57 / 258
56
しおりを挟む
できるなら今の自分の力がどこまで通じるのか、相手の特異性などを事細かに調べたいところだが、いかんせん時間が無い。ここは即時殲滅をしてさっさとナクルを探し出す必要があるのだ。
すると妖魔が再びこちらに向かって飛び込んできた――が、今度は避けることはしない。すでに沖長の攻撃は〝終わっている〟からだ。
妖魔が不意に自身の頭上に意識を向けた。そしてギョッとしたような反応を見せる。
それもそのはずだ。そこには先ほど何もなかったはずなのに、突然巨大な岩の塊が浮いているのだ。しかもそれが重力に従って落下してくる。
そのまま岩は直下にいる妖魔を押し潰し、その光景をジッと沖長が見つめていた。そして完全に倒したようで、何の動きもないことを確認しホッと息を吐く。
突然出現した大岩は、当然沖長がもたらしたものだ。以前学校で山にハイキング、つまり遠足で行った時に発見した大岩を回収しておいたのだ。この大きさなら盾としても使えるし、今みたいに少し上空に出現させて対象を押し潰すこともできると考えてのこと。
やはり回収しておいて正解だったようだ。
「よし、あとはナクルを――」
再びナクルの捜索を続けようとした直後、少し離れた場所から爆発音が轟いた。
「あっちか!」
すぐさま全速力で向かうと、その先に確かに自分が求めていた人物がいるのを発見する。
しかし安堵しているのも束の間、空に浮かぶ槍のようなものがナクルへと迫ってくのを目にした。ナクルは腰を抜かしているのか、その場から動けないでいる。
このままではあの槍にナクルが貫かれてしまう。
ただ、〝原作〟を守るのならば、そのまま放置するのが正しい。アレでナクルが死ぬことはないからだ。しかしそれはあくまでも創作での話。
大切な妹分が、死なないとしても痛い思いをすると分かって見守ることなど沖長にできるわけがなかった。
故に――。
「――回収っ!」
電光石火のごとくナクルの前に辿り着いた沖長。その目前に迫って来ていた黒い槍が一瞬にして消失した。
(よし、回収できたぞ!)
実は半信半疑でもあった。明らかに普通ではなさそうな物体を取り込めるかどうかは不安だったのである。しかしこれで自分の力が不可思議な対象にも通じることが確定した。
「!? ……オ、オキ……くん?」
「ったく、ナクル。一人でこんなとこに来ちゃダメじゃないか」
「オ、オキくぅぅぅんっ!」
沖長の姿を見て安心したのか、背に飛びついて泣きじゃくる。そんな彼女の頭をそっと撫でてやる。余程怖かったようでしがみつく力がとても強い。ちょっと息がしにくくなるほどに。
「もう大丈夫だ。絶対に守ってやるからな」
その言葉でホッとしたのか、ナクルの力が少し弱まる。だがそこへ、またも中に浮かんでいる槍が飛んできた。
「!? ――回収」
すぐさま沖長のテリトリーに入ってきた槍を回収する。
そして沖長は、改めて警戒度を最大限にしながら口を開く。
「……さっきから自分のしてることが分かってるんですか?」
沖長の視線が、当たり前のように宙に浮かんでいる〝存在〟へと向かう。
「答えてください――――蔦絵さんっ!」
そう、そこにいたのは自分もまた良く知っている。いや、知っているどころではない。これまで四年もの間、師範代として慕ってきた七宮蔦絵なのだから。
しかし彼女は目を閉じたまま。まるで眠っているかのように感情の揺らぎが感じられない。
(っ……マジで蔦絵さんもいたよ。しかも……)
ナクルに攻撃を加えているのが蔦絵なのだ。何も知らされていなければ、沖長も困惑で満ちてしまい冷静な思考ができなかっただろう。
しかしこの状況になることは事前に分かっていた。ただ、自分がナクルと離れた直後のタイミングで起きたことに対しては怪訝なものは感じたが。
あの時、ナクルの傍には蔦絵がいなかったので、まだ安心していたが、少し楽観的だったことは反省すべきである。
「ナクル、少し離れてろ」
「え、でもオキくん……」
「あの人……いや、〝アレ〟の狙いはお前だ」
沖長の視線は蔦絵……ではなく、彼女の周囲を覆う黒い影に向けられていた。
するとその黒い影の一部が、蔦絵から離れて一本の槍へと形を変える。
(……あの槍は黒い影の一部だったのか)
そこまでは長門から聞いていなかった。しかしこうして目にして、改めてここがファンタジーの物語の中なのだということを実感する.。
そうこうしているうちに槍がこちらに向かって飛んできた。だがこうして目にしている間は沖長たちにその刃が届くことはない。当然またも回収したからだ。
ただ、それでも蔦絵の反応は変わらない。自分の攻撃が不可思議に消失しているのに一切の反応がないのはおかしい。
だから長門から聞いた話が真実なのだということも確定できた。
「……やっぱ蔦絵さんの意志じゃないか」
「え? オキくん、今何て言ったんスか?」
「いーや、何でもないよ。とにかくお前はそこから――」
とりあえずナクルを岩の蔭に潜ませて少しでも危険から遠ざけようとしたその時だ。
「――――――ようやく介入できたぜぇぇぇぇぇっ!」
そんな叫びとともに、どこからか青白い塊が物凄い速度で飛んできた。そしてそれが蔦絵に真っ直ぐ突っ込んでいき命中したのである。同時に小さな爆発も起きた。
「蔦絵ちゃん!?」
ナクルが彼女を心配して声を上げる……が、それ以上に沖長は衝撃を受ける事実をその目にした。
大岩の上に仁王立ちをしている人物。
それは――。
「おいおい、ここで来んのかよ………………赤髪」
できることなら二度と顔を会わせたくなかった人物――赤髪少年の再登場であった。
