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第二章
方向音痴
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「篠宮くん!」
「先生?どうかしましたか?」
歩いていると次は先生に話しかけられた。
先生はどこか疲れているようだった。
「実は恥ずかしいんだけど、先生迷子になっちゃったみたいで。それでたまたま篠宮くんを見つけたから声をかけたの。篠宮くんも迷子かなってね」
そう言う先生は恥ずかしそうにしていた。
なるほどそれで疲れてるってわけか。
「えっと、俺は厨房に行こうとしてて」
「厨房?どうして?」
「夕食の時、鳴宮来て無かったじゃないですか?」
「そうね」
「で、お腹が空いたそうで、俺が取りに行ってるんです。ついでにおやつ貰えないかなって」
先生に説明すると納得顔で頷いた。
「ねぇ、篠宮くん。先生もついていって良いかしら?一人で彷徨っても迷子を卒業できない気がするのよ」
「良いですよ」
「ありがとう。助かるわ」
「じゃあ行きましょうか」
先生に声をかけて歩こうとすると、先生は俺と別方向に歩こうとしていた。
これは想像以上に方向音痴だな。
それから暫く歩き、厨房についた。
途中、先生が何度か俺が前を歩いているのにも関わらず、別方向に進んでおり、探すのに手間取って大分かかってしまった。
この人よくこれで教師になれたな。
「篠宮くん、ごめなさいね」
「あ、いえ」
俺の呆れに気がついたのか、先生は申し訳なさそうに謝る。
「厨房に行きますけど、先生も来ますか?」
「また彷徨いそうだから行こうかな」
先生の言動に呆れながら俺は厨房の中に入った。
早く貰わないと兄様たちとの約束の時間には間に合わない。
もう少しで、鐘の一回目が鳴りそうだし。
「こんばんは~、ヴァンさん居ますか?」
「お?なんだ、ハルヤくんじゃないか。どうしたんだこんな遅くに。明日の朝食ならまだ出来てないぞ」
「いやいや、そんなに食い意地張ってないですから」
俺は目の前の王宮料理長であるヴァンさんの素っ頓狂な解答にツッコんでしまった。
ヴァンさんは俺がこの世界で王子として過ごしていた頃から仕えている。
聞いた話によればもう二十年は勤めているらしい。
人当たりが良く、料理の腕も確かで誰からも信頼されている。
俺の正体について話してはいないはずだが、時より気付いているのではないかと思えてくる行動する。
「じゃあ、何か用か?」
「友人の夕食を貰いに来たんです。あと、ついでに何かお菓子があれば欲しいです」
「友人?あ~、夕食の時に来ていなかった子の事か。用意していた分はもう俺たちが美味しく食べたからな。簡単なものでいいなら作れるが」
「それで大丈夫です」
ヴァンさんの言葉に了承の意を伝えると、冷蔵庫の中からぶつぶつと言いながら食材を取り出す。
この世界、というかこの王城の料理が簡単なものだとしてもそれは地球や日本の簡単な料理とはまるで違う。
本当に簡単な料理なのか、というほどのものが出てくる。
「ねぇねぇ、篠宮くん。少し聞いてもいい?」
料理の様子を見ていると先生が俺の肩を軽く叩いて、俺の注意を引いた。
「なんですか?」
「篠宮くん、間違ってたらごめんね。私と会う前、ナリアス様と話してなかった?」
「えっ?」
「あ、やっぱり違った?」
兄様と話すの見られていたのか‥‥。
でも、先生の話し方からするに、会話の内容までは聞かれていないはず。
「いや、実は俺も道に迷ってて、偶然にい、ナリアス様とあったので厨房までの道をお聞きしていたんです」
「あ、そうなの。やっぱり迷うわよね。でも一度聞いただけでたどり着けるって凄いね。これが若さの違いか‥‥‥」
先生は俺の言い訳をすんなりと信じ、なぜか哀愁感漂う雰囲気を出し、自嘲気味に笑っていた。
