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しおりを挟む「はぁぁ」
「はぁぁ」
図書室で黄昏さんと同時にため息をつく。
「どうしたんだ?」
「そちらこそどうしたんです?」
「元婚約者がな…」
「そちらも?」
「お前もか?」
「はい、元婚約者が色々と…」
「「はぁぁ」」
また同時にため息をついた。
「聞いてくれます!」
「あ、ああ」
「婚約破棄したときに念書を書いて貰ったんですよ?何があっても婚約者に戻らないって!それなのに「また婚約者になってやるって」って毎日付きまとわれて大変なんです。なってやるですよ?なってやる!どれだけ上から目線なんだ!って話ですよ。
それに「嫌いだ」って言ってるのに「嘘つくな」とか「本当は好きなんだろ」って全く人の話を聞いてくれないんです!大嫌いだってこっちは思ってるのに!」
「大変だな」
「そうなんです!もう毎日毎日しつこくて顔も見たくないんです。
で、そちらは?」
「俺ももう一度婚約しようと言われた」
「良かったじゃないですか」
「良くないだろ!毎日好き好き言われるのも可愛いって言われるのも言葉が軽すぎて好きな男を信じられないらしい。それに爵位が下過ぎて自分とは不釣り合いだとさ」
「元婚約者さんって、」
「侯爵令嬢だ。でその男は男爵令息だ」
「確かに下ですね」
「俺なら伯爵だし許せる範囲らしい」
「それは、また…」
「でだ、毎日一回好きと可愛いを言ってくれれば嫁になっても良いと言われた」
「好きや可愛いくらい言ってあげればいいじゃないですか。可愛いと思っていたんですよね?」
「好きじゃないのに好きって言えるか!それに前は可愛いと思っていたが今はどこが可愛いのか全く分からない」
「そちらも大変ですね」
「どうすれば良い」
「早く新しい婚約者を探すしかないですね。そしたら諦めますよ」
「諦めると思うか?」
「流石に新しい婚約者ができて元婚約者さんが元に戻りたいと言っても貴族の令嬢ですよね?家と家の繋がりが第一の貴族で元婚約者さんが何を言っても覆りませんし、元婚約者さんが反感を買うので大人しくなると思いますよ?
次の婚約者が見つからなかったらその方が惨めですもの」
「そうか」
「女性は嫁ぎ先がないと肩身の狭い思いをしますから」
「お前は?」
「私は結婚できないならできないでお父様の商会の手伝いをするので大丈夫です。弟に迷惑をかけないように生活します」
「そうか。元婚約者はどうする」
「元婚約者に婚約者ができるまでだと諦めます。一度した事はどうせまたしますから婚約者に戻ることだけはありえません」
「元婚約者が図に乗ったらどうする?お前は自分を好きだから婚約者を作らないと自分の良いように考えたらどうするんだ」
「そんな事考えます?」
「お前の元婚約者を知らないから何とも言えないが」
「それは考え過ぎですよ。そこまでバカじゃないと思います」
と黄昏さんと話していたのが昨日、
「アイラ迎えに来てやったぞ。嬉しいだろ?」
朝家を出ようとしたらもう馬車が止まっていた。
「婚約者でもないのに結構です」
「そんな事言うなよ」
無理矢理馬車に乗せられ、
「ちょ、ちょっと!やめてください!迷惑料を請求しますよ!」
「アイラはそうやって俺の気を引きたいんだろ?あ~、分かってる、皆まで言うな!素直になれない所もアイラらしいな」
「はあ!?」
「今のアイラはやっぱり良いな!好きだぞ。俺に好きになってほしくて頑張ったんだもんな。そんなアイラが俺はいじらしいよ。
待ってろよアイラ、早く婚約し直そうな?」
マシュー様はバカだった…。
「結構です!」
「はあぁぁ、可愛い…、俺の婚約者、かわいい…」
気持ち悪いんだけど!
目も合わせなくないし、同じ空間にいるのも嫌だ。早く学園に着いて!!
学園に着いたから私は自分から扉を開けて外に出た。淑女はどうした!と言われても今はそんな事よりいち早く馬車を降りたい。
馬車を降りた私は教室を目指そうと、
「アイラ!待てよ!」
マシュー様の大きな声が響いた。
おまけに今は入れ代わり立ち代わり馬車が止まり、皆が学園に来る時間。
勿論皆の視線が注目する。
先を歩く私の手を掴み、マシュー様はプロポーズさながら片膝をついた。
「アイラ愛してる。もう浮気はしない、約束する。ここにいる皆が証人だ。
もう一度婚約をしてほしい。返事はお願いしますしか聞かない」
「嫌です」
「ん?ごめん、嫌と聞こえたが俺の聞き間違いだと思う。もう一度言ってくれないか?」
「何度でも言います。嫌です。私はマシュー様が大嫌いです!だから婚約は絶対にしません!
では、ご機嫌よう」
私はマシュー様に掴まれた手を振りほどき教室に向かった。
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