私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ

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31 幸せ

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街で伯父様と食事をしていたらガラン様がお店に入って来た。


「少しハンナをお借りしてもいいだろうか」


伯父様は頷き、ガラン様に手を引かれ噴水広場の椅子に座る。


「どうするか決めたか?」

「はい、一度国へ帰ろうと思います」

「そうか、決めたか」

「ガラン様」

「ん?」


私はガラン様と向かい合った。


「離れても変わらぬ思いが続いたのなら、いつか、いつか私を迎えに来てくれますか?」

「ああ、必ず」

「伯父様と伯母様の愛情の中で一度暮らしてみたいんです。親の愛情というものを、今後自分が親になれた時に、その時の為に知っておきたいんです。

ガラン様が迎えに来てくれるその時まで私は伯父様と伯母様に沢山甘えたいと思います」

「そうしろ」


ガラン様は笑顔で私の頭を撫でた。


私は伯父様と一緒に国へ帰って行き、私を迎えてくれた伯母様。玄関の前でずっと待っていてくれた伯母様は涙を流し私を抱きしめた。

それから私は伯父様と伯母様、いとこのお兄様家族と一緒に暮らしている。嫁いだお姉様家族とも仲良くしている。この前は泊まりに行きお姉様と朝まで話をした。

それから伯母様と一緒に街へ行った時フェインを見かけた。街の騎士団で騎士として働いているフェインを見て憎しみよりも懐かしさを感じた。

元気に暮らしているのなら、それでいい。

幼い頃から見ていたあの笑顔が今も同じ笑顔で良かったと思った。あの笑顔に何度助けられ支えてもらったか…。辛く悲しい日々を何度忘れさせてもらったか…。

だからこそ思う。

ただ私とフェインの縁が繋がらなかっただけだと。



1年後


「ハンナ」


伯父様の呼ぶ声に私は部屋から1階へ下りた。

階段を下りた先


「ガラン様」

「ハンナ迎えに来たぞ」


私はガラン様に駆け寄り抱きついた。


「ありがとうございます」

「もっと早く来たかったんだが、あいつが1年は待てと言ってな。1年でも少ないかもしれないが親の愛情を沢山貰えってな」


本当に国王陛下と仲が良いのね。


「後、こんな男だが幸せにしてほしいと言っていたんだが幸せにするのは俺だ」

「いいえ、私がガラン様を幸せにします。

伯父様と伯母様と過ごした時間は短い時間でしたが私も沢山甘え愛情も沢山貰えました。伯父様と伯母様は私の父と母です」

「お前の顔を見ていると分かる。良い時間が過ごせたんだな」

「はい」

「ハンナ、前にお前が言っていただろ。愛に裏切られる運命だと。だから俺がお前の運命を変えてやる。親の愛情とは違う裏切らない愛を教えてやる。

俺がハンナに俺の鎖をつなぐ。俺は愛し方を知らない。誰かに愛された事も誰かを愛した事もないからな。

ただ、覚悟はしてくれ。俺にとってハンナは唯一のものだ。俺が望んだ俺だけのものは今までなかった。それを手にした時、俺は重いぞ。それでも俺の鎖に繋がれてくれるか?

俺と結婚してほしい」


そう言うとガラン様は私の首にネックレスを付けた。


「まだ答えていませんよ?」

「逃したくなかったんでな」

「ふふっ、ガラン様らしいです」

「で?」

「ガラン様の奥さんにして下さい」


ガラン様は伯父様と伯母様に結婚の許しを貰い、1年後結婚式を挙げた。



この1年、それはもう大変だった。

伯母様は大急ぎで花嫁衣装を作り、

それも大変だった。採寸からデザイン、そして布選び、お針子さん達には感謝しかない。

宝石もあれもこれもと…。

『何かあった時に売れるんだから持って行きなさい』

ガラン様は王族の血筋といっても本人は平民だと言う。暮らす家も平民らしい家。それに使用人は雇わないでとお願いした。

私はやっぱり動いていた方が性にあってるとつくづくそう思った。侯爵家には使用人が大勢いる。私にもメイドが付いた。朝起きれば何もかも準備されていて、掃除も洗濯もそれにご飯だって準備されている。

庭を歩けば数歩後を付いてくる。部屋で本を読んでいたら部屋の隅に立ち頃合いを見て飲み物を出してくれる。

貴族令嬢としては当たり前の光景でも私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

でもその分伯母様と話したり刺繍を一緒にしたり、お兄様の奥様とも仲良くなれ子供達とも一緒に遊んだ。

ご飯だって急いで食べなくていいし一人で食べなくてもいい。皆で食べるご飯は本当に美味しかった。話し笑い、家族ってこんなに幸せになれるんだと初めて知れた。


隣国へ向かう日が近づくにつれ甥っ子や姪っ子は『寂しい』と泣いてしまう。

それに伯母様も


「はぁ…」


出来上がった花嫁衣装を前に溜息をつく。


「ハンナ、今ならまだ間に合うわ。やっぱり結婚はやめましょ。ずっとここで暮らしましょ。ようやくハンナを娘に出来たのにもうお嫁に行くなんて…。

でも私も分かっているのよ?ハンナの幸せを私も願っているの。ガラン様が良い人だと私も知ってるわ。ハンナを幸せにしてくれる事も。

でも…、心配なの。隣国よ?何かあって直ぐに助けてあげられないのよ?直ぐに駆け付ける事も出来ないのよ?

それを思うと…心配で心配で…」


伯母様の心配は私も分かる。私だって伯父様や伯母様が元気にしているか、もし何かあった時直ぐに駆け付けれる距離じゃない。


「でも駄目ね、娘の幸せを願うのが母親だわ。でもいつでも帰って来ていいのよ?ここは貴女の家なんだから」


伯母様は私を抱きしめた。

伯父様は毎日頭を撫でてくれる。伯母様は毎日抱きしめてくれる。お兄様はいつも見守ってくれる。お姉様は誰にも聞けない事を教えてくれる。それに女同士の話は楽しいの。



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