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「「「「おおぉっ!」」」」
沖長のシュートを見ていた野次馬たちが湧く。
「すっごい! かっこいいッスよぉー、オキくぅん!」
ナクルやその友達もまた喜びの声を上げている。
対して武太たちの方を見ると、武太は不機嫌そうに顔を歪め、残りの二人は信じられないといった感じで固まっている。
(何とか上手く行ったな)
単純な作戦だったが、あちらが思惑通りに動いてくれてホッとした。
「おい札月、今のは俺がいたからの得点だからな! それを忘れるなよ!」
「ああ、さすがは俺たちのリーダーだ。助かったよ」
「そ、そっか! よし、分かってりゃいいんだ分かってりゃ!」
素直にこちらが認めたことが意外だったのか、それでも悪い気はしていないようで頬が若干緩んでいる。コイツもコイツで単純だ。
機嫌よくした銀河は、ナクルに手を振ってアピールしている。ナクルも頬を引き攣らせながら一応は手を振り返していた。
「……君、少しはやるじゃないか」
そこへ声をかけてきたのは助っ人少年である。
「あの単純バカにわざと突っ込ませ、また暴走したと相手に思い込ませる。けどそこで今までパスをしなかったアイツがパスを出すことによって虚を突く。まあ、ありきたりな攻撃手段ではあったよ。実際に相手も警戒してたから僕への対処も間に合ったしね」
少年の言う通り、そこまでは上級生たちも読めていたことだった。しかしここからさらに二段階の罠があったのである。
沖長は、少年に対してこう言ったのだ。
『シュートする時はできるだけ高く、それでいて相手がジャンプしたら届く程度の高さに投げてほしい』
それはもし相手がこちらの策の前段階に気づいた時に、少年へ出した要求だった。
実際に上級生たちは、前段階を看破して少年のシュートを弾いたのである。
「けれど君は、ボールが弾かれた先にいた。そこに飛んでくるって分かってたからこその動きだよね。どうして?」
「あー別に難しいことじゃないぞ。ただ単にこれまでの動きから推測しただけだしな」
「どういうことかな?」
「あの上級生の二人、どうも二人とも左利きらしくてな」
「それは僕も分かってた。シュートをしているところを見ているし」
「ん、けどもう一つ、アイツらは金剛寺のシュートを弾く時に、決まって左手で似たような場所に弾いてたんだよ」
恐らくはそれがアイツらの癖だ。それを沖長は観察していた間に覚えていた。
「!? ……なるほど、そこまでは見ていなかったよ」
少年の沖長を見る目に、今まではどこか見下した感のようなものを含ませていたが、今は感心した様子の輝きを宿していた。同時に何故か警戒心を強くさせる。
少年はナクルの方をチラリと見ると、すぐにまた沖長を見て思案顔をした。しかしそれはすぐに一人の怒号によって変わる。
「てめえらなぁ! あんなチビガキどもに何やられてんだよぉっ!」
「「ご、ごめんっ!」」
見れば武太の前で、彼の仲間の二人が委縮しながら謝っていた。
「あと一回だぞ! あと一回でこっちの負けだ! いいかぁ、あんなガキどもに俺らがやられたら良い笑い者じゃねえかぁ!」
それが嫌なら最初から自分も動けばいいのにと思うが、ああいう自尊心と虚栄心の塊のような奴は、基本的に高みの見物をして下の者に働かせる。にもかかわらず、追い詰められたら自分を棚に上げて下の者を怒鳴り散らす。
流行りの小説などに出てくる悪徳領主や外道な賊の頭に、あんな性格が多かった。
「もういい! てめえら、分かってんな?」
明確な指示を出したわけではないが、武太の仲間たちは理解したように固い表情のまま頷いた。
そして次の試合が始まり、今度は相手ボールからだ。
始まると同時に武太にゴールが渡ると、我先にと銀河がボールを奪おうと接近していく。しかし武太は突っ込んでくる銀河に怯むことなく、そのまま真っ直ぐゴール下へと向かう。その先に銀河という障害物がいるというのにだ、
銀河はボールを奪おうと手を伸ばすが、あろうことか武太がそのまま体当たりして銀河をフッとばしてしまった。
「んぁ? ああ、悪い悪い。いたのか?」
まるで気づかなかったと言わんばかりに、銀河を見下ろす武太。そしてフリーになった彼はそのままシュートをしてゴールを奪った。
「おい金剛寺、大丈夫か!」
吹き飛んで尻もちをついている銀河に駆け寄る沖長。だがこちらの言葉に応える前に、彼は立ち上がって武太に向かって叫ぶ。
「おいてめえ! 今のファールじゃねえのかよ!」
「ああん? ここはストリートだぜ? あれくらいは普通だ。それよりも何だ? 自分は弱くて小せぇから手加減してほしいっていうお願い事かぁ? じゃあ土下座したら考えてやるよぉ」
どうやら銀河の性格を、短時間で把握したようで、明らかに挑発的な言葉だった。
「ぐっ……じょ、上等だ! さっさとボールを寄こせ! 今度はこっちのターンだろ!」
また頭に血が上ってしまっている。このままではまた餌食にされると思い、「落ち着け」と沖長が声をかけた。
「っ……俺は冷静だっつーんだよ!」
どこがだとツッコミたくなるほどに熱されている。彼は言うことも聞かずに、ボールを持って開始位置まで向かった。
そしてすぐに試合が始まるが――。
「なっ!? ぐっ、痛えっ! てめえら、何を――っ!?」
即座に銀河に接近したのは武太の仲間二人。いわゆるダブルチームでのマークだ。ただ、必要以上にベッタリと近づき、二人のその身体で銀河が見え辛くなっている。
