俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
244 / 258

243

しおりを挟む
 とにもかくにも、千疋を救った手法を追及されなかった沖長だが、そもそも彼女が何故ここに現れたのかその理由を尋ねた。ただ、その理由には心当たりはあったが。

「いやのう、このえがあの時の答えを聞きたいと言うとるんじゃよ」

 やはりそうだったか。わざわざ千疋を寄こすなんて、余程うやむやにはしたくない事情があるのだろう。

(答え……か)

 それは、このえからの依頼である《逆行の砂時計》を入手してほしいというもの。しかしその時に答えは出せなかった。
 何故なら彼女が欲するそのアイテムはハードダンジョン以上でしか見つからない稀少なものだからだ。ハードダンジョンの凄まじさは先日味わったこともあり、今の沖長の実力では確実に無事を確保できるとは言えないのである。

 当然沖長がこの依頼を受ければ、ナクルだって黙っていられないだろう。自分も一緒について行くと言って、ともに攻略することになる。そうなればまだ勇者としても半人前である彼女にも力が及ばない危険があるかもしれない。故においそれと決断はできなかった。

(あれからいろいろ考えたけど、やっぱり断った方が良いかもな)

 そう思いは傾きつつあったのだ……が、思い出されるのは長門の言葉である。実はもう長門には、沖長がもう一人の転生者であるこのえと接触していることはバレており、どうせなら近々顔合わせをしようという話にもなっていた。

 そんな長門からの言で、このえの言うように《逆行の砂時計》は確かに手にしておいた方が良策だということ。この先の悲劇を避けるためにも、必ず力になってくれるはずだからと。

 原作を熟知している二人がそう言うのだから、きっと間違いは無いのだろう。何せ、普通の原作通りではなく、映画やゲームなどの内容がごちゃ混ぜになっている世界らしいから、何が起きても不思議ではない。
 だから時間を巻き戻すことのできる《逆行の砂時計》は、かなり強い味方になってくれるだろう。それは沖長も納得済みのことだった。

(けど今の俺じゃ……力不足なんだよな)

 それは先日の件で痛感していた。単純な妖魔相手ならまだ良い。しかしダンジョン主には勇者の攻撃しかまともにダメージが入らないし倒せない。これではいずれ必ず足手纏いになってしまう。

(俺にもブレイヴオーラが使えれば……)

 ナクルのブレイヴオーラを回収しておりストックはある。しかし他人のオーラを自在に扱うことができずにいた。文字通り宝の持ち腐れとなってしまっている。

「主よ、そう難しく考えずとも良いと思うがの」
「え? 何でだ、千疋?」

 答えを渋っていると、千疋が助け舟を出すように言葉を投げかけてきた。

「そもそもの話じゃ。目的のものがあるのはハードダンジョン以上の中。そう簡単に見つかりゃせんわい。最近ダンジョンブレイクが起きやすくなっておると言うても、そう頻繁に起きてはおらん」
「えっと……つまり?」
「時間はまだあるということじゃよ」
「…………なるほど」

 確かに千疋の言う通りだ。これまでも幾つかダンジョンが発生してきたが、ハード以上のものはまだ数が少ない。それもある程度の時間を空けている。
 つまり目的のダンジョンが出るまでは少なからず時間には猶予があるということ。

「主は自身の力の無さに不安を抱いておるようじゃが、その時間を使って不安を取り除くことができるというわけじゃよ」
「そっか……そうだよな。まだ時間はあるんだ」

 原作の知識だと、次にハードダンジョン以上が出現するのはもう少し先。それにそこには《逆行の砂時計》があったという描写はない。

(ならその間に少しでも成長できれば……!)

 この先の悲劇を避けるためにも《逆行の砂時計》は手に入れておきたい。ならこの依頼を達成することが、ひいてはナクルの助けにもなるということだ。

(だったら迷う必要なんてないか)

 千疋の言葉でようやく決心が着いた。

「……分かった。壬生島の依頼、引き受けることにするよ」
「うむ、主ならそう言うと思うたわい」

 千疋も親友の頼みを受けてくれたことが嬉しいのか頬が緩んでいる。そしてさっそくこのえに知らせに行こうと、雪風の紹介がてら、そのまま皆で壬生島家へ向かうことになった。
 道中、今後どのように鍛えていくかという話になるが、千疋曰く、弟子である水月について思うことがあるらしい。

「やはり一度ダンジョン攻略を経験させとくべきじゃと思うてな」

 水月はまだダンジョン主と相対したことはない。いや、実際ダンジョンに入って妖魔と戦った経験もないのである。

「いくら修行したとしても実戦経験がないままでは半人前からは一生脱せんからのう」

 確かに千疋の言葉通り、身体を鍛えたとしても戦闘経験そのものが不足していては、いざという時に実力を発揮することはできないだろう。

「それにたとえ勇者の資質があったとしても、覚醒できるのはダンジョン内だけじゃ」

 ナクルもそうだが、雪風だって覚醒したのはダンジョン内だ。千疋が言うには、こちらの世界では覚醒しないということ。少なくてもそういう存在は見たことが無い。

 原作知識がある沖長には、水月が勇者である事実は知っているが、千疋たちはもちろん知らない。覚醒するかしないか試す必要があるとのことだ。

(それに今後のことを考えても九馬さんが覚醒しておいた方が良いかもだし)

 本当なら危険から避けるべきだが、もうすでに十分巻き込まれている水月だし、彼女自身も友人であるナクルたちを、ただ外で見守るだけというのは我慢できないらしい。助けられたこともあり、自分に力があるなら一緒に戦いたいと言ってくれている。
 なら彼女が強さを得る機会は逃してはダメだろう。

「じゃあどこかでダンジョンが発生した時に、九馬さんを?」
「うむ、ワシが付き添って攻略させようと思う」
「まあ、千疋が傍にいるなら余程のことがない限り無事だとは思うけど……それでいいの、九馬さん?」
「うん! あたしだって札月くんたちの力になりたいから!」

 本人はやる気のようだ。ならばこちらは応援するだけだ。

「分かった。俺も手伝えることがあれば言ってくれ」
「ボクもお手伝いするッスよ!」
「雪は……お兄様がやるなら」

 ナクルもそうだが、雪風も力になってくれるなら心強い。
 そうして水月覚醒計画が近々実行されることになり、そうこうしているうちに壬生島家へと辿り着いた。

 しかしそこで沖長は、思わぬ事態に巻き込まれることになる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...