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俺は涙を流す彼女に何も出来ずにいる。
魔力量の多い俺が触れれば彼女が魔力酔いをしてしまう。
少し離れ俺はただ様子を見ていた。
エリオ先生はまだかと扉を見つめていると彼女が目を覚ましてしまった。
「うん、ここは?」
頭を押さえて起き上がると周りをキョロキョロと見回し俺と目が合った。
彼女は一瞬固まるがハッとして声をかけてきた。
「オニキス様! 大丈夫ですか?」
俺の名前を呼び心配してくる。
「なぜ名前を?」
俺を知っているのかと眉を顰めた。
すると彼女は慌ててベッドから降りた。
「あっ……」
寝ていたからかよろめいて足に力が入らないようでベッドにしがみついている。
「す、すみません。力が……」
彼女が謝るので俺はため息をついた。
「そのままでいい」
「ありがとうございます。わたくし伯爵家の長女フィオナと申します。オニキス様が倒れた際にエリオ先生を呼んでくるように言われたので……」
名前を知っている理由を説明する。
俺は少し安堵した。元々知っていた訳ではないようだ。
「君のおかげでエリオ男爵が駆けつけてくれ助かった。礼を言う」
「そんな、大丈夫です。それよりも体は大丈夫ですか? 気持ち悪いとかだるいとか」
彼女は俺を見て心配というより不安そうにしていた。
「大丈夫だ」
先程まで魔力量に苦しんでいたが今は本当に驚くほど体調がいい。
こんなのは先生に初めて魔力量を抑える魔道具を貰った時以来だった。
「良かった」
俺の平気そうな姿に彼女は本当にホッとしていた。
お互いが黙り少し間が空いてしまう。
何か話そうかと口を開こうとした時、扉がノックされた。
「オニキス、彼女は大丈夫?」
エリオ先生が戻ってきてホッとする。
「先生!」
彼女もそれは同じようで先生を見て笑みを浮かべた。
俺といた時は強ばった表情をしていたが先生を見た瞬間溢れんばかりの笑みを浮かべる。
「フィオナ、久しぶりだと言うのに悪かったね。今日はこれから屋敷に送るからゆっくり休みなさい。また後日説明するよ」
先生がそういうと彼女は素直に頷いた。
「ではオニキス様失礼致します」
彼女は俺に挨拶をすると先生と部屋を出ていった。
◆
私は先生に連れられて王宮を後にした。
先生が会場の方に説明してくれたようで私は早めに家へと帰ることができた。
馬車に乗る時先生が声をかけてきた。
「家まで送れなくてごめんね、気をつけて帰るんだよ」
「馬車に乗ってるだけですから大丈夫です」
先生に笑みを向ける。
「彼女を無事に送ってくれ」
先生が御者に声をかけると馬車は動き出した。
馬車の揺れに私はまたうとうととまぶたが重くなってきた。
◆
フィオナが乗る馬車を私は見えなくなるまで見送った。
本当なら屋敷まで送ってやりたいが、王宮での務めがあるのでここを離れるわけにもいかない。
それにオニキスの事も心配だったのでとりあえず部屋へと戻った。
彼は椅子に腰掛けて休んでいた。
しかし私が来るなり立ち上がりそばに来ると疑問を投げかけた。
「先生、私の魔力暴走はなぜ止まったんですか? それに彼女はなぜ気を失っていたのですか?あのまま帰らせて大丈夫なんですか!」
「待って待って」
私はオニキスを落ち着かせる。
「とりあえず魔力量を見るから座って楽にして」
そう言うと素直に椅子に腰掛けた。
私はオニキスの魔力量を見てニヤリと笑う。
ずっとオニキスの器を壊す勢いで溢れていた魔力量が器に対して正常になっていたのだ。
「うん、魔力量が減ってる」
私の言葉にオニキスは椅子を倒して立ち上がった。
「なぜ…あっもしかして新しい魔道具ですか!」
オニキスの期待する顔に私は首を振った。
「いいや、フィオナのおかげだよ」
そう言うとオニキスは嫌そうな渋い顔をする。
「あの令嬢が?」
オニキスの女嫌いは知っていたがこれほどまでとはと苦笑する。
「彼女の秘密を他言しないと誓えるかい?」
私が真剣な顔をするとオニキスは黙って頷き席に座った。
「フィオナはこの国に唯一存在する魔力を吸う事のできる人なんだ」
「魔力を吸う?」
オニキスは信じられないという顔をする。
それもそのはずだろう。この国の歴史的に見てもそんな人は存在した事がない。
「だからあの時君の溢れ出していた魔力をフィオナに吸って貰ったんだ」
オニキスにそう言うと信じられない顔で自分の手を見つめている。
信じられなくとも自分の今の魔力量がフィオナのことを肯定しているだろう。
そしてハッとした。
「彼女は大丈夫なんですか!」
彼の心配は私の心配でもあった。
「わからない、先程見た感じだと大丈夫そうに見えたがあんなに魔力を吸ったんだ、明日すぐに彼女の様子を見に行ってくる」
そう言ってオニキスから視線を逸らす。
「先生?」
オニキスの不安そうな顔に私は頭を下げた。
「フィオナの力の事は何もわかってないんだ。そんな状態で君を助けるために彼女の魔力を吸わせた。彼女に何があったとしても責任は私にある」
彼は何も言わずに私の下げた頭を見続けていた。
