俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
99 / 258

98

しおりを挟む
「オキくん、怪我は大丈夫ッスか!?」

 戦いを終えたナクルが慌てて駆けつけてきた。

「おう、悪いけどこれで血を拭いて薬を塗ってくれ」

 背中だから一人では治療もままならない。故に《アイテムボックス》から取り出した清潔なタオルと塗り薬にガーゼとテープをナクルに手渡した。
 傷の手当ては二人とも慣れている。何せこれでも古武術を習っている上、怪我だって珍しくない。だから両者ともに傷にも血にも同年代と比べると慣れている方だろう。

「……あれ?」
「ん? どうした、ナクル?」

 沖長の背中へと回ったナクルが不思議そうな声を上げたので尋ねてみた。

「えっと……オキくん、血ならもう固まってるというかこれ……治りかけてるみたいッスけど?」
「え……マジか」

 実は沖長は自分の身体が異常にタフで治癒力も高いことは、この数年で気づいていた。切り傷や打撲痕も、一日経てば目立たなくなる程度には治っていたからだ。
 恐らくこの丈夫さも転生特典のお蔭なのだろうが、さすがに今回受けた傷は大きいと思い治るのも数日以上はかかると思ったのだが……。

「でもこれならすぐに治りそうで良かったッス!」

 ナクルは喜んでくれるが、沖長としては野生の獣並み……いや、それ以上の自己治癒力の高さに若干引いている。

(ま、まあ……一応メリットではあるんだけどな……)

 武術を志す者としてもありがたい恩恵ではあるが、仮に腕が切断されても生えてくるようなら、それはそれでもう人間を止めているので自重してもらいたい。
 一応ガーゼを当ててテープで止めるだけにしておいた。

 さて、妖魔を倒したはいいが、肝心の主はいまだ姿を見せない。

「そういえばナクル、そのアーマー姿だけど、動きにくくはないのか?」
「ぜんっぜん! むしろ身体が軽くなって力も溢れてきてるッス!」

 なるほど、このライトアーマーは身体能力を向上させてくれる効果もあるようだ。

(にしてもコレが……〝ブレイヴクロス〟か)

 長門から聞いていた勇者だけが装着することを許されたライトアーマー。
 各々勇者によって形は異なっているが、ナクルのソレには特徴的な部分がある。
 両拳に備わったガントレットグローブと、兎の耳を模したようなヘッドギアだ。

 この《ブレイヴクロス》は、生物を象ったものだという話である。
 ナクルのソレはヘッドギアで分かると思うが――〝兎〟。より正確に言うならば〝白兎〟らしい。

 ――《ブレイヴクロス・ホワイトラビット》――

 それがナクルのクロスの正式名称とのこと。

(クロスにはそれぞれ特化した能力があるって話だけど……)

 長門から聞いた話を反芻しながらナクルを見つめていると、

「オ、オキくん……そんなジッと見られるとちょっと恥ずかしいッスよぉ」

 頬を紅潮させながらナクルが視線を泳がせていた。

「あ、ごめんごめん。その姿、似合ってるって思ってさ」
「そ、そうッスか! えへへ、褒められたッス~」

 本当に感情豊かな子だ。見ていて飽きない。
 しかし原作では、この時期はまだ友達と呼べる者もおらず、ただただ蔦絵の死で心に傷を負った陰キャだった様子。それでも蔦絵の仇を討つべく立ち上がり、ダンジョン攻略へと臨んでいく。

(環境が人を育てるって言うけど、まさしくそれだよなぁ)

 同じ人物であるはずなのに、現実と原作ではその性格に真逆とも呼べる差がある。別に陰キャが悪いといっているわけではなく、それも一つの個性なのは確か。
 しかしその違いが、今後の原作でどんな影響をもたらすかは定かではない。そういう変化の可能性も考慮に入れた上で行動していく必要がある。

「ところでこれからどうすればいいッスかね?」
「ダンジョン主を見つけないといけないからな。そうだな……あそこの丘まで向かうか」

 それなりに傾斜があり、丘のテッペンからなら周囲を広く見渡せると判断した。
 しかし道すがらすんなりと行くことはない。
 先ほどと同様の妖魔がまた姿を現して襲い掛かってきたのだ。ただ、《ブレイヴクロス》を纏ったナクルは凄まじく、ほとんど一撃のもと粉砕していく。

 正直に言って沖長の出番は皆無。もっとも原作でもナクル一人で攻略していたようだから、沖長が何もせずとも問題は無いとは思うが。
 するとその時、またも何かの気配を感じ取った沖長は、背後から迫ってくるソレに対し大きく飛び退いて回避した。

(今度は俺狙い!?)

 そう思いながら避けつつ、体勢を立て直して攻撃がやってきた方角に顔を向けハッとする。何せそこに立っていたのは――。

「――ちっ、すばしっこい奴め」

 またもやイレギュラーの一人――転生者の赤髪少年だった。

「毎度毎度ナクルと一緒にいやがって! てめえは一体何なんだよ! オラァッ!」

 すでにキレている赤髪少年から、前に沖長が受けたオーラの塊が放たれてきた。
 だが今度は当たってやるつもりはなく、ただ真っ直ぐに突っ込んでくるエネルギー体に対し、後方へ跳んでかわしてやった。

「くそが! ならこれでどうだ!」

 赤髪少年の周囲にオーラの塊が幾つも出現する。

「ちょっと待て! 何で俺を攻撃する! とりあえず話を聞いてくれ!」
「黙れ! モブ風情がしゃしゃり出てくんじゃねえよっ!」

 やはり話など聞くつもりはないらしい。こちらに向かって次々と弾丸のようにオーラが放たれてくる。

(ったく、しょうがない!)

 回避ばかりだと体力が削られると判断し、向かってきたオーラのすべてを回収することにした。
 だが当然自分のオーラが消失したことに赤髪少年はギョッとする。

「何だよ……何しやがったてめえぇぇぇっ!」

 今度は直接殴り潰そうとでもいうように、勢いよく駆け寄ってきて拳を突き出してくる……が、

「――っ!? ナ、ナクルッ!? 邪魔をするんじゃねえ!」

 そう、彼の拳をあっさりと受け止めたのはナクルだった。そしてそのまま腕を掴んで、

「オキくんに何しようとしてるんスかぁぁぁっ!」

 叫びながら一本背負いの要領で放り投げた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...