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――翌日、午後一時。
昼食を食べたあと、外で遊んでくると葵に行って出かけた沖長は、散歩がてら新たな回収物を目指して街中を見回っていた。
道を行けば、様々なものに目が向かう。石ころや雑草なども随時〝回収〟していく。石ころはともかく、雑草の中には口にできるものもあるし手に入れておいて損ではない。一度手にすればリストのテキストを確認すれば、対象の正体も掴めるので本当に便利だ。
そのまま土手がある方へ向かう。そこならさらに食べられる野草があるはず。
土手に上がり、その先の河原に視線を向ける。あちこちに野草が生えていて、今の沖長にとっては宝物に見えた。
土手を降りていき、他人に見つからないように野草を頂戴していく。またゴミなども捨てられていたので、せっかくだからとそれも処分するために〝回収〟しておいた。
「いやぁ~、いい仕事したなぁ」
ひとしきり目ぼしい野草をゲットして河原の方へ出て「ん?」となる。
視線の先には、河原の近くで寂しそうに座っている一人の少女がいたからだ。歳は沖長とそう変わらない。また気になったのは、何故か道着らしきものを着用していたこと。柔道着か空手着なのかは分からないが。ただ帯は白いので、初心者なのかもしれない。
(何だあの子……物凄い哀愁が漂ってるんですけど……?)
まるで疲れ切った中年サラリーマンのような背中。表情はさすがに中年のそれではないが、それでも明らかに意気消沈している様子だ。
親に怒られて家出でもしてきたのだろうかと思っていると……。
「――やっぱここにいたか、ナクル!」
突然現れたのは日差しを浴びてキラキラと輝く銀髪をした同年代の少年。
(え? 銀髪……外国人?)
一瞬そう思うほどに外国製の整った顔立ちをしている。きっと成長すれば極上のイケメンの出来上がりだろう。
名前らしきものを読んだということは知り合いなのかと思ったが……。
「え……だ、だれッスか?」
少女の困惑する様子を見ると、どうもそうではないようだ。
さらに――。
「おい、そこのお前! 俺のナクルに近づくな!」
また一人の同年代の少年が現れた。しかもこの子も赤髪でオールバックという日本の子供らしさの欠片もない髪型をしていて、銀髪少年と負けず劣らずのイケメンだ。
俺のナクルと言った手前、こちらは本当に知り合いかと思った矢先……。
「し、しらない子がふえたッス……」
もうどういうわけか分からないが、また見知らぬ人物だったようだ。
「はあ!? 誰がお前のナクルだよ! ナクルは俺のものだ!」
「黙れよ! ナクルは俺の嫁の一人になるんだ! 邪魔するな!」
二人が互いに掴み合って視線で火花を散らす。
(…………どういう状況なの?)
突然現れた超絶イケメン二人が、一人の少女を取り合っているが、その当人は初対面らしい。
「し、しらない子たちが、ぼくのなまえをよんでるッスよぉ……」
それはとても怖いよねと、思わず震える少女に同情してしまう。
沖長だったらそんなストーカー野郎どもからさっさと逃げるが、少女は恐怖に慄いているのか徐々に後ずさっているだけ。
しかしその状況はとてもよろしくなかった。何故なら少女のすぐ背後は河が流れている。そのままドボンということになったら大変だ。ここの河はそれなりに流れもあるし水深もあるから夏でも遊泳は禁止されている。
二人の少年はいまだに睨み合っていて、少女の危険に気づいていない。
するとその内の一人――赤髪が、あろうことかもう金髪の顔面を殴り飛ばしてしまったのだ。
それに驚いた少女は、「ひゃっ!?」と声を上げてさらに大きく後ずさった。そこで恐れていた事態が起きる。一歩後ろに踏み出した足の先、そこには大きめの歪な形をした石があり、それを踏んだことで石はガクッと傾いて少女のバランスを崩してしまったのである。