魔力量の多い俺が触れれば彼女が魔力酔いをしてしまう。
少し離れ俺はただ様子を見ていた。
エリオ先生はまだかと扉を見つめていると彼女が目を覚ましてしまった。
「うん、ここは?」
頭を押さえて起き上がると周りをキョロキョロと見回し俺と目が合った。
彼女は一瞬固まるがハッとして声をかけてきた。
「オニキス様! 大丈夫ですか?」
俺の名前を呼び心配してくる。
「なぜ名前を?」
俺を知っているのかと眉を顰めた。
すると彼女は慌ててベッドから降りた。
「あっ……」
寝ていたからかよろめいて足に力が入らないようでベッドにしがみついている。
「す、すみません。力が……」
彼女が謝るので俺はため息をついた。
「そのままでいい」
「ありがとうございます。わたくし伯爵家の長女フィオナと申します。オニキス様が倒れた際にエリオ先生を呼んでくるように言われたので……」
名前を知っている理由を説明する。
俺は少し安堵した。元々知っていた訳ではないようだ。
「君のおかげでエリオ男爵が駆けつけてくれ助かった。礼を言う」
「そんな、大丈夫です。それよりも体は大丈夫ですか? 気持ち悪いとかだるいとか」
彼女は俺を見て心配というより不安そうにしていた。
「大丈夫だ」
先程まで魔力量に苦しんでいたが今は本当に驚くほど体調がいい。
こんなのは先生に初めて魔力量を抑える魔道具を貰った時以来だった。
「良かった」
俺の平気そうな姿に彼女は本当にホッとしていた。
お互いが黙り少し間が空いてしまう。
何か話そうかと口を開こうとした時、扉がノックされた。
「オニキス、彼女は大丈夫?」
エリオ先生が戻ってきてホッとする。
「先生!」
彼女もそれは同じようで先生を見て笑みを浮かべた。
俺といた時は強ばった表情をしていたが先生を見た瞬間溢れんばかりの笑みを浮かべる。
「フィオナ、久しぶりだと言うのに悪かったね。今日はこれから屋敷に送るからゆっくり休みなさい。また後日説明するよ」
先生がそういうと彼女は素直に頷いた。
「ではオニキス様失礼致します」
彼女は俺に挨拶をすると先生と部屋を出ていった。
◆
私は先生に連れられて王宮を後にした。
先生が会場の方に説明してくれたようで私は早めに家へと帰ることができた。
馬車に乗る時先生が声をかけてきた。
「家まで送れなくてごめんね、気をつけて帰るんだよ」
「馬車に乗ってるだけですから大丈夫です」
先生に笑みを向ける。
「彼女を無事に送ってくれ」
先生が御者に声をかけると馬車は動き出した。
馬車の揺れに私はまたうとうととまぶたが重くなってきた。
◆
フィオナが乗る馬車を私は見えなくなるまで見送った。
本当なら屋敷まで送ってやりたいが、王宮での務めがあるのでここを離れるわけにもいかない。
それにオニキスの事も心配だったのでとりあえず部屋へと戻った。
彼は椅子に腰掛けて休んでいた。
しかし私が来るなり立ち上がりそばに来ると疑問を投げかけた。
「先生、私の魔力暴走はなぜ止まったんですか? それに彼女はなぜ気を失っていたのですか?あのまま帰らせて大丈夫なんですか!」
「待って待って」
私はオニキスを落ち着かせる。
「とりあえず魔力量を見るから座って楽にして」
そう言うと素直に椅子に腰掛けた。
私はオニキスの魔力量を見てニヤリと笑う。
ずっとオニキスの器を壊す勢いで溢れていた魔力量が器に対して正常になっていたのだ。
「うん、魔力量が減ってる」
私の言葉にオニキスは椅子を倒して立ち上がった。
「なぜ…あっもしかして新しい魔道具ですか!」
オニキスの期待する顔に私は首を振った。
「いいや、フィオナのおかげだよ」
そう言うとオニキスは嫌そうな渋い顔をする。
「あの令嬢が?」
オニキスの女嫌いは知っていたがこれほどまでとはと苦笑する。
「彼女の秘密を他言しないと誓えるかい?」
私が真剣な顔をするとオニキスは黙って頷き席に座った。
「フィオナはこの国に唯一存在する魔力を吸う事のできる人なんだ」
「魔力を吸う?」
オニキスは信じられないという顔をする。
それもそのはずだろう。この国の歴史的に見てもそんな人は存在した事がない。
「だからあの時君の溢れ出していた魔力をフィオナに吸って貰ったんだ」
オニキスにそう言うと信じられない顔で自分の手を見つめている。
信じられなくとも自分の今の魔力量がフィオナのことを肯定しているだろう。
そしてハッとした。
「彼女は大丈夫なんですか!」
彼の心配は私の心配でもあった。
「わからない、先程見た感じだと大丈夫そうに見えたがあんなに魔力を吸ったんだ、明日すぐに彼女の様子を見に行ってくる」
そう言ってオニキスから視線を逸らす。
「先生?」
オニキスの不安そうな顔に私は頭を下げた。
「フィオナの力の事は何もわかってないんだ。そんな状態で君を助けるために彼女の魔力を吸わせた。彼女に何があったとしても責任は私にある」
彼は何も言わずに私の下げた頭を見続けていた。
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