転生なの?召喚なの?

陽真

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第一章 

久しぶりの家族

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転移して目を開けると目の前には父様が中央に座り、周りに母様、兄様そして姉様が座っていた。

あぁ、懐かしい。
五年ぶりの再会、兄様と姉様は更にイケメンと美人になっているけど、父様、母様は全然変わらない。
俺がいる事をナーマが父様に報告すると父様達は目を見開き涙を潤ませていた。
でも、それを周りに悟られないように完璧に威厳を保っている。

「だから、どこなんだよここ!」
俺が感傷に浸っていると中冨の声が響いてきた。
その声に周りを見ると急に場所が変わり、混乱していたり何故か目を輝かせたりと色々混じっていた。
でも、皆んなが五体満足でいるって事は転移は大丈夫だったようだな。
もしかしたら、地球からこっちへ来た時に一緒に魔法耐性がついたのかも。

「落ち着け、中冨。柳城が言ってただろ、ここは異世界かもしれないって。って事はこの状況から察するに俺達の目の前にいる人は国王もしくは王族、それに近しい人って事になる、だとするればここは王城の可能性が高いと思うぞ」
雫が中冨に向かって冷静に判断して言う。
その言葉に対して中冨は自分が下に見られていると思ったのか顔を顰めていた。

「はぁ?お前に言われなくても分かってるわ。なに自慢げに語ってるわけ?マジ、イラつく!」
そして、挙げ句の果てに雫に対して悪態をつき始めた。
「中冨くん、それは言い過ぎよ。きみのために言ってくれたの」
先生が少し強い口調で中冨に注意をする。
流石に先生には言い返せないのかあからさまに不貞腐れたように黙った。

【ハルヤよくぞ帰った、息災で何よりだ】
中冨の態度に呆れていると、父様の声が頭に響いてきた。
その声は威厳があるもののどこか優しく落ち着き安心する声だった。
【父様、お久しぶりです。父様達もお変わらず元気そうで安心しました】
俺が父様に対して返すと父様はフッと笑い、再び声が頭の中に響いてきた。
【成長したな。堅苦しい挨拶はいらない。お前と語らいたいがそれはまた次に、今はこの状況をどうにかしたい。我々は召喚者達の言葉を知らない、通訳をしてはくれまいか】

確かにこの場で双方の言語が分かっているのは俺だけだろう。
だから俺が通訳には最適な人材と言える。
たけど、ここにいる雫達に俺の正体を知られたくない気持ちもある。
勿論、いずれは話さなければいけない事だと分かっている。
もしも、雫達が地球へ帰る時、俺はこの世界に残るだろうから、前世の俺の故郷は地球かもしれないけど今世は違う。
今の俺のいるべき世界はこっちなんだから。

【父様、勝手なお願いかもしれませんが俺はここにいる者達に正体を知られたくはありません。同じ仲間として過ごしてきました。ですから、異世界の人間や王族などと知って態度が変わることが恐ろしいのです。勿論いずれは全てを伝えるつもりです。しかし、今は秘密にしていてはいけませんか?】
父様に恐る恐る念話で尋ねてみるとしばらく間があり優しい声が響いてきた。
【酷なことを言ってしまったようだな。では、できる限りで良いからそちらの言葉だけ伝えてはくれないか。こちらはできる限りそちらにわかるように心掛けよう】
【ありがとうございます】

父様の了承を得たところで俺達の今後の身の振り方について話し合いが始まった。

「さて、今後は王城で過ごしてもらうことになる。こちらはできる限り生活に支障がないようにしよう。だが、こちらのルールにも可能な限り守ってもらう」
威厳たっぷりの声で父様が話し始めると、魔法で絵や文字が映し出されていた。
「は?」
「ん?」
「え、マジの異世界かよ」
その絵や文字に困惑し、皆んな口々の間抜けな声を出していた。

どうやって、説明するのかと思ったらまさかの魔法で作り出しちゃうとはな。
作り出した犯人は多分、ジングリア。
俺の幼馴染で王国魔法部隊隊長兼魔法研究所所長という大層な肩書きを持っている。
平民の出だが、魔法の天才でこの国の魔法部隊隊長で魔法研究をするために専用の研究所を造ってもらったりと王国からは期待視されているが、問題は性格だ。
こいつは才能のあるものや極悪大罪人などを自分の研究に参加させたり実験体にしたり、研究に対しての協力に首を縦に振らないものを必要に追いかけたりと、とにかくやばいやつだ。

父様もこいつの行動がいつも悩みの種であるようだが、才能、魔法戦闘でこいつの右に出るものがいない為、その地位からおろすことができない。
まぁ、本人は地位とかどうでも良く、ただ自分が楽しみたいそう思っているだけのようだけど。

魔法で作り出した絵での説明は言葉がわからなくても理解しやすく、なっていたようだけど、理解できる範囲にも限度がある。
地球じゃあり得ない生物や考え方、知らない人であれば分からない。
「なるほどな。つまり、俺達の自由は保障されるけど、ここのルールには従ってもらう感じか」
はずなのだが雫はいとも簡単に内容を解読してしまった。
頭の回転が速いのか、何なのか分からないけど凄いことに変わりはない。

「香坂くん、あれ分かるの?」
雫があっという間に解読してしまったため、皆んなは驚き、沈黙が流れたと思ったら、中から弱々しく、か細い声が聞こえた。
声の主は春川空樹、どこか遠慮がちな女の子で、普段から一人でいるイメージが強いためか一瞬、誰の声か分からなかった。

「あぁ、逆に分からないのか?」
「いや、分からないでしょ、なに?実は馬鹿だったりするわけ?」
当たり前のように言う雫に対して中冨が呆れたように言った。
「失礼な。でも、実際俺がこの世界の言葉、解読しなければここの生活もままならないだろうが」
「そうね、香坂くんがいなきゃ私たちはこの世界で生活できないわね。先生としては情けない限りだけどこの状況ではそんなこと言えないわね」
先生がしみじみと言った。
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