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呪いの追跡2
しおりを挟むかっと、目の前がまぶしさに包まれる。その光の奔流の中を、クリスの意識は駆け抜ける。
城の内部、森の跡地から、城下町へ――。視界を巡らせるように、クリスは呪いの根源を――魔法陣を描いた術者を探した。
そうして、はやてのように駆けるその最中、黒い髪をしたフードの女を見つけた。
――この女か。
クリスは国土全体と一体化した己の魔法回路を、その女一点へ向けて収束した。
閃光が、刃となってかける。
ぱっと散ったのは、女の精神のかけら。魔力を削り取り、致命傷となりえる一撃を受けた女は、思い切り地面にたたきつけられ、けれどそれでも消滅はしなかった。
やはり、なにか別のものに守護されている。クリスがそう歯噛みした、その時だった。
魔法回路の、クリスの意識の中、女が視線を上げる。
ぎい、とにらみつけて来た黒い瞳は、洞のように虚ろだった。
しかし、その悪意、憎悪――その色に、見覚えがある。
クリスが追撃をかけんとその手にさらに魔力を込めた一瞬、女の姿は霧のように掻き消えた。
まるで、なにかが女を攫って行ったようだった。
「……っ」
クリスの意識が体に戻る。開かれた瞳孔に、ただならぬ気配を察したのだろう。エルフリートがクリスを呼んだ。
「陛下、どうしたんだい!?」
「……あの女が……」
「え?」
「――カヤが、生きていた……」
その言葉に、エルフリートは目を見開く。
「ばかな。死体はちゃんと確認した。私も君も、息絶えた前竜王の番を見ただろう。そんなわけない」
「それでも――あれは、確かにあの女だった」
「……わかった。確認させよう。分霊体のひとつに、墓を暴かせる。許可を出しておくれ。これでも一応宰相なものでね。法を破れないんだ」
「ああ、許可する。僕も立ち会おう」
――……はたして。
墓穴は空っぽだった。別の場所にある、竜王リーハの死体は今もそこにある。けれど、その番であるカヤの亡骸だけは、まるでそっくり盗まれたかのように、墓から姿を消していたのだった。
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