけは一丁前か」

「なっ」

「いいかい、君が王でいられたのはリリーアンヌいてこそだ。この国の為に君が何をした。王として君が今も玉座に座っているのはリリーアンヌが陰ながら支えてきた結果だ。

君が王としてした事はただ一つ、

人殺しだ」

「なっ、何だと?」

「3名の貴族を殺し、31名の民を殺した人殺しだ。そしてこれから僕を含め6名加わる」

「だからタイラーだけは助けてやっても良いと言ってるだろ。

なぁタイラー、俺達は友だろ?これからも俺を支えてくれるだろ?」

「友?笑わせるな!良く!良く友だと言えたな!

友だと言うのなら、どうして!どうして友の父を殺した!どうして友の叔父を殺した!」

「それは…」

「何の罪もない人をどうして殺した!」

「それは悪かった。俺でも止められなかったんだ」

「君は王なんだろ?王が止められない事って他国が関わっているのか?他国の王が父上や叔父上を殺せと言ったのか?」

「それは、違う、が…」

「なら!なら、どうして王だと言う君が止められないんだ。

あぁ、君が王じゃないなら止められなくても仕方がないけどね」

「王は俺だ!

なぁタイラー、友の頼みだ、もう一度俺を側で支えてくれ」

「君が僕を友だと言うのなら、僕の父上を、僕の母上を、僕の叔父上を返してくれ。

生きて返してくれたらまた友になってあげても良いよ、アルバート」


僕は嘲笑ってアルバートを見た。

死んだ者を生きて返す事なんて出来る訳がない。

それに身内をアルバートに見殺しにされたのにどうして友だと思える。どうして支えないといけない。

アルバートは出来てもいない子を殺されたと言ってリリーアンヌを処刑するつもりだ。


「ねぇ、アルバート、アルバートの側で支えてあげても良いよ」

「本当か」

「リリーアンヌを処刑しないならね」

「それは出来ない。俺の子を殺したんだぞ」

「おかしなことを言うね。僕とリリーアンヌの父親を殺したのはアルバートだ。子でも親でも同じ身内には変わらない」

「俺の子は王族だ」

「叔父上だって王族だろ?王弟殿下の息子で王位継承権を持っていた」

「破棄し公爵だ」

「それでもライアンはまだ王位継承権を持ってる。公爵だとしても王位継承権を持つ以上、王族と何ら変わりはない。

君は王族の父を今度は姉を殺す。リリーアンヌはライアンの姉だよ」

「タイラー!」

「僕は許さない。絶対に君を許さない。君を友となんて呼びたくないし言いたくない。と言うより、王とも思いたくないね。こんな愚王がこの国の王なんて恥でしかない。

君さ、王をグレイソンかライアンに譲ったら?君には荷が重すぎたんだよ」

「何だと」

「誰かの支えがないと王として出来ないんだろ?あぁ、今はあのフォスター公爵が側で支えてくれるんだったね。

フッ、だから君は愚王になっていったんだ。正しい道に導かれないから。導かれないと君は進めないもんね。

君が皆から何て言われているか教えてあげようか?

フォスター公爵の操り人形。

フッ、そのまんま過ぎて笑えないけどね」

「もう良い!お前も処刑だ!」

「端からそのつもりだ」


僕はアルバートを睨んだ。

僕の大切な人を次から次へと奪うこの男が

友?

敵の間違いだろ?



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