なんか申し訳ない事したような気しかしない。
別に年齢とかじゃなくて、単純に俺はこの王城の間取りを把握しているだけでなんだけどな。
「せ、先生も若いじゃないですか」
「いやいや、三十ニ歳なんて篠宮くんからしたらオバさんだよ」
俺のフォローは効果なく、自嘲しながら小さく言った。
というか、先生、三十ニ歳だったのか。
ちゃんとした年齢聞いたの初めてだ。
「いや、先生は三十ニ歳だとは思えないくらいお綺麗ですからね」
「‥‥篠宮くん、ありがとう。でもね、そう言うことは誰彼構わず言うものじゃないんだよ。相手見て言わないと背中刺されちゃう」
先生は俺のこと言葉に若干、笑みを取り戻したかと思ったら、訳の分からないことを言い出していた。
「それはどういうことですか?」
「大人になれば分かることよ。今は肝に命じといてくれれば良いから」
「は、はい」
「面白い会話をしているみたいだな」
先生に対して曖昧な返事をしていると、良い匂いのする料理を持ってヴァンさんがやってきた。
「面白い会話ですか?」
「自覚なしなのか‥‥?えっと、ツキカさんだったかな?」
「えっ、あ、はい。ツキカ・シグレです」
急な質問に自嘲気味だった先生も元に戻ざるを得なかったらしい。
「改めて、俺は王宮料理長をさせてもらってるヴァンだ。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
先生は困惑をしながらもしっかりと挨拶を返す。
「ツキカさんは召喚者たちの保護者代わりなんだよな」
「まぁ、そうですね。でも保護者代理といっても、子供たちはすぐに自分で成長していきますし、私も私自身のことで手一杯で保護者代理なんて肩書きだけですけど」
嬉しそうな哀しそうなよく分からない感情の顔をして、先生は言った。
「そうか。そんなツキカさんにはお土産をあげよう」
そう言ってヴァンさんは鳴宮のための料理の乗っているトレイから小さなものを取り出した。
「先生?どうかしましたか?」
歩いていると次は先生に話しかけられた。
先生はどこか疲れているようだった。
「実は恥ずかしいんだけど、先生迷子になっちゃったみたいで。それでたまたま篠宮くんを見つけたから声をかけたの。篠宮くんも迷子かなってね」
そう言う先生は恥ずかしそうにしていた。
なるほどそれで疲れてるってわけか。
「えっと、俺は厨房に行こうとしてて」
「厨房?どうして?」
「夕食の時、鳴宮来て無かったじゃないですか?」
「そうね」
「で、お腹が空いたそうで、俺が取りに行ってるんです。ついでにおやつ貰えないかなって」
先生に説明すると納得顔で頷いた。
「ねぇ、篠宮くん。先生もついていって良いかしら?一人で彷徨っても迷子を卒業できない気がするのよ」
「良いですよ」
「ありがとう。助かるわ」
「じゃあ行きましょうか」
先生に声をかけて歩こうとすると、先生は俺と別方向に歩こうとしていた。
これは想像以上に方向音痴だな。
それから暫く歩き、厨房についた。
途中、先生が何度か俺が前を歩いているのにも関わらず、別方向に進んでおり、探すのに手間取って大分かかってしまった。
この人よくこれで教師になれたな。
「篠宮くん、ごめなさいね」
「あ、いえ」
俺の呆れに気がついたのか、先生は申し訳なさそうに謝る。
「厨房に行きますけど、先生も来ますか?」
「また彷徨いそうだから行こうかな」
先生の言動に呆れながら俺は厨房の中に入った。
早く貰わないと兄様たちとの約束の時間には間に合わない。
もう少しで、鐘の一回目が鳴りそうだし。
「こんばんは~、ヴァンさん居ますか?」
「お?なんだ、ハルヤくんじゃないか。どうしたんだこんな遅くに。明日の朝食ならまだ出来てないぞ」
「いやいや、そんなに食い意地張ってないですから」
