【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩

文字の大きさ
14 / 35

14

しおりを挟む
案の定ユウリは興奮と部屋の探索で疲れてすぐに眠りについてしまった。

私とウィリアムはまだ眠るには少し早いので2人でソファーに座りお酒を嗜む事にした。

するとウィリアムがお酒の力もあったのか話しかけてくる。

「今日、パンケーキを食べた。あれは君が作ったそうだな」

アルバートに口止めしたが無駄だったようだ。

「お口に合いませんでしたか?」

嫌味でも言うのかと思ったがどうやら違うようだ。

「いや、美味しかった」

意外な言葉に驚いた。

「それは良かったです。また公爵家の嫁がそんな事をするなと言われるかと」

「そんな事は...ない」

そう言いながらも少し思ったのか言葉を切る。

「いや、前の私ならそういったかもしれない、でも、その良ければまた食べたいと...思った」

ウィリアムは顔を手で隠すが間から頬が赤らむのが見える。

ユウリが変わっていっているように彼も変わっていっているのだろう。
それなら昼間の事を彼に話してもいいのかもしれないと思った。

私は立ち上がりウィリアムの横に座り彼を見た。

「またいつでも作ります。私はあなたの妻なんですから、ユウリを大切にするようにあなたも大切に思っています」

そう言って大きな手の甲に自分の手を添えた。

ウィリアムはびっくりしながらも、私の顔をみて軽く微笑んだ。

ずっと無表情で感情をあまり出さないウィリアムの笑顔を初めて見た気がした。

「ありがとう」

そう言って私の手を掴み指先に口づけをする。

それには今度は私の方がびっくりしてしまった。
外国なら当たり前の行動かもしれないが私には少し刺激が強かった。

そんな動揺する私にウィリアムはニヤリと笑う。

「最近の君に行動には驚かされてばかりいたが、そういう顔もするんだな」

なぜか嬉しそうに笑い私の髪を掴みまた口付けをする。

なんか体が近くなりいい雰囲気に思わず後ずさる。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

ウィリアムは面白くなさそうに少しいじけた顔を私に向けてくる。

「そ、そのユウリがいますから」

起きたらと思うと気が気ではない、それに今夜はもっと大事な話をしたかった。

私は息を飲み込みウィリアムに近づくと手を掴んで甲を見つめる。

すると右手の甲にユウリと同じようなたたかれた痕がある事を確認した。

「やっぱり」

私はウィリアムの手の甲の傷跡を優しく撫でる。

「この傷は?」

私がウィリアムの目を見つめるとバツが悪そうに手を引いた。

「なんでもない、子供の頃の傷だ」

ウィリアムの顔がまた無表情になってしまった。

「これはユリベール夫人にやられたのですか?」

家庭教師の名前を出すとウィリアムは何故かとばかりに目を見開く。

「アルバートから聞いたのか!」

私はゆっくりと首を横に振る。

「いえ、今日ユウリにも同じ痕がありました。まさかと思ってユリベール夫人の事を聞いたらあなたの家庭教師でもあったと聞き嫌な予感がしたのです...こんな予感が外れて欲しかったけど...」

ウィリアムはユウリが自分と同じ事をされたと悲しい顔をする。

「これはちゃんとできない私とユウリが悪いんだ」

ウィリアムは辛そうに手を握りしめている。その手は微かに震えているように見えた。

幼少期よりそれが当たり前だったのだ。なかなか否定できるものでもないのかもしれない。

「ユリベール夫人の事は私に任せてもらえませんか?」

私のお願いにウィリアムは視線を背けたまま、ゆっくりと頷いた。



次の日私はユウリの勉強の時間、隣の部屋で待機していた。

ユウリに言うと態度でバレてしまいそうだったので秘密にしてアルバートとアンと共に扉の前に立っている。

私はユウリに何かあったらと思うとじっとしておれず、扉に耳をくっつけて集中して中の音を拾っていた。

「こんな事もわからないのですか!  これだから甘やかされてる子は!」

バシッ!

「やっぱり...」

何か叩かれる音に私は扉を勢いよく開いた!

「キャッ!」

するとユリベール夫人はいきなり現れた私達に驚いて声をあげる。

そして私を見るとハッとして手に持っていた物を後ろに隠した。

私はツカツカと近づくとユリベール夫人の前に仁王立ちして手を差し出す。

「今隠したものを出しなさい」

「お、奥様これはなんでもありま...」

「出しなさい」

有無を言わせず睨みつける。

夫人は恐る恐る手に持っていたしなる指し棒のようなものを出した。

「今ユウリをこれで叩いたわね」

「違います!  こ、これはしつけです、ユウリ様が言うことを聞かないから...」

夫人がちらっとユウリに目を向けるとユウリは申し訳なさそうに顔を下げた。

「ユウリが何をしたんですか?」

一応内容を聞いてやると説明させる。

「ユウリ様は単語の文字のスペルを間違えました。前にも教えたのに...また」

本当に出来ない子だと呆れるように言うとユウリがさらに小さくなる。

「ちぐはぐな...」

「は、はい?」

夫人は私の言葉に困惑する。

「ちぐはぐな、はい書いてください」

夫人にペンと紙を渡すと、夫人は少し考えながら書き出した。

「つぎ、一時的。異常。有害な、ほら書いて」

わざと難しいスペルの言葉を言うと夫人が書いた紙を見つめる。

「ここ、スペル違いますよね?」

「あっ、ですがこれはユウリ様とは比べ物にならないくらい難しい言葉で...」

「間違えたのですから躾けしなくちゃ」

私は問答無用で夫人の右手の甲に思いっきり、持っていた棒を振り下ろした。

バチンッ!

と乾いた音が部屋に響くと夫人の悲鳴がした。

「きゃあ!」

手の甲を押さえてうずくまっている。

「ひ、酷い!  これは暴力です!」

夫人が涙を浮かべながらこちらを睨みつける。

「あなたはこれと同じ事を私の息子にしたのよ...しかもこの子はまだ4歳よ。文字を書けるだけで凄いことなの...わかる?」

どうやら私はこの時かなり切れていたようで後からアンに聞いたら瞳孔が開いてすごく怖かったと言っていた。

そんな私の表情に夫人は青ざめ、視線を逸らす。

「あなたを解雇します。今日までの給与をあげて屋敷から追い出してください」

私は棒を真っ二つに折るとゴミ箱に投げ捨て、夫人に背を向けた。

「ユウリの手を手当てして、もし傷が残ったりでもしたら...」

夫人を再び睨みつけると夫人はわなわなと震えながら立ち上がり、部屋を飛び出して行く。

方向を見るに、ウィリアムの部屋に向かったかもしれない。

「ユウリ、後でお話聞かせてね」

私はユウリに優しく声をかけると夫人の後を追いかけた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...