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第二章
父様の計画
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「現状では何もできんだろうな。王とあれど国というものは大勢の民によって支えられている」
「それは市井の者たちのことですか?」
「確かにその者たちの貢献度は高いが、実質的な権力や発言力があるのは貴族だ。下級から上級まで存在し、高位貴族ともなればその発言力は増す」
「つまり父上は高位貴族の顔色を伺うと?」
兄様の顔には軽蔑の色が見え始めている。
当たり前だろう。
今まで尊敬していた父であり王が貴族に恐れて改革をなさないと言っているのだから。
「いや、違う。それを逆手に取るんだ」
父様は何も気にしていないように悪戯っ子のような表情を浮かべるような顔で言った。
その様子や言葉で兄様の父様に対する軽蔑消えた。
「逆手に取る‥‥あぁ、なるほど。そういう事ですか。父上、先ほどは疑ってしまい申し訳ありません」
兄様は父様の言いたいことを瞬時に理解すると、席から立ち上がり父様に謝罪をした。
「気にするな。お前のその気持ちは正しい。民を思う心。それを大切にしなさい」
父様の言葉に兄様はもう一度深々と礼をすると静かに席に座った。
ところでこの場にいる兄様以外の者たちは父様の意図を理解出来ないでいた。
いや、もしかしたら母様は理解しているが、それを表に出していないだけなのかもしれないけど。
まぁ、ともかく俺は全くもってお手上げの状態だ。
「父様、俺にも分かるように説明していただけますか?」
「そうですわ。兄様と父様で納得していないで、お教え下さい」
姉様が俺に同意するように不満そうな声で言った。
「そうだな、簡単に言うと、高位貴族を利用するんだ」
「利用ですか?」
「あぁ。先ほども言ったが、高位貴族の発言力は増す。それを逆に利用する」
「‥‥そう言うことですの、分かりましたわ。なんて簡単なことを気づかなかったのでしょう」
父様の説明に姉様は納得したように声を上げた。
どうやら分からないのは俺だけらしい。
うーん、貴族の言葉?
それも高位貴族の。
後は、利用する?
高位貴族の発言を利用するってことなのは分かるけど、それがどう繋がるのかが全く分からないんだよな。
「あら?ハルヤ、難しい顔をしてどうしたの?」
「お恥ずかしいのですが、父様の仰っていることがもう少しのところで理解できなくて」
俺の悩んでいる顔色が悪かったのか、優しい声で、覗き込んで聞いてきた。
聞かれては仕方ないと、正直に分からないことを答えると姉様ではなく、兄様がニコニコとしながら俺の頭を撫でてきた。
「に、兄様?」
「やっぱりハルヤはまだまだ、子供だね」
戸惑いながら聞くと嬉しさを声に滲ませながら兄様は言う。
「子供ではないです。だってもう十五ですし」
「いやいや、まだ子供だよ。私の中ではハルヤは十歳のままだ」
そう言いながらひたすらに俺の頭を撫でてくる兄様に流石に恥ずかしさが限界だった。
「おっほん、兄様。父様の仰っていたこと結局はどう言う意味なんでしょう」
「あぁ、それか。父上が仰りたいのはね、高位貴族が発言することでその他大勢の貴族たちを取り込もうとしているんだよ。流石に、高位貴族を敵にしてまで反抗しようとする者はいないからね」
「なるほど。ようやく理解出来ました。ありがとうございます」
兄様の説明でようやく理解できた俺は、理解できたことに感動しながら兄様にお礼を言う。
「良いよ良いよ。それよりもっと兄を頼って欲しいな」
「はい」
「メアリーは理解できたかな?」
「あ、はい。ハルヤ様と同様にナリアスの説明で理解しました」
「それは良かった」
メアリーは突然話を振られ、一瞬状況を読み込めていなかったようだったが、なんとか答えていた。
それにしても兄様、この状況でさりげなくメアリーに声をかける優しさ、気遣い、お見それします。
「では、ハルヤ、メアリーよ。この考えに賛同してくれるか?」
「はい。とても良い案だと思います」
「私は陛下のご意向に添います」
俺たちの賛成を聞き届けると父様は首を縦に振り、分かったことを示すように頷いた。
「父上、話は変わるのですが」
「なんだ?」
父様の計画の話が終わると兄様が待っていましたと言わんばかりに発した。
「本日の夕食で召喚者たちに市井への外出許可を出されておりましたよね」
「そうだな」
兄様が夕食の時の話題を出すと、父様は顔を緊張で強張らせた。
無理もないのかもしれない。
護衛をつけるとはいえ、所詮は異世界の者たちだ。
この国のこと、ましてやこの世界のことを少しばかり学んだとはいえ、まだまだ足りない事だらけ。
そんな状態で問題が生じれば、召喚者がいるという事実や外交問題に発展しかねない。
