転生なの?召喚なの?

陽真

文字の大きさ
25 / 36
第二章

城下へ②〜護衛選抜⑵

しおりを挟む
「え、じゃあ、リーリルさんが先生の護衛を務めるんですか?」
絢香がリーリルの説明を聞いて疑問に思ってのか、質問をしていた。
「それが、一番最善だと思います。ツキカさんの希望によりますが」
リーリルはそう言いながら先生の方へ視線を投げる。
それに流されるように部屋にいた全員、いや、シラク以外が先生の方を向いた。
シラクは面倒くさそうに大きな欠伸をしていた。

「あ、わ、私、その、できればリーリルさんにお願いしたいです‥‥」
急に視線を向けられあたふたしながら先生は答える。
「先生可愛い‥‥」
「はへぇ?」
そんな様子に春川がポツリと呟く。
その声は先生にばっちり聞こえていたようで先生は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「あ、すみません。つい」
「あ、あぁ。そ、そうだよね。ははは」 
春川と先生はお互いに顔を背けあって気まずそうな雰囲気を醸し出している。
「もう、先生も空樹ちゃんも気まずい雰囲気引っ込めて」
「うん、ごめんね。絢香ちゃん」
「早見さんの言う通りね」
絢香の一声でなんとか気まずい雰囲気を脱すると、護衛の紹介が再開された。

「えっと、わ、私は第二師団し、所属のル、ルカ・ア、アグネスト‥‥です」
次に紹介された護衛候補は自信なさげに挨拶をする。
騎士とは思えないほどに彼女はオドオドしており、こっちまで大丈夫かと思ってしまうほどだ。
「ルルカ・アアグネストさん?」
「ひっ!ち、違います‥‥」
雫は確認するために尋ねると、多分ルカなんだろうけど、怯えたように答える。
尋ねた雫は何かをしてしまったのかと困惑していた。
「おっほん。えぇ~、この者の名前はルカ・アグネスト。第二師団所属の者です」
流石にみかねたガストン騎士団長が代わりに紹介してくれた。
それにしても今まで第一師団だったのに、急に第二師団の者に変わったな。
第一師団の人員を減らしたくなかったのだろうか。
護衛の方に何人か割けば、王城や王族の警護に差し支えると判断したのかもしれないな。
「ルカは所属こそ第二師団ですが、実力は第一師団にも引けを取らないと思っていますので、ご安心下さい」
俺たちのルカに対しての空気を察してだろう、ガストン騎士団長はフォローをするように言う。
にしても、ガストン騎士団長にそこまで言わせるって、ルカは相当な実力者なんだろう。
そして続けての紹介が行われる。

「我は第二師団所属のハーネス・ミスレイラという者だ。我は剣を扱うことが上手いと自負しているぞ!」
‥‥‥紹介したのだが‥‥なんとも言えない微妙な雰囲気に陥ってしまった。
そして静かにハーネスをガストン騎士団長が強烈な拳骨を食らわせる。
「痛いっ!なにをするんですか」
相当痛いのかハーネスは頭を抑え悶えている。
「自業自得だ。なんだ今の自己紹介は!お前の問題行動を今まで何度、目を瞑ってきたか。忘れたとはいうまいな!」
「い、嫌だなぁ、ガストン騎士団長。覚えてますとも。確か、ひ、ふ、み、よ‥‥五回?」
「阿保っ!王城での器物損害、城下での暴力沙汰、騎士団宿舎の破壊行為。計八回だ。今回それらの挽回にと特別に陛下と話し合い候補を絞り出したというのに‥‥。それにお前にも忠告したつもりだが、これ以上の愚行は看過しない、次に問題を愚行を働けば、騎士団から追い出すと」
ガストン騎士団長は子供が見たら、とういうか、あれで見られたら誰でも泣きそうな顔でハーネスを睨みつける。
ナーマはそんな父の様子を見ながら目をぱちくりしている。
他の騎士たちは皆怯えたような、同情したような目をしていた。

「分かっていますっ。すみません、つい、悪ノリが過ぎてしまって」
「今更、言い訳を言ったところで遅いわ!」
ガストン騎士団長はハーナスに一喝する。
「まぁまぁ、良いではないか。ガストン。今までの問題行動に比べたら可愛いものだろう?」
「しかし、陛下‥‥‥。そこらの護衛の任務ではないのです」
「お前の言いたい事も分かるがな今回の事は挽回にと決めたこと。ならば、チャンスを与えてやろうではないか」
「‥‥‥陛下がそう仰るのならば」
父様とガストン騎士団長のハーネスの問題を巡った攻防戦の末はガストン騎士団長の根負けとなった。

「ハーネス・ミスレイラ」
「はい!な、なんでございましょうか、陛下」
ハーネスは父様に緊張してか、言葉がなんかおかしい。
第二師団が国王から声をかけられることなんて滅多にないはずだから仕方がないのだけれど、ガストン騎士団長との対応の差‥‥‥‥。
「今回の任務で最後のチャンスを与えてやる。もし問題を起こしたら場合は騎士の職を剥奪する。そうなれば二度と騎士にはなれないと思え」
「‥‥はっ!このハーネス・ミスレイラ、しかと心に刻みました」
父様は静かにでも、確かに威厳を持った声でハーネスに忠告する。
その言葉にハーネスはさっきと人間が変わったように素早く片膝を付くと力強く答えた。
ハーネスの力強い言葉に父様は小さく満足そうに頷いた。
ガストン騎士団長は尊敬の眼差しで父様を見ているようだった。

ここまで色々あり長くなってしまったけど、人数的にどうやら最後の騎士の紹介に回ってきたようだった。
「では、最後は私ですね。私はリシャーナ・ルーグストです。第二師団に所属しています。日頃街の警備などについていますので、分からないことがあれはお聞きください」
最後の一人が終わり、少しドタバタとした自己紹介タイムが終了した。
そして、それぞれ誰がどの騎士にするかを話し合うことになった。

「先生はリーリルさんで決まりだろ。絢香、春川と中冨は、ミラさん、ルカさんとリーシャさんか?」
「うん、出来ればそうして欲しいかな。二人はどう?」
「私もその方が‥‥嬉しい」
「私は別にどっちでもいいわ」
雫が三人に問いかけると、絢香が最初に答え、二人に意見を求めた。
二人はそれぞれ意見を言い、女性騎士三人が女子三人に付くことになった。
男子はもちろん男性騎士が付くことになり、全体の護衛ペアの内訳は先生とリーリル、春川とルカ、ミラと絢香、中冨とリーシャ、雫とファルド、鳴宮とハーネス、そして俺はナーマが護衛についてくれることとなった。
誰に誰が付けるかはジャンケンで決めたので、ほとんど運だったけど、どうやら俺は運が良かったらしい。
ちなみに、俺は全勝した。
ちょっと嬉しかった。

「全員が護衛が決まったようだな。では、今から水の時刻までを期限として、城下への外出を許可する」
父様の宣言で俺たちは街へ繰り出した。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

処理中です...