俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

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 ユキナからの衝撃告白に激震が走る。とはいっても沖長とナクルくらいだろうが。
 蔦絵は知っているようで驚いている様子はない。

「あ、あの……」
「何だい、沖長くん?」
「えっと……あの子はどう見てもその……」
「子供の姿だった、かな?」

 修一郎の問いにコクリと頭を振る。
「実は詳しいことは我々にも分からないんだよ。ただ、以前ダンジョンが発生した十三年前にも十鞍千疋と名乗る少女がいて、そしてそのまた過去にもいたと聞いている」
「名前だけは一緒で別人とかじゃ……」
「どうだろうね。その可能性も否定はできないけれど、少なくとも数十年前に勇者として活躍したとされている十鞍千疋と、俺たちが出会ったことのある十鞍千疋は瓜二つだったよ。当時の写真を見比べたから間違いない」

 ビックリする情報ではあったが、なるほどと思うこともあった。確かにナクルと同年代の少女というには達観しているし大人っ気があり過ぎる。

(喋り方も老人っぽかったしな)

 だから転生者かと警戒したが、そういうことなら納得できるというものだ。
 しかしだとすればあの少女は一体何者なのか。
 見た目は人だが実際は違う種族なのか。
 人ではあるが何らかの原因で歳を取らなくなったのか。

(後者だったら不老不死ってことになるけど……あ、いや不死かどうかは分からないのか。だとしても権力者にとってはあの子の存在はとてつもない価値があると思うな)

 不老不死、あるいは不老長寿というのは人が昔から追い求めてきたものの一つ。とりわけ権力者というのは、できる限り長くその地位に立っていたい欲求が強い者が多く、誰よりも欲する力であろう。

 そんな現実を体現している少女の存在は、彼らにしてみれば計り知れないほどの価値があるはず。

「でも私たちの時はほとんど接触すらしてこなかったのに、どうしてナクルたちだけ? 聞けばいろいろ情報も伝えてるみたいだし」

 トキナが思案しながらも疑問を口にした。
 どうやら彼女たちが活躍した時代に存在した十鞍千疋は他人との接触を避けていた様子。だから修一郎たちもあまり情報を持っていないとのこと。

「蔦絵くん、彼女と話したのだろう? どんな様子だったかな?」
「そうですね。外見的特徴は、私も以前拝見させて頂いた写真と瓜二つでしたし、口にしていた情報も間違いのないものだったかと。ただ……」
「ただ?」
「聞いていた物静かな性格とは少し違い、どちらかといえば女狐のような、人をからかって喜ぶ類の性格をしていたと思います」

 女狐とはよく言ったものである。蔦絵と千疋の相性は決して良くなさそうだったし、一触即発な雰囲気でもあったから、蔦絵は嫌悪感を覚える相手だったのかもしれない。
 しかし以前は物静かだったらしいが、少なくとも沖長たちの前に現れた千疋は、その情報とは真逆の性格なのは確かだ。

「性格が違う……か」
「やっぱ別人なんじゃねえか、修一郎」
「どうかな。まあとりあえず彼女がこちらに害を成そうとしているわけではないみたいだから今は様子見でいいと思う」

 確かに情報がまったくといっていいほどない以上は考察しても仕方がない。

「話を戻すとするか。沖長くんがさっき言ったように、ダンジョンから脱するにはコアを破壊するか掌握するかだ。ところでナクルが勇者として覚醒したとしたなら、ダンジョン主にトドメを刺したのはお前のはず。コアはどうした?」
「えっと……仲良しになったッス!」
「な、仲良し?」

 修一郎が目をパチクリとする。気持ちは分かる。ナクルの独特な表現は時に分かり辛いことがあるから。
 だから代わって沖長が掌握したことを伝えた。

「そうか、コアを取り込んだというわけか。ナクル、向こうへの扉を開いてみてくれないかい?」
「ふぇ? と、扉ッスか?」
「あー言い方はいろいろあるんだ。ゲートやポータル、亀裂に門など人によって様々なんだが、つまりダンジョンへ入るための入口を開いてほしいということだよ」
「で、でもどうすればいいんスか?」

 困惑するナクルを見て助け舟を出したのは蔦絵だった。

「私も資料で得た知識しかないけれど、ダンジョンの主になった者は、好きな時に扉を開くことができるらしいわよ。ナクル、とりあえずダンジョンを呼んでみたらどうかしら? お友達なのでしょう?」
「わ、分かったッス!」

 勢いよく立ち上がったナクルは、目を閉じてイメージし始める。

「ダンジョンさん、ダンジョンさん、どうか出てきて欲しいッス!」

 するとナクルの目前の空間が歪み始め、旅館の部屋で見たような亀裂が誕生した。
 大人たちはそれを見てどこか険しい、それでいて僅かに懐かし気な雰囲気を漂わせている。そして何を思ったか、修一郎が亀裂に近づき手を伸ばす……が、その手は亀裂に吸い込まれることはなかった。ただただ通り抜けただけ。

「やはり俺には無理、か」

 どこか悔し気なその様子に、大人たちが揃って苦々しい表情を浮かべている。
 そこで今度は沖長が亀裂に手を伸ばした。すると修一郎の時と違い、伸ばした手は亀裂の中へと消える。そしてそれは蔦絵も、当然ナクルも試したが同様だった。

「ありがとう、もう消していいよ、ナクル」

 ナクルは修一郎の言葉に「はいッス!」と返事をすると、「また遊びましょうッス!」と口にした後、亀裂は静かに元の空間へと戻った。

「これでハッキリしたな。君たち三人は勇者であり候補生だ。そしてこれから訪れるダンジョンブレイクとどう向き合うか決める必要がある」
「……修一郎さん、そのダンジョンブレイクというのは?」

 一応知識としては知っているが、沖長は代表して尋ねた。

「ダンジョンが一度どこかで開くと、そこから定期的に開くようになる。それは通常どこに開くかは分からない。そして開いてしまえば、中から妖魔が現れ地球を侵食し始めるんだ。ダンジョンブレイク――妖魔による襲撃だよ。それも世界各地で、ね」



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