その結果、大きく後ろによろめいた少女は、そのまま河へと吸い込まれていき、少女もまた覚悟したように目を閉じた……が、少女の動きがそこでピタッと止まる。
「ふぅ~、ギリギリセーフ」
寸でのところで少女の手を掴んで落下を防いだのは沖長だ。
少女も瞼を上げて自分が助かったことに気づいた様子だが、いまだに思考がストップしているようで呆気にとられている。
そんな少女を引っ張り上げて河から少し距離を取ってから手を離す。すると少女は目をパチパチと開閉しながらもジッとこちらを見つめていた。
「怪我はない?」
そう聞くと、ようやくハッとした少女が「は、はいっす!」と返事をしてくれたので安堵する。とにかく危機一髪間に合って良かったと思っていると……。
「おいてめえ! いきなり現れて俺のナクルに近づいてんじゃねえぞ!」
背後から聞こえた声。先ほど金髪少年を殴り飛ばした赤髪の少年が沖長に怒りを露わにしていた。対して金髪少年は気絶しているのか横たわったままだ。
「えっと……ちょっと落ち着いたら? 君たちのせいでこの子がビックリして危なかったんだからさ」
「うるせえ! そんなことよりさっさとナクルから離れやがれ!」
言うに事欠いてそんなことよりと言ってきた。
(コイツ、この子が好きなんじゃないの? それなのに自分たちのせいで危ない目に遭ったことをそんなことって……)
恐らく噛み砕いて注意しても話を聞く輩ではなさそうだ。何せ簡単に暴力を振るえるような奴だから。
そう思っていると、今度は沖長を殴り飛ばそうと詰め寄ってきた。
「てめえみてえなモブが、俺みたいな選ばれた主役に逆らうんじゃねえよ!」
何だかよく分からないことをほざきながら突っ込んでくるが、その直後にその場から一瞬にして消えた。
当然その状況に少女は「ふえぇぇぇっ!?」と愕然としているが、沖長は少女の手を掴むと、
「ここから離れた方が良いよ。行こう」
そう言うと、少女も若干戸惑いつつも「は、はいっす」と答えてついてきてくれた。
昼食を食べたあと、外で遊んでくると葵に行って出かけた沖長は、散歩がてら新たな回収物を目指して街中を見回っていた。
道を行けば、様々なものに目が向かう。石ころや雑草なども随時〝回収〟していく。石ころはともかく、雑草の中には口にできるものもあるし手に入れておいて損ではない。一度手にすればリストのテキストを確認すれば、対象の正体も掴めるので本当に便利だ。
そのまま土手がある方へ向かう。そこならさらに食べられる野草があるはず。
土手に上がり、その先の河原に視線を向ける。あちこちに野草が生えていて、今の沖長にとっては宝物に見えた。
土手を降りていき、他人に見つからないように野草を頂戴していく。またゴミなども捨てられていたので、せっかくだからとそれも処分するために〝回収〟しておいた。
「いやぁ~、いい仕事したなぁ」
ひとしきり目ぼしい野草をゲットして河原の方へ出て「ん?」となる。
視線の先には、河原の近くで寂しそうに座っている一人の少女がいたからだ。歳は沖長とそう変わらない。また気になったのは、何故か道着らしきものを着用していたこと。柔道着か空手着なのかは分からないが。ただ帯は白いので、初心者なのかもしれない。
(何だあの子……物凄い哀愁が漂ってるんですけど……?)
まるで疲れ切った中年サラリーマンのような背中。表情はさすがに中年のそれではないが、それでも明らかに意気消沈している様子だ。
親に怒られて家出でもしてきたのだろうかと思っていると……。
「――やっぱここにいたか、ナクル!」
突然現れたのは日差しを浴びてキラキラと輝く銀髪をした同年代の少年。
(え? 銀髪……外国人?)
