暁の悪魔達の狂愛物語【完結】

ノノノ

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第2部

第11話:千年世界の引き籠り魔女⑤

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【side:ハル】
―――――――――



アカツキ君とディア君と別れた私は、ルキ君の待っているテントへ戻っていった。外はいつの間にか夕日が沈み、夜になっていた。
ルキ君はテント近くの焚き火の前に座り、鍋をお玉でかき混ぜているようだ。離れたところから歩いてくる私に気付いたルキ君は手を大きく振った。

「ああ、ハルお帰り! 遅かったな。ご飯作ってあるけど食べるか?」

ルキ君は火にかけていた鍋を地面に置いた。
良い香りが漂ってくる。角切りした根菜と塩漬けした肉の雑炊のようだ。

「有難う。食事は私の役割なのに申し訳ないね」

「気にするな! まあ、簡単な物しか作れないから口に合うか分からないけどな」

「……」

私はずっと、アカツキ君からマナの秘薬を受け取ったら、ルキ君になんと言って渡そうか考えていた。
喜んでもらえるだろうかと想像するだけで胸が温かくなった。
勿論、今でもこれを全てルキ君に渡すつもりでいる。

だが私には先に言うべき事があると感じた。

どう話を切り出せば良いか分からず、彼から少し離れた位置で立ち尽くしていた。
ルキ君は不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。私は今どんな表情をしているのだろう、なんだか少し心配されているようにも見える。

「ルキ君…私は君に嘘をついている」

やっとの思いで私の口から出たのはそんな言葉だった。
自分でも『なんでこう言ったのだろう』と思ってしまった。言葉の選択を間違えてしまったかもしれないと思いつつも、これが言いたかった言葉だという気持ちもある。

ずっと秘密にして、今の穏やかな関係を続けていたいと思っていた。
だけどアカツキ君とディア君を見て、相手の全てを受け入れて恋人のように仲睦まじく生きていけるのもまた素敵だと思うようになった。

私は昨日まで、普段のアカツキ君はディア君に助けられて生活していると思っていた。それは危険な時も、普段の身のまわりの事も。
私がアカツキ君のを解くと言った時、事情は分からないがディア君はそれを恐れていたようだった。それを安心させるかのように手をつなぐアカツキ君を見て、正直とても眩しく感じた。

彼らはお互い助け合い、支え合って生きているのだと理解した。

ルキ君が手を差し伸べてくれるのが、前を歩いてくれるのが嬉しかった。甘える事を許されなかった私は、彼の優しさがとても心地良かった。彼に自分の正体を悟られるのが怖かった。きっと今の関係が崩れ、天界に居た頃のように格差が生まれてしまうと思ったから。
でもようやく気付いた。私は君に支えられたいという気持ちから、君を支えたいと願うようになっていた。

ルキ君ならきっと、私の正体が分かっても今まで通りに接してくれる。
嘘偽りのない関係でいられたら、きっと今以上に素敵だろう。

「嘘ってどれのこと?」

ルキ君は一瞬だけ驚いたが、穏やかな笑顔でそう聞いてきた。
やはり彼は、私が何かを隠していることには気付いていたのだろう。
それでいてずっと一緒に居てくれたのだ。

「私は…好きなものを自分の意志で決めて買うことが出来る、好きな食べ物を自分で選ぶことが出来る、好きな場所に1人で行き、何をするか決めることが出来る」

「うん」

「私はなら1人でも出来る」

方法も知ってる、調べることが出来る。全てを完璧にこなすことが出来る。
他の人間や悪魔に出来て私に出来ないことは何もない。
たとえルキ君の力がなくても…

「そっか。じゃあ、俺はもう必要ないかな?」

そう言うルキ君は悲しそうで、だけど同じくらい安心したような顔をしていた。
私はすぐに首を横に振った。

「私にはルキ君が必要だ。病める時も健やかなる時も一緒に居たい」

「…はあぁ!? その言葉の意味分かってるのか?」

「分かっているよ」

その言葉にルキ君は今まで見たこともないくらい大きく口を開けて驚いていた。頬も赤くなっていて照れているようだ。私が真っすぐ彼を見つめると、口をパクパクさせながら目を逸らす姿が愛らしかった。
普段は頼りがいがあって真っすぐな彼は、いまだ他者からの好意には慣れていないようだ。

「理由を聞いてくれないか?」

「…やだ」

「意地悪だね」

「ハルには言っていないけど俺は人間に酷い事をした。それを知ったら君は俺に失望する。一緒に居る価値なんてないよ」

私は彼と出会った時、彼の頭に触れて記憶を覗いた。だから本当は全て知っている。
酷いことと言うなら、私の抱える罪の方が大きい。
それでも私は君と居たい。君に比べれば私は我儘で自分勝手なのだ。

「私は気にしないよ」

私がルキ君に近づくと、彼は慌てたように後ろに逃げようとする。
行かせまいと彼の片手を掴み、私の元を引き寄せると羽を出現させて彼の背中へ羽を伸ばす。人間の全長より大きな羽を彼を覆うように曲げると、ルキ君は私の羽の内側にすっぽりと収まった。

「えっ? えっ?」

「逃げないでおくれ」

ルキ君は逃げようと身をよじっていたが、背後も私の羽で閉じ込められていることに気付くと逃げるのを諦めたようだ。彼の額に私の額をコツンと合わせる。頭部から生えている羽も伸ばし、彼の後頭部を優しく包み込む。
ゼロ距離で目と目が合う。
揺れ動く金色の瞳は、光り輝く金星のようにとても美しかった。

「話したいことがあるんだ」

これから告げるのは、君の為だけに考えた拙い愛の言葉だ。
どうか君には、聞いてほしい。

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