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第二章
絶望の行程
しおりを挟むシャルルがポケットの中に右手を突っ込み、それから少女に向かって手を伸ばした。
シャルルがポケットから何かを取り出したのはわかったが、右手が握られているためそれが何かはわからない。
少女の首筋に向かって手を伸ばし、シャルルが襟から服の間に右手を差し入れた。それからシャルルは少女の胸の谷間に握った何かを置く。
「ほら、少ない胸を寄せて落ちないようにしておけ。俺が行けと行った場所に行くまで、手で谷間を寄せて挟むんだ」
「う……」
両乳房の間に何かがあるのがわかる。ただ、その正体まではよくわからなかった。少女は言われた通りに二の腕と手で両胸を寄せた。
まるで片手で自分の乳房を揉んでいるような格好になり、少女の頬が羞恥で赤く染まる。
満足そうに頷いて、シャルルが手を少女の服の間から抜いた。
「さぁ行け、俺の言うとおりにしろ。妹の命が惜しければな」
銀髪の少女が街の通りを歩いていた。少女は左腕の二の腕で自身の左胸を寄せ、さらに左手の手の平で右の乳房を支えていた。
そうやって胸を寄せていないと、少女の乏しい乳房では間に挟まれた何かを落としてしまいかねない。
さらにその左手で、シャルルから受け取った紙を持っている。
少女は妹の右手を取って足早に歩いた。こんな格好で歩くのは恥ずかしいが、あの変態にそう命令された以上は従わなければいけない。
妹の歩く速度はあまり速くない。少し強めに引っ張ったが、妹はついてくるのがやっとという様子だった。
「お姉ちゃん、もっとゆっくり」
「ごめんね、もう少しだけ、もう少しだけ頑張って」
もう三日もロクなものを食べていないのだ。倒れこみそうになってもおかしくはない。
それでも少女は足を動かした。
あの変態伯に言われた場所はそれほど遠くなかった。それなりに大きく立派な建物で、少女はそこに入るのを躊躇ってしまう。
だが行かなければならない。もしかしたらあの変態伯は自分に見張りをつけているかもしれないのだ。
例え大蛇の顎の中であろうと進むしかない。
悲壮な覚悟で建物の中に入ったが、少女はそこで何か奇妙なことに気づいた。建物の中は綺麗で掃除が行き届いている。
妙な匂いが鼻をついた。
「……病院?」
そう呟いた時、奥から医者と思しきヒゲの男が現れた。その姿を見て少女の肩が強張る。
医者らしき男が銀髪の少女に視線を向けた。それから何か察したように頷いた。
「うむ、こっちに来なさい」
「え?」
「病人なんだろう。ほら、いいから来なさい」
医者らしき男の言うがままに、少女は妹を連れて奥にあった小さな部屋へと入った。
医者の男は背もたれの無い椅子に妹を座らせた。それから少女にじろりと視線を向ける。
そこで少女はシャルルの命令を思い出した。
「あの、この紙を、言われた場所で見せろと」
「うん? 紙?」
少女は妹と繋いでいた右手を離し、左手と胸の間に挟んでいた紙を右手で取った。それを医者に手渡す。
紙を受け取った医者はそこに書かれた文章を目で追い、ふむふむ、と頷きながらヒゲを撫でていた。
医者の男はその紙を机の上に置き、妹のほうへと視線を向けた。手鏡のような物を手に持ち、外から入ってくる光を反射させて妹の顔に向けた。
「お嬢ちゃん、ちょっとお口を開けてくれるかな?」
厳しいと思っていた医者の顔が突然和らいで、にっこりとした笑顔が浮かんだ。妹もそれで警戒心をなくしたのか言われたとおり大人しく口を開ける。
妹の口の中に光を当てて、医者が呟く。
「ふむ、確かに糜爛がある」
「びらん?」
「まぁ後で説明するよ」
医者が妹の胸の上に手を置いた。
「ちょっと大きく息をしてごらん。ゆっくりすってー、はいてー」
その言葉に従って妹が息をする。その後で医者は妹の腹に触れた。それと同時に妹が短い悲鳴をあげる。
「いたっ、い、いたいよ」
「ああ、ごめんよ! うん、もういいよ。それじゃ、スカートをちょっとめくりあげてくれるかな」
医者の男は床に膝をつき、妹の太腿や膝へ真剣な視線を注いだ。指先で確かめるように足に触れ、医者が表情を渋いものにした。
立ち上がった医者が一度ヒゲをゆっくりと撫でさすり、重々しい動作で椅子の上に座った。
「あー、単刀直入に言うとだね、君の妹さんは……、病にかかっている。そのまま放っておけば、まず生きてはいられなかっただろうね。でも治療を受ければ」
「そ、そんなっ?!」
医者の言葉を途中で遮り、少女は大声で叫んでしまった。少女の体が驚愕で震える。
それと同時に少女は自身の胸の谷間を寄せていた力を緩めてしまった。胸の谷間に挟まれていた何かが少女の服の中を転がり、スカートの裾から零れ落ちた。
その何かが医者の足元まで転がる。医者は足元に落ちたそれを拾い上げてじっくりと眺めた。
少女もそれが何なのか気づいた。
「金貨……?」
「そうだね、この国で使われている金貨だよ」
少女がはっとして声を大きくした。
「そ、その金貨は決して、誓って、盗んだものではありません」
「落ち着きなさい、わかっているよ。この紙に書いてあった」
「え?」
医者が机の上に置いていた紙を指でつまみ、文面が少女に見えるように掲げた。
「乳と尻を揉ませてもらった礼だそうだ。そういうわけで、その金貨は君のものだ。大事に使いなさい」
「えっ……? あ、あの、お医者さま」
「なんだね?」
「あの、どうかお願いします。妹に治療を、そのお金で足りるかどうかはわたしにはわかりません。でも、足りなくても、必ず」
「おや、いいのかね? 金貨だよ、これだけあれば、君なら三ヶ月は暮していけるかもしれない」
「でもわたしは、妹の……」
言葉が詰まる。涙が溢れそうになって、少女はぎゅっと目を閉じた。
医者が大きく息を吐き、少女の肩に手を乗せた。安心させようとしているのだろう。そう思って少女が怖々と目を開いた。
医者は厳しい顔ににっこりとした笑顔を浮かべている。
「安心していい、君の妹の治療費は伯爵さまが全部払ってくださるそうだ」
「え?」
「この紙にそう書いてある。一番上には大きく書いてあるのはね、辺境伯の名においてこの少女たちは善く扱われるべし、と。で、下のほうにはちゃんと妹さんの治療費は伯爵が持つと書いてあるし、一番下には伯爵さまの自署もある」
「ど、どうして……」
意味がわからなくて少女は小さく首を振った。
医者が肩を竦める。
「さぁ? ただ伯爵さまが払ってくれると言ってんだから君は何も気にしなくていい」
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