すると銀河が突然痛みを訴えてきた。何をされているのか分からないが、一瞬のうちにボールを奪われてまたゴールされてしまったのである。
沖長のシュートを見ていた野次馬たちが湧く。
「すっごい! かっこいいッスよぉー、オキくぅん!」
ナクルやその友達もまた喜びの声を上げている。
対して武太たちの方を見ると、武太は不機嫌そうに顔を歪め、残りの二人は信じられないといった感じで固まっている。
(何とか上手く行ったな)
単純な作戦だったが、あちらが思惑通りに動いてくれてホッとした。
「おい札月、今のは俺がいたからの得点だからな! それを忘れるなよ!」
「ああ、さすがは俺たちのリーダーだ。助かったよ」
「そ、そっか! よし、分かってりゃいいんだ分かってりゃ!」
素直にこちらが認めたことが意外だったのか、それでも悪い気はしていないようで頬が若干緩んでいる。コイツもコイツで単純だ。
機嫌よくした銀河は、ナクルに手を振ってアピールしている。ナクルも頬を引き攣らせながら一応は手を振り返していた。
「……君、少しはやるじゃないか」
そこへ声をかけてきたのは助っ人少年である。
「あの単純バカにわざと突っ込ませ、また暴走したと相手に思い込ませる。けどそこで今までパスをしなかったアイツがパスを出すことによって虚を突く。まあ、ありきたりな攻撃手段ではあったよ。実際に相手も警戒してたから僕への対処も間に合ったしね」
少年の言う通り、そこまでは上級生たちも読めていたことだった。しかしここからさらに二段階の罠があったのである。
沖長は、少年に対してこう言ったのだ。
『シュートする時はできるだけ高く、それでいて相手がジャンプしたら届く程度の高さに投げてほしい』
それはもし相手がこちらの策の前段階に気づいた時に、少年へ出した要求だった。
実際に上級生たちは、前段階を看破して少年のシュートを弾いたのである。
「けれど君は、ボールが弾かれた先にいた。そこに飛んでくるって分かってたからこその動きだよね。どうして?」
「あー別に難しいことじゃないぞ。ただ単にこれまでの動きから推測しただけだしな」
「どういうことかな?」
「あの上級生の二人、どうも二人とも左利きらしくてな」
「それは僕も分かってた。シュートをしているところを見ているし」
「ん、けどもう一つ、アイツらは金剛寺のシュートを弾く時に、決まって左手で似たような場所に弾いてたんだよ」
恐らくはそれがアイツらの癖だ。それを沖長は観察していた間に覚えていた。
「!? ……なるほど、そこまでは見ていなかったよ」
少年の沖長を見る目に、今まではどこか見下した感のようなものを含ませていたが、今は感心した様子の輝きを宿していた。同時に何故か警戒心を強くさせる。
少年はナクルの方をチラリと見ると、すぐにまた沖長を見て思案顔をした。しかしそれはすぐに一人の怒号によって変わる。
「てめえらなぁ! あんなチビガキどもに何やられてんだよぉっ!」
「「ご、ごめんっ!」」
見れば武太の前で、彼の仲間の二人が委縮しながら謝っていた。
「あと一回だぞ! あと一回でこっちの負けだ! いいかぁ、あんなガキどもに俺らがやられたら良い笑い者じゃねえかぁ!」
それが嫌なら最初から自分も動けばいいのにと思うが、ああいう自尊心と虚栄心の塊のような奴は、基本的に高みの見物をして下の者に働かせる。にもかかわらず、追い詰められたら自分を棚に上げて下の者を怒鳴り散らす。
流行りの小説などに出てくる悪徳領主や外道な賊の頭に、あんな性格が多かった。
「もういい! てめえら、分かってんな?」
明確な指示を出したわけではないが、武太の仲間たちは理解したように固い表情のまま頷いた。
そして次の試合が始まり、今度は相手ボールからだ。
始まると同時に武太にゴールが渡ると、我先にと銀河がボールを奪おうと接近していく。しかし武太は突っ込んでくる銀河に怯むことなく、そのまま真っ直ぐゴール下へと向かう。その先に銀河という障害物がいるというのにだ、
銀河はボールを奪おうと手を伸ばすが、あろうことか武太がそのまま体当たりして銀河をフッとばしてしまった。
「んぁ? ああ、悪い悪い。いたのか?」
まるで気づかなかったと言わんばかりに、銀河を見下ろす武太。そしてフリーになった彼はそのままシュートをしてゴールを奪った。
「おい金剛寺、大丈夫か!」
吹き飛んで尻もちをついている銀河に駆け寄る沖長。だがこちらの言葉に応える前に、彼は立ち上がって武太に向かって叫ぶ。
「おいてめえ! 今のファールじゃねえのかよ!」
「ああん? ここはストリートだぜ? あれくらいは普通だ。それよりも何だ? 自分は弱くて小せぇから手加減してほしいっていうお願い事かぁ? じゃあ土下座したら考えてやるよぉ」
どうやら銀河の性格を、短時間で把握したようで、明らかに挑発的な言葉だった。
「ぐっ……じょ、上等だ! さっさとボールを寄こせ! 今度はこっちのターンだろ!」
また頭に血が上ってしまっている。このままではまた餌食にされると思い、「落ち着け」と沖長が声をかけた。
「っ……俺は冷静だっつーんだよ!」
どこがだとツッコミたくなるほどに熱されている。彼は言うことも聞かずに、ボールを持って開始位置まで向かった。
そしてすぐに試合が始まるが――。
「なっ!? ぐっ、痛えっ! てめえら、何を――っ!?」
即座に銀河に接近したのは武太の仲間二人。いわゆるダブルチームでのマークだ。ただ、必要以上にベッタリと近づき、二人のその身体で銀河が見え辛くなっている。
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