転生なの?召喚なの?

陽真

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第二章

暴走気味

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水晶での力の測定から二ヶ月が経った。
俺たちはそれぞれ父様が用意した、各分野の専門家と言える人たちから各分野を学んだ。
あと、俺が『異世界渡り』で異世界に行った第二王子のハルヤ・シーリスだということはメアリーやナーマ、父様たちを始めたとした内々の秘密になっている。
そして異世界から召喚された召喚者たち、つまり雫たちの存在は箝口令が敷かれ王城内でしか知られていない。

「疲れた~!」
今俺たちは授業を終え、それぞれの部屋に戻ってきていた。
「疲れたね~、もう二ヶ月か‥‥」
「早いもんだな」
「くっそ!どいつもこいつも!」
雫と二人でしみじみと話していると、鳴宮の怒号が響いてきた。

「どうしたんだよ、鳴宮」
「あいつ‥‥っ!あいつが!俺は鳴宮財閥の御曹司だぞ!それなのに‥‥‥っ!」
雫が聞くと鳴宮はただストレスを発散するように吐き出す。
全く何があったのか状況が掴めない。
「あいつって誰なんだよ」
「ガレストンだよ!」
「あぁ、あの人か」
鳴宮の吐き捨てた名前に聞き覚えがあるのか雫は納得顔で言った。
ガストンって確か、この国の王国騎士団長の名前で、ナーマの父親の名前だよな。
ガストン騎士団長は今、雫と鳴宮の剣の指南役として就いているはず。

「雫、一体何があった?」
「えっとな、話は長くなるんだけど」
「大丈夫」
俺の了承を聞き、雫は話し始めた。
雫の話を要約すると、ガストン騎士団長にコテンパンにされて怒っているらしい。
でも、それで怒っているならそれは‥‥
「それって‥」
「逆恨みだよな」
そう逆恨みだ。

「あいつ、自分が最強だと思ってんだよ。それで、俺が負けるわけないってな」
「最悪だな」
俺たちが話していると横で布団にくるまっていた鳴宮が睨んできた。
「やばっ。あ、そうだ悠弥」
「なに?」
「街に行きたくないか?」
鳴宮の睨みに気付き話を変えた雫は俺に聞いてきた。
「うん、まぁ。そりゃ行きたいけど」
街に行くのは地球から雫たちと召喚されてから、父様の許しが降りず一度も行けていなかった。
だから雫がなぜ突然そんなことを言ったなのか全く分からない。

「国王様に頼んでみようぜ」
「とう‥‥国王様に?」
「そうだよ。二ヶ月も訓練したし俺たち大分強くなったはずだよな」
どこからその自信が来るのか雫は言った。
「でも鳴宮はコテンパンにされたんだろ」
「まぁ、そうなんだけどな」
「じゃあ無理じゃないか?」
箝口令が敷かれた召喚者である事、異世界についてまだ無知な所が多い事、これを考えれば父様に頼んでも却下される気がする。

「えぇ~、俺、ガストン騎士団長に及第点貰ったんだぞ」
「まじっで⁉︎」
考え込んでいた俺の耳に入ってきた雫のまさかの発言に俺は柄にもなく大声を出してしまった。

それもそのはずで通常ガストン騎士団長は並大抵の実力では及第点は愚か、褒めもしない完璧な実力主義者だ。
本人も王国随一の実力者で剣のみの勝負では負けなしと言われているほどだ。
しかし王族には忠誠誓っており、優秀な家臣とも言える存在でもある。
そんなガストン騎士団長が雫に及第点を出したと言うことは雫の実力は騎士団長をも超える可能性があると言うことかもしれない。

「そう、そうなのか。それなら許しが降りるかも知れないな。うん、うん」
「悠弥?どうかしたか?」
「あ、いや別に。それよりそろそろ夕食の時間だろ?」
一人で雫の実力に納得していると、外で鐘が鳴っていた。
この世界で懐中時計は珍しく普通の人は街にある大時計の鐘で時間を知る。
それは王族も例外ではなく、起床、朝食、昼食、夕食は鐘の音で行動している。
「あ、本当だ。‥‥鳴宮、夕食行かないのか?」
「‥‥‥」
鳴宮は不貞腐れてか一言も布団にくるまったまま発さない。
「雫、行こう。今は無駄だ」
「あぁ」
これ以上鳴宮に何かを言っても火に油を注いだ状態にしかならない未来が見える。
だったらそれを阻止するために動いたほうが賢明だ。

