4 / 82
生贄と結婚
しおりを挟む騎士団長に生贄について確認すると、どうも様子がおかしい。ランス様も不思議そうな顔をしている。
「建前は白龍に捧げる生贄、ということにしてあるが、実の所は生贄ではない。その力を白龍とその騎士に分け与えるのが虹の力をもつ聖女の役目だ」
「力を分け与える?」
騎士団長がスラスラと言うが、正直ついていけてない。というか、なぜランス様もよくわかっていないようなお顔をしてるんだろう。
「白龍の力はこの国では偉大だ。その力で各地の瘴気を浄化したり、国同士の争いを止めたりする。人間にとって厄介な魔物と戦うことだってある。だが、その力は使う度に消費され、消費された分だけ回復までにとてつもない時間がかかる。それは相方である騎士も同じだ。騎士は白龍と白龍の力を使いこなすだけの器ではあるが、力を持っているわけではない。だからこそ、虹の力を持つ聖女からその力を補充してもらう、というわけだ」
一気に言われてしまったけれど、これまた頭が追いつかない。えっと、つまり、白龍様に生贄として食べられてしまうわけではないということ?
「虹の力と白龍様の力は同じなのですか?」
「そうだ。だからこそ、虹の力を持つ聖女の協力が必要なんだ」
へぇ、知らなかった。
「あの、すみません。セシルはそもそもなぜ生贄になると思っているんでしょうか」
ランス様が疑問を口にする。私はむしろなぜランス様がそこを疑問に思っているのかがわからないのだけれど。
「あぁ、表向きは虹の力を持つ聖女は白龍使いの騎士が一人前になるために白龍に捧げる生贄ということになっている」
「なぜです?普通に聖女の力が必要だと公言しても問題ないと思うんですが」
確かに、わざわざ生贄なんて怖がらせる必要ないと思う。そのせいで虹の力を持つ聖女が今までどれだけ怖い思いをして生きてきただろうか。
「それがな、最初は生贄とは言っていなかったらしい。騎士団に残る歴史書によると、ある時から虹の力を持つ聖女が自分達の立場を利用して騎士を選別し始めたんだそうだ。自分の好みの騎士でなければ嫌だ、騎士を変えろと要求するわがままな聖女もいたらしい」
そもそも聖女は白龍がその力に見合った聖女を選ぶ。聖女が身勝手に白龍や騎士を選べるわけではない。だが、自分の好みの騎士でなければ行かないという聖女が一時期後を立たなくなったという。
「それで当時困った騎士団は生贄ということにして強制的に聖女が白龍と騎士の元へ来るようにしたそうだ。それが今でも受け継がれている。二度と同じようなことが起きないためにな」
虹の聖女の力がなければ白龍の力は枯渇し、国の存続も危ぶまれる。だが、聖女の力は決まった白龍にしか適合しない。だからこその強行だ。
強制的にその力を使われる聖女も辛いけれど、わがままを言って国の存在を脅かす過去の聖女達もどうかと思う。
「ということは、私は生贄として白龍様に食べられてしまうということはないんですね」
「そうだな、直接的に食べられるということはない。死ぬわけではないから安心してくれ」
騎士団長の言葉にホッとする。よかった!本当によかった!私、死ななくて済むんだわ!
「生贄になると思ってたから君も教会の友人もあんなに悲しんでたんだね」
ランス様が困ったように微笑む。はい、そうなんです。
「てゆうかお前、白龍と騎士団の歴史は騎士学校で最初に習うことだろ。覚えてないのかよ。再履修だな」
騎士団長の言葉にランス様が思わずえぇ~!と悲鳴をあげる。ランス様は意外に抜けてるのかしら、思わず笑ってしまった。
「お、ようやく笑ったな。こいつはこんなだが、新人の騎士の中では抜きん出た実力の持ち主なんだ。どうかよろしく頼む」
「よろしく頼む、とのことですが、実際に力を分け与えるというのはどういうことなんでしょうか?どうすればいいのでしょう?」
力を分けろと言われても、分け方なんて全然わからない。
「そうだな、近くにいるだけでも少量なら自然と分け与えることはできるし、後は触れたり……まぁ詳しくはランスに聞いてくれ」
ニヤニヤしながら言う騎士団長。ランス様は頭をかいてへへへ、と苦笑いをする。なんだろう、特殊なやり方でもあるのかな?
「よし、詳しい話は済んだことだし、まずは二人に婚姻の契約を結んでもらってから……」
「はい?婚姻の契約???」
え、待って、私、結婚するの????
36
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる