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成田長康
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儀式を終えると政虎は、足利義氏、近衛前久、上杉憲政の前から退出する。
居並ぶ関東諸侯が、皆、政虎に頭を下げた。
だが一人、大きな顔をした武者が、頭を下げず、胸を張ってい威張っている。
なんじゃ此奴?
政虎は眉を顰めたが、何も言わずその場を過ぎる。
後ろに控えていた斎藤朝信が睨み付け、何か言おうとするのを、柿崎景家が袖を引いて止める。
陣屋に戻ると政虎は、長尾憲景を呼んだ。
「あの御仁は何かね?」
政虎は威張っていた武者の事を尋ねた。
「成田下総守長康どのにございます」
「威張っておるのは家風か?」
皮肉な笑みを浮かべて政虎が問うと、真面目な顔で、いえ、と憲景は首を振る。
「成田家は藤原北家の流れを汲む名門で、祖先が八幡太郎にも礼を取らなかったそうです」
「それでわしにも、礼はしないと言うことか」
ええまぁ、と憲景は渋い顔で答える。
わざとだな、と政虎は見ている。
なぜならあまりにも、露骨過ぎたからだ。
北条からの調略の手が、かなり深く関東諸侯に伸びている。
城攻めにやる気があるのは、安房の里見義弘、常陸の佐竹義昭、そして武蔵の太田資正ぐらいだ。
他の者は日和見で、攻めるように命じても。
「支度をしておりますので、しばしお待ちを」
とか、
「今は機を見ておるますので」
とか言って、まともに戦おうとしない。
おそらく成田長康は、既に北条に通しており、政虎や朝信が腹を立てて、
「無礼者め」
と言えば、
「何を言われるか」
と言って先祖の逸話を持ち出し、
「この様な物知らずのお方の陣にはおれませぬ」
とで言って、陣払いをするつもりなのだろう。
呆れるのは、ならば初めから出ていけばよい。
だがそれは出来ない、なぜなら名門としての体面があるからだ。
居並ぶ関東諸侯が、皆、政虎に頭を下げた。
だが一人、大きな顔をした武者が、頭を下げず、胸を張ってい威張っている。
なんじゃ此奴?
政虎は眉を顰めたが、何も言わずその場を過ぎる。
後ろに控えていた斎藤朝信が睨み付け、何か言おうとするのを、柿崎景家が袖を引いて止める。
陣屋に戻ると政虎は、長尾憲景を呼んだ。
「あの御仁は何かね?」
政虎は威張っていた武者の事を尋ねた。
「成田下総守長康どのにございます」
「威張っておるのは家風か?」
皮肉な笑みを浮かべて政虎が問うと、真面目な顔で、いえ、と憲景は首を振る。
「成田家は藤原北家の流れを汲む名門で、祖先が八幡太郎にも礼を取らなかったそうです」
「それでわしにも、礼はしないと言うことか」
ええまぁ、と憲景は渋い顔で答える。
わざとだな、と政虎は見ている。
なぜならあまりにも、露骨過ぎたからだ。
北条からの調略の手が、かなり深く関東諸侯に伸びている。
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他の者は日和見で、攻めるように命じても。
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とか、
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「何を言われるか」
と言って先祖の逸話を持ち出し、
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