そして俺と雫は不貞腐れた鳴宮を残して部屋を後にした。
そう言えば華深帰ってきていないな。
俺と同じでジングリアから教えてもらっているはずだからもう終わったはずなんだけど。
華深の気質からすればジングリアと盛り上がっていても不思議ではないか。

♦︎♦︎♦︎♦︎

「皆、早いもので二ヶ月が経った。それぞれ学んだことが多かったであろう。が、こんを詰めすぎると言うのもよくは無い。そこで明日一日、街への外出を許可しようと思う。もちろん護衛付きで、だが」
父様は夕食が終わると、席から立ち言った。
俺と雫がさっきまで会話していた内容だっただけに何度も聞き間違いじゃ無いかと思ったほどだ。

「国王様、よろしいでしょうか」
そう言って中冨が手を挙げだ。
中冨はこの二ヶ月で劇的に変わった。
何かにつけて癇癪を起こしていたが、ここ一ヶ月全くその様子はなかった。
それどころかあれだけ嫌がっていた盾について知り、訓練まで熱心にやっているらしい。
何があったのかは俺たちには知る由もないが、なんだか不気味な話だ。
「なんだ?」
「私たちを護衛する方たちは国王様がお選びになるのですか?」
「あぁ。しかし私が選ぶのは候補の者たちだ。そこからは自身で好きな者を選んでくれ」
「承知致しましたわ」
中冨は父様に礼を言うと、席に座った。

「お父様、私からも宜しいですか?」
「どうした、サーナ」
「その、私も街に行っても宜しいですか?あ、もちろんお忍びでですが」
姉様は意を決したように言った。
「それはどうしてだ」
「それは、その‥‥‥」
「明確な理由がなければ行かせることは出来ない。行きたくば明確の理由を示すことだ」
口籠る姉様に父様がスパッと言った。
姉様は残念そうにしながら俺の方を向いた。

なに?姉様なに?
もしかして街に行きたい理由って俺だったりしないよな。
そんなわけないか。
兄様ならともかく姉様がそんなことを言い出すとは到底思えない。

「僕たちも明確な理由がないんだから、サーナ様と同じく行っては行けないんじゃないんですか?」
華深が不思議そうに父様に聞いた。
「ふむ、確かにその意見は正しい。しかしサーナは王族だそう易々と街に行かせるわけにも行かない。場合によっては護衛計画なども立てる必要もあるからな。その点、君たちはこの二ヶ月間で個々それぞれが身の安全は取れるほどには成長している。もし万が一何かあっても大丈夫だろうと判断した」
父様の答えは正論だ。
それと同時に華深の意見も正論だ。

俺たちがよくて姉様はダメ。
王族だからという理由でダメと言われているなら、世知辛い世の中だ。
けど俺には父様が許可を出さない理由は王族であるからというより父として心配だからじゃないかと思えてくる。
父様だってお忍びくらいさせてあげたいのだろうけど心配が勝っているのかもしれない。

「お父様!」
「今度はなんだ?」
「私、街に行く理由を見つけましたわ。社会見学です。王族としてこの国に住む民の生活を見ておく必要があると思いますわ」
姉様が意気揚々と父様に言った。
その様子に俺たちは目を丸くし、父様は頭を抱えていた。
そこでふと、兄様の方を向くと今にも〝私も行きます〟と言いそうな表情をしていた。
「どうでしょうか、お父様」
「確かに正当な意見だ。だが‥‥だがな、理由とは事前に考えておくものだ」
父様は姉様を見ながら絞り出すように言った。

「あ、そういうものでしたね」
「まったく。はぁ、仕方がない。外出許可を出そう」
「ありがとうございます、お父様」
「ただし、くれぐれも問題を起こさぬようにな」
「分かっていますわ。子供ではないんです」
「そういうことではなくてな‥‥‥まぁ、いいか」
父様は姉様にしっかりと釘を刺すが姉様にはまったく効いていない様子だった。
多分父様が言った問題と姉様が受け取った問題の意味が違うのだろう。

父様は姉様が俺、目当てで外出許可が欲しいと思っているんだろう。
多分そういう事ではない‥‥そう信じたい。
けど、姉様は街で大はしゃぎするなと言われていると思っているんだろう。
食い違いはなんと怖いのだろうか。

そして、俺の精神がすり減っていく夕食が終わった。
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