それでも父様が俺たちを市井への外出許可を出したのは信用の表れとも受け取れる。
今から兄様が発する言葉次第で、その信用が、壊れる可能性もないわけでないのだ。
「それにサーナにまで」
そういう兄様の声には羨ましそうな感情が乗っていた。
その声に先ほどまで緊張で顔を強張らせていた父様は拍子抜けしたよな顔をした。
「そうだな」
そして頭を抱えながらため息を吐くように返す。
「ならば、私も市井に行ってもよろしいですか?」
「ナリアス、お前は駄目だからな」
目を輝かせながら兄様は発言するが、父様によって一瞬で却下された。
「何故です?」
「お前は公務があるだろう」
「それはサーナも同じでしょう?」
兄様はわけが分からなそうに父様に聞く。
本当に兄様はこういう時には理解力が欠如するんだよな。
普通の部分では優秀なのに。
「サーナの公務は調整が可能だが。お前のは違う。明後日からリンドブルグ王国への外交にいくのだろうが」
リンドブルグというのはシーリス王国と国境を隔てる国だ。
数代前の国王がリンドブルグの王女を娶ったことでこの国とは親戚関係にある。
確か、数週間後にリンドブルグの伝統的な祭りがあり、その祭りに兄様が代表して行くらしい、とどっかで聞いたような気がする。
「確かにそうですが‥‥。どうしても駄目ですか?」
「駄目だ」
「そうですか‥‥‥分かりました。こればかりは仕方がありませんし。また今度にしようと思います」
兄様は落ち込んだように俯いたが、それはほんの一瞬で気を取り直したように高らかにそう言い切った。
これに父様も再び頭を変えることになった。
「本当にハルヤのことになると、ナリアスは周りが見えなくなるのだから」
父様が頭を抱えている横で母様が微笑を浮かべながら俺と兄様を見ながら言った。
「優秀だというのに、それだけが唯一の欠点だな。兄弟中が良いのは喜ばしいことだが」
「そうですわね」
父様の呟きに母様が相槌を打つ。
「ともかくナリアスは明日は外交の準備を進めてくれ」
「承知しました」
父様はもう諦めたように息を吐くと、キリッとした顔に戻り兄様に伝えた。
「メアリーよ」
「えっ、あ、はい、なんでしょうか」
兄様の奇行を対処し終えた父様はメアリーの名前を呼んだ。
当のメアリーはやはり慣れないのか、驚いたが声をあげ、なんとか冷静さを保ちながら反応する。
「城下に行ってみるか?」
「えっ。しかし私は王城に仕える一メイドですので‥‥‥お暇をいただくなど」
「休息は大事だろう。それに、これは立派なメイドとしての仕事だ」
「わ、分かりました」
「よろしい。では、ハルヤ、サーナ、それにメアリー、明日の準備でもしておいてくれ」
「「「はい」」」
父様は俺たちが反応したことを確認すると、今日はお開きだと、言いこの場を締めた。
俺たちは父様、母様の退室を見送ると姉様と兄様それにメアリーと共に部屋に帰った。
「それは市井の者たちのことですか?」
「確かにその者たちの貢献度は高いが、実質的な権力や発言力があるのは貴族だ。下級から上級まで存在し、高位貴族ともなればその発言力は増す」
「つまり父上は高位貴族の顔色を伺うと?」
兄様の顔には軽蔑の色が見え始めている。
当たり前だろう。
今まで尊敬していた父であり王が貴族に恐れて改革をなさないと言っているのだから。
「いや、違う。それを逆手に取るんだ」
父様は何も気にしていないように悪戯っ子のような表情を浮かべるような顔で言った。
その様子や言葉で兄様の父様に対する軽蔑消えた。
「逆手に取る‥‥あぁ、なるほど。そういう事ですか。父上、先ほどは疑ってしまい申し訳ありません」
兄様は父様の言いたいことを瞬時に理解すると、席から立ち上がり父様に謝罪をした。
「気にするな。お前のその気持ちは正しい。民を思う心。それを大切にしなさい」
父様の言葉に兄様はもう一度深々と礼をすると静かに席に座った。
ところでこの場にいる兄様以外の者たちは父様の意図を理解出来ないでいた。
いや、もしかしたら母様は理解しているが、それを表に出していないだけなのかもしれないけど。
まぁ、ともかく俺は全くもってお手上げの状態だ。
「父様、俺にも分かるように説明していただけますか?」
「そうですわ。兄様と父様で納得していないで、お教え下さい」
姉様が俺に同意するように不満そうな声で言った。
「そうだな、簡単に言うと、高位貴族を利用するんだ」
「利用ですか?」
「あぁ。先ほども言ったが、高位貴族の発言力は増す。それを逆に利用する」
「‥‥そう言うことですの、分かりましたわ。なんて簡単なことを気づかなかったのでしょう」
父様の説明に姉様は納得したように声を上げた。
どうやら分からないのは俺だけらしい。
うーん、貴族の言葉?
それも高位貴族の。
後は、利用する?