一瞬そう思うほどに外国製の整った顔立ちをしている。きっと成長すれば極上のイケメンの出来上がりだろう。
名前らしきものを読んだということは知り合いなのかと思ったが……。
「え……だ、だれッスか?」
少女の困惑する様子を見ると、どうもそうではないようだ。
さらに――。
「おい、そこのお前! 俺のナクルに近づくな!」
また一人の同年代の少年が現れた。しかもこの子も赤髪でオールバックという日本の子供らしさの欠片もない髪型をしていて、銀髪少年と負けず劣らずのイケメンだ。
俺のナクルと言った手前、こちらは本当に知り合いかと思った矢先……。
「し、しらない子がふえたッス……」
もうどういうわけか分からないが、また見知らぬ人物だったようだ。
「はあ!? 誰がお前のナクルだよ! ナクルは俺のものだ!」
「黙れよ! ナクルは俺の嫁の一人になるんだ! 邪魔するな!」
二人が互いに掴み合って視線で火花を散らす。
(…………どういう状況なの?)
突然現れた超絶イケメン二人が、一人の少女を取り合っているが、その当人は初対面らしい。
「し、しらない子たちが、ぼくのなまえをよんでるッスよぉ……」
それはとても怖いよねと、思わず震える少女に同情してしまう。
沖長だったらそんなストーカー野郎どもからさっさと逃げるが、少女は恐怖に慄いているのか徐々に後ずさっているだけ。
しかしその状況はとてもよろしくなかった。何故なら少女のすぐ背後は河が流れている。そのままドボンということになったら大変だ。ここの河はそれなりに流れもあるし水深もあるから夏でも遊泳は禁止されている。
二人の少年はいまだに睨み合っていて、少女の危険に気づいていない。
するとその内の一人――赤髪が、あろうことかもう金髪の顔面を殴り飛ばしてしまったのだ。
それに驚いた少女は、「ひゃっ!?」と声を上げてさらに大きく後ずさった。そこで恐れていた事態が起きる。一歩後ろに踏み出した足の先、そこには大きめの歪な形をした石があり、それを踏んだことで石はガクッと傾いて少女のバランスを崩してしまったのである。
その結果、大きく後ろによろめいた少女は、そのまま河へと吸い込まれていき、少女もまた覚悟したように目を閉じた……が、少女の動きがそこでピタッと止まる。
「ふぅ~、ギリギリセーフ」
寸でのところで少女の手を掴んで落下を防いだのは沖長だ。
少女も瞼を上げて自分が助かったことに気づいた様子だが、いまだに思考がストップしているようで呆気にとられている。
そんな少女を引っ張り上げて河から少し距離を取ってから手を離す。すると少女は目をパチパチと開閉しながらもジッとこちらを見つめていた。
「怪我はない?」
そう聞くと、ようやくハッとした少女が「は、はいっす!」と返事をしてくれたので安堵する。とにかく危機一髪間に合って良かったと思っていると……。
「おいてめえ! いきなり現れて俺のナクルに近づいてんじゃねえぞ!」
背後から聞こえた声。先ほど金髪少年を殴り飛ばした赤髪の少年が沖長に怒りを露わにしていた。対して金髪少年は気絶しているのか横たわったままだ。
「えっと……ちょっと落ち着いたら? 君たちのせいでこの子がビックリして危なかったんだからさ」
「うるせえ! そんなことよりさっさとナクルから離れやがれ!」
言うに事欠いてそんなことよりと言ってきた。
(コイツ、この子が好きなんじゃないの? それなのに自分たちのせいで危ない目に遭ったことをそんなことって……)
恐らく噛み砕いて注意しても話を聞く輩ではなさそうだ。何せ簡単に暴力を振るえるような奴だから。
そう思っていると、今度は沖長を殴り飛ばそうと詰め寄ってきた。
「てめえみてえなモブが、俺みたいな選ばれた主役に逆らうんじゃねえよ!」
何だかよく分からないことをほざきながら突っ込んでくるが、その直後にその場から一瞬にして消えた。
当然その状況に少女は「ふえぇぇぇっ!?」と愕然としているが、沖長は少女の手を掴むと、
「ここから離れた方が良いよ。行こう」
そう言うと、少女も若干戸惑いつつも「は、はいっす」と答えてついてきてくれた。
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