俺は目の前の王宮料理長であるヴァンさんの素っ頓狂な解答にツッコんでしまった。
ヴァンさんは俺がこの世界で王子として過ごしていた頃から仕えている。
聞いた話によればもう二十年は勤めているらしい。
人当たりが良く、料理の腕も確かで誰からも信頼されている。
俺の正体について話してはいないはずだが、時より気付いているのではないかと思えてくる行動する。
「じゃあ、何か用か?」
「友人の夕食を貰いに来たんです。あと、ついでに何かお菓子があれば欲しいです」
「友人?あ~、夕食の時に来ていなかった子の事か。用意していた分はもう俺たちが美味しく食べたからな。簡単なものでいいなら作れるが」
「それで大丈夫です」
ヴァンさんの言葉に了承の意を伝えると、冷蔵庫の中からぶつぶつと言いながら食材を取り出す。
この世界、というかこの王城の料理が簡単なものだとしてもそれは地球や日本の簡単な料理とはまるで違う。
本当に簡単な料理なのか、というほどのものが出てくる。
「ねぇねぇ、篠宮くん。少し聞いてもいい?」
料理の様子を見ていると先生が俺の肩を軽く叩いて、俺の注意を引いた。
「なんですか?」
「篠宮くん、間違ってたらごめんね。私と会う前、ナリアス様と話してなかった?」
「えっ?」
「あ、やっぱり違った?」
兄様と話すの見られていたのか‥‥。
でも、先生の話し方からするに、会話の内容までは聞かれていないはず。
「いや、実は俺も道に迷ってて、偶然にい、ナリアス様とあったので厨房までの道をお聞きしていたんです」
「あ、そうなの。やっぱり迷うわよね。でも一度聞いただけでたどり着けるって凄いね。これが若さの違いか‥‥‥」
先生は俺の言い訳をすんなりと信じ、なぜか哀愁感漂う雰囲気を出し、自嘲気味に笑っていた。
なんか申し訳ない事したような気しかしない。
別に年齢とかじゃなくて、単純に俺はこの王城の間取りを把握しているだけでなんだけどな。
「せ、先生も若いじゃないですか」
「いやいや、三十ニ歳なんて篠宮くんからしたらオバさんだよ」
俺のフォローは効果なく、自嘲しながら小さく言った。
というか、先生、三十ニ歳だったのか。
ちゃんとした年齢聞いたの初めてだ。
「いや、先生は三十ニ歳だとは思えないくらいお綺麗ですからね」
「‥‥篠宮くん、ありがとう。でもね、そう言うことは誰彼構わず言うものじゃないんだよ。相手見て言わないと背中刺されちゃう」
先生は俺のこと言葉に若干、笑みを取り戻したかと思ったら、訳の分からないことを言い出していた。
「それはどういうことですか?」
「大人になれば分かることよ。今は肝に命じといてくれれば良いから」
「は、はい」
「面白い会話をしているみたいだな」
先生に対して曖昧な返事をしていると、良い匂いのする料理を持ってヴァンさんがやってきた。
「面白い会話ですか?」
「自覚なしなのか‥‥?えっと、ツキカさんだったかな?」
「えっ、あ、はい。ツキカ・シグレです」
急な質問に自嘲気味だった先生も元に戻ざるを得なかったらしい。
「改めて、俺は王宮料理長をさせてもらってるヴァンだ。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
先生は困惑をしながらもしっかりと挨拶を返す。
「ツキカさんは召喚者たちの保護者代わりなんだよな」
「まぁ、そうですね。でも保護者代理といっても、子供たちはすぐに自分で成長していきますし、私も私自身のことで手一杯で保護者代理なんて肩書きだけですけど」
嬉しそうな哀しそうなよく分からない感情の顔をして、先生は言った。
「そうか。そんなツキカさんにはお土産をあげよう」
そう言ってヴァンさんは鳴宮のための料理の乗っているトレイから小さなものを取り出した。
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