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「クッ!」
無垢で素直な眼差しに直視出来なくなったラルクはサッと目をそらした…そしてカズキを睨みつけると
「なんて子を育ててるんだ…」
ストレートに投げられる好意にトゲトゲした心が丸く削られるようだった…
「話は戻るがカズキ少し本気で考えて見ろ。エイトの為にも、もう少し外の世界を見せた方がいいぞ」
「外の世界か…」
カズキが顔を曇らせる。
「お前らにとっては嫌な世界だがエイトがこれから生きていくためには必要な事だ」
「なら俺も…」
一緒に行こうとするカズキに
「お前はやめておけ…」
ラルクが申し訳なさそうに悲しい顔をする。
「王都の近くのではまだ手配書が出回ってるんだ…」
言いにくそうに下を向き呟くと
「そうか」
カズキは諦めに似た笑い顔を見せる。
「本当に執拗くてどうしようもない奴らだな」
カズキが苦笑すると
「全くだ…」
笑うカズキとは対照的にラルクは怒りを隠しきれない。
「お前はもっと怒っていいんだぞ!」
「そんな時もあったが今はもう大丈夫だ、なんせエイトがいるからな!」
カズキがよくわからずにポカンとしているエイトを抱き寄せる。
すりすりと顔を擦り付けると…
「じいちゃんお髭が痛いよ!」
エイトが嫌だ!とカズキを離そうとするがその顔は嬉しそうだ。
カズキが本当に楽しんで笑っている姿を見て、その笑顔を引き出してくれているエイトにラルクは感謝しか無かった。
エイトがジャックとお風呂に入りに行くとラルクはカズキに話しかける。
「さっきの話どうする?」
カズキに聞くとカズキは顔を曇らせる…
「エイトも行きたいって言ってるんだ笑顔で送り出してやれよ。数週間依頼に行ってくるだけだから」
ラルクの言葉にカズキは渋々頷いた…
「エイトの為になるんだよな」
「ああ」
「エイトは傷つかないよな!?」
「…多分…」
「多分ってなんだ!多分て!」
興奮して立ち上がると
「そりゃ遊びに行くんじゃないんだぞ!ギルドの依頼なんだ!危険な事もあると思うが俺とエイトを信用しろよ!」
「信用はしてるが心配もする」
ストンと座る。
なかなか踏ん切りがつかないようだった…
「そんな大きな声を出してなんの話し?」
ナナミが最後の料理を持って二人の会話に加わった。
ラルクがエイトを外の世界に出そうと話すと…
「ナナミはどう思うんだ」
ラルクに聞かれと、ナナミはじっと一点をみつめ…
「そうね…すごく心配だし、本当は行って欲しくない。ずっとそばに居て甘えさせてあげたいけど…」
寂しそうに笑ってカズキを見つめると
「私達も子離れの時なのかもね…」
言いたくない言葉を絞り出す。
「私達がエイトの成長を邪魔しちゃ駄目よね」
「そうだな…」
カズキが頷く。
「よし!そうと決まれば明日早速行ってくる。依頼が終えればまたここに戻ってくるからそのあとは本格的に王都に連れて行ってみるからな」
「エイトが行きたくないって行ったら?」
ナナミが聞くと
「その時は無理に連れていくことはないだろ、また次に来た時にでも誘うよ」
ラルクの言葉にナナミとカズキは頷いた。
無垢で素直な眼差しに直視出来なくなったラルクはサッと目をそらした…そしてカズキを睨みつけると
「なんて子を育ててるんだ…」
ストレートに投げられる好意にトゲトゲした心が丸く削られるようだった…
「話は戻るがカズキ少し本気で考えて見ろ。エイトの為にも、もう少し外の世界を見せた方がいいぞ」
「外の世界か…」
カズキが顔を曇らせる。
「お前らにとっては嫌な世界だがエイトがこれから生きていくためには必要な事だ」
「なら俺も…」
一緒に行こうとするカズキに
「お前はやめておけ…」
ラルクが申し訳なさそうに悲しい顔をする。
「王都の近くのではまだ手配書が出回ってるんだ…」
言いにくそうに下を向き呟くと
「そうか」
カズキは諦めに似た笑い顔を見せる。
「本当に執拗くてどうしようもない奴らだな」
カズキが苦笑すると
「全くだ…」
笑うカズキとは対照的にラルクは怒りを隠しきれない。
「お前はもっと怒っていいんだぞ!」
「そんな時もあったが今はもう大丈夫だ、なんせエイトがいるからな!」
カズキがよくわからずにポカンとしているエイトを抱き寄せる。
すりすりと顔を擦り付けると…
「じいちゃんお髭が痛いよ!」
エイトが嫌だ!とカズキを離そうとするがその顔は嬉しそうだ。
カズキが本当に楽しんで笑っている姿を見て、その笑顔を引き出してくれているエイトにラルクは感謝しか無かった。
エイトがジャックとお風呂に入りに行くとラルクはカズキに話しかける。
「さっきの話どうする?」
カズキに聞くとカズキは顔を曇らせる…
「エイトも行きたいって言ってるんだ笑顔で送り出してやれよ。数週間依頼に行ってくるだけだから」
ラルクの言葉にカズキは渋々頷いた…
「エイトの為になるんだよな」
「ああ」
「エイトは傷つかないよな!?」
「…多分…」
「多分ってなんだ!多分て!」
興奮して立ち上がると
「そりゃ遊びに行くんじゃないんだぞ!ギルドの依頼なんだ!危険な事もあると思うが俺とエイトを信用しろよ!」
「信用はしてるが心配もする」
ストンと座る。
なかなか踏ん切りがつかないようだった…
「そんな大きな声を出してなんの話し?」
ナナミが最後の料理を持って二人の会話に加わった。
ラルクがエイトを外の世界に出そうと話すと…
「ナナミはどう思うんだ」
ラルクに聞かれと、ナナミはじっと一点をみつめ…
「そうね…すごく心配だし、本当は行って欲しくない。ずっとそばに居て甘えさせてあげたいけど…」
寂しそうに笑ってカズキを見つめると
「私達も子離れの時なのかもね…」
言いたくない言葉を絞り出す。
「私達がエイトの成長を邪魔しちゃ駄目よね」
「そうだな…」
カズキが頷く。
「よし!そうと決まれば明日早速行ってくる。依頼が終えればまたここに戻ってくるからそのあとは本格的に王都に連れて行ってみるからな」
「エイトが行きたくないって行ったら?」
ナナミが聞くと
「その時は無理に連れていくことはないだろ、また次に来た時にでも誘うよ」
ラルクの言葉にナナミとカズキは頷いた。
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