唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ

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六話

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村の村長から全員に召集がかかった。

特に20代の女性に。

逆らうこともできないので向かうことに。そこで受けた説明はこうだ。

第二王子殿下がある女性を探しているという。その女性は銀髪に紫の瞳をもっている。

平気よ。だってこの魔道具でわたしはいまありふれた茶髪に茶色い瞳だもの。

鼓動が速くなる。

私たちを見渡して兵士の1人がいないか‥‥と呟いた。

その時だった。

第二王子殿下本人が現れたのだ。

ルーカスをその腕に抱いて‥‥。

「ルーカス!!」

思わず叫んでしまう。

「失礼、君がこの子の母親かな?」

「そうです。」

「一緒に来てもらえるかい?話がしたい。」

拒否権はない。碌な荷造りもできないまま、馬車に乗せられる。膝の上にはルーカス、向かいには王子殿下。

どうしろと?

俯いてルーカスを必死に抱きしめる。奪われないように‥‥。

「そんなに緊張しないでくれ‥‥と言っても無理な話か。」

「あの‥‥何か御用でしょうか?こんな辺鄙なところまでわざわざ王子殿下がいらっしゃるだなんて。」

「名前を教えてもらってもいいだろうか?」

「名乗るほどの者でもございません。」

「出身は?その子の父親は?」

「‥‥。」

殿下の質問に答えないなんて不敬だと言うことはわかっている。でも怖くて。ルーカスを奪われてしまう。


「僕、お名前は?」

「るーかす」

「ルーカスか。素敵な名前だね。」

「うん。おじさんだぁれ?」

「ルーカス!」

「ああ、いいんだよ。子どもの言うことだ。咎めたりしないさ。それに綺麗な銀髪に青い瞳だね。」

鼓動が早くなる。

「どちらも平民にはなかなか現れない色だ。」

「ええ‥‥。」

「単刀直入に聞く。2年前、王都で君はぼろぼろの状態で走っていてぶつかった男に抱かれただろう?」

「?!っ‥‥なぜ?」

「その時の男が私だ。」

不意に殿下の瞳を見ると吸い込まれるような透き通った青い色をしていた。あの日見た妙に惹きつけられた瞳の色と同じ。

それに‥‥ルーカスによく似ている。

「まさか‥‥殿下でしたの?」

「あれからずっと探していたんだ。話がしたい、と。夕方には戻ると手紙に書いてあっただろう?一応部下に護衛も兼ねて見張らせていたんだがちょうど通りで事件が起きて加勢に行っていたらしい。そのわずかな隙に君はいなくなってしまった。」

「申し訳ございません。」

「謝って欲しいわけじゃ無い。‥‥君の無事が確認できてよかったよ。」

「あのっ‥‥ルーカスは王家の血を引くと言うことですよね。ーー私たちはどうなりますか?」
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