高位貴族の発言を利用するってことなのは分かるけど、それがどう繋がるのかが全く分からないんだよな。
「あら?ハルヤ、難しい顔をしてどうしたの?」
「お恥ずかしいのですが、父様の仰っていることがもう少しのところで理解できなくて」
俺の悩んでいる顔色が悪かったのか、優しい声で、覗き込んで聞いてきた。
聞かれては仕方ないと、正直に分からないことを答えると姉様ではなく、兄様がニコニコとしながら俺の頭を撫でてきた。
「に、兄様?」
「やっぱりハルヤはまだまだ、子供だね」
戸惑いながら聞くと嬉しさを声に滲ませながら兄様は言う。
「子供ではないです。だってもう十五ですし」
「いやいや、まだ子供だよ。私の中ではハルヤは十歳のままだ」
そう言いながらひたすらに俺の頭を撫でてくる兄様に流石に恥ずかしさが限界だった。
「おっほん、兄様。父様の仰っていたこと結局はどう言う意味なんでしょう」
「あぁ、それか。父上が仰りたいのはね、高位貴族が発言することでその他大勢の貴族たちを取り込もうとしているんだよ。流石に、高位貴族を敵にしてまで反抗しようとする者はいないからね」
「なるほど。ようやく理解出来ました。ありがとうございます」
兄様の説明でようやく理解できた俺は、理解できたことに感動しながら兄様にお礼を言う。
「良いよ良いよ。それよりもっと兄を頼って欲しいな」
「はい」
「メアリーは理解できたかな?」
「あ、はい。ハルヤ様と同様にナリアスの説明で理解しました」
「それは良かった」
メアリーは突然話を振られ、一瞬状況を読み込めていなかったようだったが、なんとか答えていた。
それにしても兄様、この状況でさりげなくメアリーに声をかける優しさ、気遣い、お見それします。
「では、ハルヤ、メアリーよ。この考えに賛同してくれるか?」
「はい。とても良い案だと思います」
「私は陛下のご意向に添います」
俺たちの賛成を聞き届けると父様は首を縦に振り、分かったことを示すように頷いた。
「父上、話は変わるのですが」
「なんだ?」
父様の計画の話が終わると兄様が待っていましたと言わんばかりに発した。
「本日の夕食で召喚者たちに市井への外出許可を出されておりましたよね」
「そうだな」
兄様が夕食の時の話題を出すと、父様は顔を緊張で強張らせた。
無理もないのかもしれない。
護衛をつけるとはいえ、所詮は異世界の者たちだ。
この国のこと、ましてやこの世界のことを少しばかり学んだとはいえ、まだまだ足りない事だらけ。
そんな状態で問題が生じれば、召喚者がいるという事実や外交問題に発展しかねない。
それでも父様が俺たちを市井への外出許可を出したのは信用の表れとも受け取れる。
今から兄様が発する言葉次第で、その信用が、壊れる可能性もないわけでないのだ。
「それにサーナにまで」
そういう兄様の声には羨ましそうな感情が乗っていた。
その声に先ほどまで緊張で顔を強張らせていた父様は拍子抜けしたよな顔をした。
「そうだな」
そして頭を抱えながらため息を吐くように返す。
「ならば、私も市井に行ってもよろしいですか?」
「ナリアス、お前は駄目だからな」
目を輝かせながら兄様は発言するが、父様によって一瞬で却下された。
「何故です?」
「お前は公務があるだろう」
「それはサーナも同じでしょう?」
兄様はわけが分からなそうに父様に聞く。
本当に兄様はこういう時には理解力が欠如するんだよな。
普通の部分では優秀なのに。
「サーナの公務は調整が可能だが。お前のは違う。明後日からリンドブルグ王国への外交にいくのだろうが」
リンドブルグというのはシーリス王国と国境を隔てる国だ。
数代前の国王がリンドブルグの王女を娶ったことでこの国とは親戚関係にある。
確か、数週間後にリンドブルグの伝統的な祭りがあり、その祭りに兄様が代表して行くらしい、とどっかで聞いたような気がする。
「確かにそうですが‥‥。どうしても駄目ですか?」
「駄目だ」
「そうですか‥‥‥分かりました。こればかりは仕方がありませんし。また今度にしようと思います」
兄様は落ち込んだように俯いたが、それはほんの一瞬で気を取り直したように高らかにそう言い切った。
これに父様も再び頭を変えることになった。
「本当にハルヤのことになると、ナリアスは周りが見えなくなるのだから」
父様が頭を抱えている横で母様が微笑を浮かべながら俺と兄様を見ながら言った。
「優秀だというのに、それだけが唯一の欠点だな。兄弟中が良いのは喜ばしいことだが」
「そうですわね」
父様の呟きに母様が相槌を打つ。
「ともかくナリアスは明日は外交の準備を進めてくれ」
「承知しました」
父様はもう諦めたように息を吐くと、キリッとした顔に戻り兄様に伝えた。
「メアリーよ」
「えっ、あ、はい、なんでしょうか」
兄様の奇行を対処し終えた父様はメアリーの名前を呼んだ。
当のメアリーはやはり慣れないのか、驚いたが声をあげ、なんとか冷静さを保ちながら反応する。
「城下に行ってみるか?」
「えっ。しかし私は王城に仕える一メイドですので‥‥‥お暇をいただくなど」
「休息は大事だろう。それに、これは立派なメイドとしての仕事だ」
「わ、分かりました」
「よろしい。では、ハルヤ、サーナ、それにメアリー、明日の準備でもしておいてくれ」
「「「はい」」」
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