すると妖魔が再びこちらに向かって飛び込んできた――が、今度は避けることはしない。すでに沖長の攻撃は〝終わっている〟からだ。
妖魔が不意に自身の頭上に意識を向けた。そしてギョッとしたような反応を見せる。
それもそのはずだ。そこには先ほど何もなかったはずなのに、突然巨大な岩の塊が浮いているのだ。しかもそれが重力に従って落下してくる。
そのまま岩は直下にいる妖魔を押し潰し、その光景をジッと沖長が見つめていた。そして完全に倒したようで、何の動きもないことを確認しホッと息を吐く。
突然出現した大岩は、当然沖長がもたらしたものだ。以前学校で山にハイキング、つまり遠足で行った時に発見した大岩を回収しておいたのだ。この大きさなら盾としても使えるし、今みたいに少し上空に出現させて対象を押し潰すこともできると考えてのこと。
やはり回収しておいて正解だったようだ。
「よし、あとはナクルを――」
再びナクルの捜索を続けようとした直後、少し離れた場所から爆発音が轟いた。
「あっちか!」
すぐさま全速力で向かうと、その先に確かに自分が求めていた人物がいるのを発見する。
しかし安堵しているのも束の間、空に浮かぶ槍のようなものがナクルへと迫ってくのを目にした。ナクルは腰を抜かしているのか、その場から動けないでいる。
このままではあの槍にナクルが貫かれてしまう。
ただ、〝原作〟を守るのならば、そのまま放置するのが正しい。アレでナクルが死ぬことはないからだ。しかしそれはあくまでも創作での話。
大切な妹分が、死なないとしても痛い思いをすると分かって見守ることなど沖長にできるわけがなかった。
故に――。
「――回収っ!」
電光石火のごとくナクルの前に辿り着いた沖長。その目前に迫って来ていた黒い槍が一瞬にして消失した。
(よし、回収できたぞ!)
実は半信半疑でもあった。明らかに普通ではなさそうな物体を取り込めるかどうかは不安だったのである。しかしこれで自分の力が不可思議な対象にも通じることが確定した。
「!? ……オ、オキ……くん?」
「ったく、ナクル。一人でこんなとこに来ちゃダメじゃないか」
「オ、オキくぅぅぅんっ!」
沖長の姿を見て安心したのか、背に飛びついて泣きじゃくる。そんな彼女の頭をそっと撫でてやる。余程怖かったようでしがみつく力がとても強い。ちょっと息がしにくくなるほどに。
「もう大丈夫だ。絶対に守ってやるからな」
その言葉でホッとしたのか、ナクルの力が少し弱まる。だがそこへ、またも中に浮かんでいる槍が飛んできた。
「!? ――回収」
すぐさま沖長のテリトリーに入ってきた槍を回収する。
そして沖長は、改めて警戒度を最大限にしながら口を開く。
「……さっきから自分のしてることが分かってるんですか?」
沖長の視線が、当たり前のように宙に浮かんでいる〝存在〟へと向かう。
「答えてください――――蔦絵さんっ!」
そう、そこにいたのは自分もまた良く知っている。いや、知っているどころではない。これまで四年もの間、師範代として慕ってきた七宮蔦絵なのだから。
しかし彼女は目を閉じたまま。まるで眠っているかのように感情の揺らぎが感じられない。
(っ……マジで蔦絵さんもいたよ。しかも……)
ナクルに攻撃を加えているのが蔦絵なのだ。何も知らされていなければ、沖長も困惑で満ちてしまい冷静な思考ができなかっただろう。
しかしこの状況になることは事前に分かっていた。ただ、自分がナクルと離れた直後のタイミングで起きたことに対しては怪訝なものは感じたが。
あの時、ナクルの傍には蔦絵がいなかったので、まだ安心していたが、少し楽観的だったことは反省すべきである。
「ナクル、少し離れてろ」
「え、でもオキくん……」
「あの人……いや、〝アレ〟の狙いはお前だ」
沖長の視線は蔦絵……ではなく、彼女の周囲を覆う黒い影に向けられていた。
するとその黒い影の一部が、蔦絵から離れて一本の槍へと形を変える。
(……あの槍は黒い影の一部だったのか)
そこまでは長門から聞いていなかった。しかしこうして目にして、改めてここがファンタジーの物語の中なのだということを実感する.。
そうこうしているうちに槍がこちらに向かって飛んできた。だがこうして目にしている間は沖長たちにその刃が届くことはない。当然またも回収したからだ。
ただ、それでも蔦絵の反応は変わらない。自分の攻撃が不可思議に消失しているのに一切の反応がないのはおかしい。
だから長門から聞いた話が真実なのだということも確定できた。
「……やっぱ蔦絵さんの意志じゃないか」
「え? オキくん、今何て言ったんスか?」
「いーや、何でもないよ。とにかくお前はそこから――」
とりあえずナクルを岩の蔭に潜ませて少しでも危険から遠ざけようとしたその時だ。
「――――――ようやく介入できたぜぇぇぇぇぇっ!」
そんな叫びとともに、どこからか青白い塊が物凄い速度で飛んできた。そしてそれが蔦絵に真っ直ぐ突っ込んでいき命中したのである。同時に小さな爆発も起きた。
「蔦絵ちゃん!?」
ナクルが彼女を心配して声を上げる……が、それ以上に沖長は衝撃を受ける事実をその目にした。
大岩の上に仁王立ちをしている人物。
それは――。
「おいおい、ここで来んのかよ………………赤髪」
できることなら二度と顔を会わせたくなかった人物――赤髪少年の再登場であった。
405
あなたにおすすめの小説
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる