39 / 52
第2部
第11話:千年世界の引き籠り魔女②
しおりを挟むどれだけ経ったのだろう。結構歩かされたし、なんだか色んな木の実を採らされた。
採ってきた植物はマナリーフの効果を身体に取り入れやすくするための成分だとか、錠剤にするための結合剤だとか…正直もうあまり覚えていない。とりあえず、必要な物全てそろえて縁側に戻った僕は、そのまま倒れるように前のめりになった。
「お疲れですね」
マナリーフを全て挽き終わっていたディアがお茶を持ってきてくれた。魔法でひんやり冷やしてくれたお茶が喉を通って全身にしみわたる感覚がする。どうやら僕はかなり喉が渇いていたらしい。
この家に最初に入れられた時小休憩はしていたが、今日はずっと歩きっぱなしなのだ。
そろそろ休みたい。
「休んどる場合ではないぞ童、先ほど持ってきたものを擦ってマナリーフの粉末と混ぜるのじゃ」
まだまだ休めないみたいだ…
イブリースさんはそう言うと僕の目の前にゴトンと食器のようなものを置いた。
大きなすり鉢と棒のセットだ。
今更文句も言えず、先ほど採ってきた木の実の皮を剥き、ナイフでなるべく細かく刻む。材料全てをすり鉢に入れてさらに細かくしていく。
これも疲れていないときなら案外楽しいかもしれないが木の実が思いのほか固く、身体が疲労を訴えている状態ではしんどかった。かなり細かくなるまで擦りつぶさないといけないみたいで、慣れない作業なのも相まってなかなかうまくいかない。
「私はあまり疲れていないので変わりましょうか?」
「う…ディア有難う…!」
「なんじゃディアボロス、その童には随分甘くてキモいのう」
イブリースさんはやれやれと言わんばかりに大きなため息を吐いた。
というかイブリースさん、キモいという言葉とか使うんだ…というツッコミもする元気もなく、僕はディアに任せて両手を広げて縁側に“大”の字になって寝転がった。
それからどれくらいたっただろうか。
あまり経っていないとは思うけど、ゴリゴリと材料を擦る一定のリズムを聞いていたら少しうとうとして眠っていたみたいだ。真横で、イブリースさんが擦りつぶされた薬品を見ている。
「うむ、これくらいで良いじゃろう」
僕も容器の中を覗く。
少し粘り気のある緑色の塊が出来上がっていた。粉っぽさもなく綺麗に擦れたようだ。
「これを型に詰めて乾燥させればマナの秘薬の完成じゃ。
日も暮れてきておる。これ以上時間をかけてられん。乾燥機も十分温まっておるから型に詰め次第投入していくぞ」
そういうとイブリースさんはプラスチックの小さなくぼみの付いた容器とスプーンを2本用意してくれた。先ほど休んで体力も戻ったし、すくって薬を型に詰めるくらいなら僕にも出来る。
空気が極力入らないようにゆっくり詰めていく。1cm未満のくぼみに流し込んでいくのは、それなりに集中力が必要だった。詰め終わったら即イブリースさんによって乾燥機の前に運ばれる。全ての薬を型に詰め終えると、緊張の糸が切れて一気に力が抜けた。
問題が無ければ数時間後には固まるらしい。
「うむ、とりあえず終了じゃ。2人ともお疲れ様じゃ」
全ての容器を乾燥機に設置し終えたイブリースさんはパチパチと手を叩いた。後は数時間待つだけで全て終わる。慣れない作業で疲れたが、まあいい経験になったかな。
「少し早いが夕飯の支度でもするかの。おぬしらも食べていくじゃろ?」
「えっ、良いんですか! 有難うございます」
遅めの朝食はしっかり食べたがそういえば昼食は食べていない。
お茶と茶菓子は頂いたがそれだけではお腹は膨れないのでペコペコだ。
なんの料理作ってくれるのかなぁと思っていたらイブリースさんは僕の方を向いて台所の方を指さしてきた。なんだろう、嫌な事を言われる気がする。
「童、台所を使う許可をやろう。美味い飯を期待しておるぞ」
なんかちょっとそうなる気はしてた!
してたけど、普通この流れで客にご飯作らせるとかある?
「マナの秘薬の材料提供及び製造の手伝い報酬じゃ。それが夕食なのだから安いものじゃろう」
「友のよしみで報酬なしで良いって言ってたじゃないですか!」
「おぬし、いつからわらわの友になったというのだ?」
「……」
「聞いておるか、友のおまけで着いてきた童」
「…はい、作ります」
これは何を言っても無駄だと思ったし、このまま口論を発展させても多分僕が負ける。僕はトボトボと台所に入った。
調理スペースも広めで一応ガスは通ってるみたいで作業しやすそうだ。
冷蔵庫にはいろんな種類の野菜と、肉類も少し入っていた。これはなんの肉なのだろう。鳥でも牛でもなさそうだ。
「それはウマ助86世だったものじゃ」
「その言い方嫌すぎる…」
確かに僕たちは命を頂いているが、先ほど生きている動物たちと戯れた後だとなんだか複雑な気持ちになってくる。
「先に手短につまみを作れ。ディアボロスと晩酌するのでな」
「うう…どうしてこんな目に…」
ディアの方をチラリと見ると、少し申し訳なさそうな顔をしていた。動くに動けないといった雰囲気で、多分イブリースさんに手伝わないよう釘でも刺されたのだろう。まあ普段僕がメインで料理しているし、今日もディアにはすごく助けられたので少し豪華なものでも作ろうかな。
先につまみを作れと言われたので、角切りベーコンとキノコの炒め物を作った。串で刺しているので片手で食べやすいだろう。出来立ての良い香りのする串焼きを持って行きながら、なんで僕は食べられないんだろうと思った。つまみ食いできる量を作れば良かったと若干後悔した。
二人の前に串焼きを置くとイブリースさんに『悪くない』と言われた。とりあえず気に入ってもらえたようだ。
僕自身もすごくお腹が空いていたのですぐさま台所に戻って調理を始めた。
居間ではイブリースさんとディアがお酒を片手に話し始めたようだ。
0
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】神子は二度、姿を現す
江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結
ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。
死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが
神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。
戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。
王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。
※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。
描写はキスまでの全年齢BL
【本編完結】再び巡り合う時 ~転生オメガバース~
一ノ瀬麻紀
BL
前世で恋人を失い、自身も命を落とした僕は──異世界で双子の兄として転生した。
新たな出会いと、再び芽生える恋心。
けれど、オメガとしての運命は、この世界でも僕を翻弄していく。
これは、前世の記憶を抱えた僕が、二度目の人生を懸命に生きる物語。
✤✤✤
ハピエンです。Rシーンなしの全年齢BLです。
よろしくお願いします。
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる